第一話:Anotherな世界で最初の出会い
………………』
『…………………』
(ん…なんか聞こえる……)
意識が朦朧とする中、オレは聞き耳を立てる。
『ねえ、全然起きないじゃない。本当に成功したんでしょうね?』
『あ、あたりまえである!あちらの世界で我々の声が聞こえるほどの適応度を示したのだ。
そんな男を召喚するくらい、見習いの魔導士でもできること。
神である我が失敗するはずが』
『じゃあなんで目を覚まさないの?かれこれ一週間は目を覚ましてないじゃない』
(オレは一週間も眠っていたのか。てか、ここどこだ?)
意識がはっきりしてきた。オレはベットのようなものに横たわっているようだ。
目を開けたが、暗いせいか何も見えない。
「お、落ち着くのだ。心臓は動いているし息もある。すぐに起きるであろう!(多分…)」
「…おい。ここはどこだ?お前ら何もんだ?」
「あ!起きたわ!」
「ほら見てみい!バッチリ成功していたであろう?(ドキドキ)」
「うん!さすがだわ」
姿が見えないが一組の男女が目の前にいるようだ。
男はふふんと鼻を鳴らして得意げだ。女はオレが起きて興奮しているようだった。
(ま、姿は見えてないんだけどね。)
「おい。質問に答えろ。なんなんだここは。」
「ふぅむ……異世界に連れてこられたというのに、なんという落ち着きだ。
やはり強靭な精神の持ち主であるのだな。」
「その異世界ってのはここの地名か?召喚だの精神だの、
さっきから言ってることが意味不明なんだが。質問にも答えないし」
「ふふ、確かにここがどんな場所かもわからないのに動揺しようがないわね。
私が説明するわ。ここは異世界、Another Worldと呼ぶ人もいるわ。
あなたが生きていた世界はTrue World。
つまりここはあなたが住んでいた世界とは違う次元の世界なの。」
うん。まったく理解できない。
「国とか星とかそんなレベルじゃない。まったく違う次元にあなたを連れてきたのよ」
ツッコミどころ満載ではあるが、なんとなくは分かった。
ていうか何かってに連れてきてんだよ!
殴って元の世界に帰すように言ったらいいか…
「そんで?あんたらは誰だ?姿も見えねえし」
「おお、そうであったな。お主には我らの姿が見えてはおらぬのか」
そういうと男は光の玉のようなものを空中に浮かべた。
あたりが明るくなった。一瞬目がくらみ、腕で目を覆った。
ゆっくりと目の前に立つ二人を見た。
男のほうは容貌魁偉て感じだ。
上半身裸なのは筋肉を見せつけるためだろうか。
ムッキムキというよりは引き締まっている。
身長は210cmくらいか。オレよりも30から40cm高く見える。
髪は黒…アフロっぽいのが気になる。天パか?
女のほうは……絶世の美女って感じだ。
髪は腰のあたりまで伸びていて金色。
グラマーな感じで身長もそこそこ高い。おれより10cmは高そうだ。
思わずため息が出るほどの美女。少なくともオレがいた世界には居なかったレベルだ。
次の瞬間。二人の額が妖しく光った。心臓が強く拍動する。
(なんだ?この威圧感は?)
「我はデウス。ここ、ヘライオン王国最強の魔法騎士であり、オリンポス十二神が一柱である!」
「私はヘラ。ヘライオン王国の王女であり、オリンポス十二神の一人でもあるわ」
心臓の鼓動がさらに激しくなる。
神。それを認めざるを得ないほどのプレッシャー。
どんな相手にもビビったことはない。今もビビっているわけではない。
だがなんだ?体が震えている…オレのすべての細胞が危険信号を発している。
「…………ククク、クハハハハ!驚いたぞ!
神の威圧を前に後ずさりすらしないとは!
常人ならば尻もちついて泣き出すか気絶するところ」
「ふふふ、少し面白くない気もするけれど。
もともと強かったけど召喚の過程でさらに鍛えられたんじゃないかしら。」
デウスとヘラの額の光が消えた。同時に拍動も落ち着いてきた。
「…正直なめてたよ。戦う前から戦意が失せたのは初めてだ」
「ククク。お主、我らと戦う気でおったのか」
「殴って元居た世界に帰してもらおうと思ってたんだ。
ケンカで負けたことはなかったからな。
オリンポス十二神…元居た世界でも聞いたことあるな。たしかギリシア神話だ」
「いかにも、お主のいた世界に存在するギリシア神話とは
この世界に存在する神々をもとに作られておる。」
「つまり、こちらの世界からあなたのいた世界に召還されえた人間が、
この世界の神々をギリシア神話として後世に伝えたということよ。」
信じがたいが…出鱈目を言っているようには見えないし、
何より先ほどから妙な現象ばかり起こっている。
…いや、そんなことはどうだっていい。今の話で重要なことは
(帰った人間がいるということはオレも元居た世界に帰れるということか)
「そうだったのか。で?オレは何のために呼ばれたんだ?」
「異世界人のお主にやってもらうことがある。」
「あなたにこの国を守ってほしいの!」
………まったく意味が分からなかった。
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