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異世界マンション  作者: サカナマン
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2話 大家さんの秘密

「よし!スーツ来たし、髪整えたし、完璧だ!」

今日は、夏華に勧められた『大家さんの家政婦』と言う仕事に行くことにした。面接がないっていいね!

「フー、よしっ!」

ピーンポーン

インターホンがなるのが分かる。ハー、キンチョウスルー!!

「はーい、今開けるから〜」

ガチャ

「お〜、君が家政婦か〜」

「ハ、ハイ。ヨロシクオネガイシマス」

「あはは、そんなに緊張しないで」

ガッチガチの俺を見て、上品にくすくす笑っている。

「僕の名前は神矢真琴。君は村田宇一君だね。これからよろしく。さ、上がって」

「オジャマシス」

「まだ、カタコトだね(笑)」

「す、すみません」

あー、緊張が解けない。よく知らない人と話すだけでも緊張するのに、外見ピカピカのお宅にお邪魔するとなると、さらに緊張する。

「え、なにこれ」

「あはは、あまり人に見られたくなかったんだけどね」

俺がそこで見た光景は——

すっごい汚い部屋。足元が見えないもん。これが、頼んだ理由か。

「この部屋を一週間以内に片付けてくれるかな」

「頑張れば、何とかなりますけど…」

掃除だけは得意分野だ。高校、大学友達いなくてやること無かったからな。ぐすん、あれ、涙が。

「あと、出来ればで良いんだけど、料理作り置きをしてくれると助かるけど…」

「はい。いいですよ」

「ありがとう。それじゃあ僕は行くから」

「行くってどこに?」

まさか、家政婦を置いて遊びに行くのか?女か!女なのか!

「会社だよ。パニソナックって会社に勤めてるから」

「社内では、何をしてるんですか?」

「社長だよ。まぁ、肩書きだけだけど」

「凄いじゃないですか」

社長なんだ。凄いな。こんなので会社のデスクどうなってるんだろう…

「で、肩書きだけとはなんですか?」

「うちの会社は、みな平等ってのがモットーでやってるから。全員意見を出し合って全て決めていく。社長だからって社長だけの仕事ってのもないんだよ。だから、肩書きだけ。」

「あんな大手企業の社長だなんて。だから、あのマンションをあんなに安くできるのか」

「そうだよ、おっといけない。会社に遅れる、じゃああとはよろしく」

あんなに見た目チャラそうなのにちゃんとできる人なんだなぁ。

さて、この部屋どうするかな。まずは、燃えるゴミを出して来ないとな。こりゃ、大変だぞー!!

※ ※

「ふー。あらかた片付いたな」

あの後、三時間かけて燃えるゴミを出てきた。ゴミ溜まりすぎだろ。あの人よくこの家で暮らせたな。いつの間にか時計の針は、五時を越えていた。

あとは、部屋を掃除して、料理を作るだけだな。

掃除機あるかな?あ、ロボット掃除機あるじゃん。ん?なんでロボット掃除機にホコリ被るんだよ。どんだけ使ってないないんだよ。一回位しか使ってないだろな。とりあえず充電あるし、動かそう。その間に、俺は料理かな。

※ ※

「できた〜!」

作り置きを六個くらいあればいいだろう。…この後どうしよ、やる事ないや。

「ただいま」

「おかえりです」

おかしいな、タイミングがピッタリすぎる。ずっと見てた?やだ、怖い。

「すごいなぁ、あれを一日で片付けるなんて。1週間くらいかかるだろうと思ったけど」

「掃除だけですよ。料理とかは、あんまりですよ」

「それじゃあ二つお願いあるけどいい?」

「はい、いいですよ」

急に、お願い事なんてなんだろ?

「宇一君、君を採用します」

「え?採用?」

「うん、このまま、僕の専業家政婦になってくれ」

え?今?このタイミング?ヤッター。なんか実感が湧かないなぁ。こんなもんなのかなぁ。

「はい…よろしくお願いします」

「ありがとう」

「それで、もう一つは?」

「僕に家事を教えてくれ」

「・・・は?」

「広い家は、一人じゃ出来ないからいてもらうが、どうも会社のデスクが汚いと毎日社員達にに言われてね」

「それで、家事の掃除を教えろということですか」

「はい、お願いできますでしょうか」

深々と頭を下げてお願いしてくる。そんなの断ることが出来ないじゃないか。まぁ、断らないけど。

「俺で良ければですけど」

「ありがとう!!あ、それなら敬語やめてくれない?そういうの嫌いなんだ」

「はい、分かり……分かった」

彼の顔がパァと明るくなり、すごく喜んでいた。こんなんでいいのか?

そんな事を考えている中突然——

ダンダンダン

扉を叩く音が静かな空間に響く。

インターホンあるのに扉叩くとか。どこぞの893かな?

「来たかな?」

神矢さんが扉を開けると大あくびをしながら、尻尾があって、角がはえているコスプレ(?)の40代前半くらいのおじさんが入ってきた。

「神矢さん、この人は?」

「紹介するよ、ドラゴンのゼジルだ。304号室にマンションが立った時から住んでいるよ。・・・あと神矢さんはやめてくれないか」

「そこだけは無理」

「敬語は良いのにぃ?」

「やっぱりさん付けは絶対」

「うーん、そうか、じゃあそこは譲ろう」

「とゆうか、ドラゴンなんですね。コスプレおじさんかと思いました。」

「反応薄いね。もう少し驚くかと思ったけど」

「まぁ、おかしな人に会ったことがあるから」

俺って何かと慣れるの早いから。あの一回でもう慣れちゃった。

「おう、兄ちゃん。初めましてやな」

「は、初めまして」

すっごいオラオラ系のおじちゃん、みたいな感じの喋り方だ。

ホントに893じゃないよね?

「ほんで、用ってなんや」

「また、今年もアレやろうと思ってるけど、できる?」

「出来る出来る。今年は、何が必要や」

「すみません、何の話をしてるんですか?」

「あぁ、入ったばっかりだから話してなかったか」

「新人さんか!なら盛大にやらんとな!よっしゃ!張り切るで〜!」

盛大にやる?入ったばっかり?何の話をしてるんだ?

「毎年、5月の第二日曜日にマンション住民全員で宴会をすることになってるんだ」

「なんでてすか?」

「創立記念日だからだよ」

「兄ちゃん酒飲めるんか?」

「ほんの少しだけなら」

みんなお酒飲むのかな?宴会って具体的に何するんだろう?やる人いないから分かんないや。・・・・・・一人で言ってて悲しくなるなぁ。

「よっしゃ、酒ぎょうさん用意せんとな」

「来週に僕の家集合ね」

これは、また面倒事になる予感。でも、みんなでワイワイやるのも楽しそうだな。マンション住民に挨拶すんでなかったし、丁度いい。明日からも頑張ろう。そもそも、これだけじゃ給料足りないからバイトも始めよ。明日から忙しくなるぞ。…それも嫌だな。

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