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太陽のイタズラ

作者: 秋桜

前書きで書くべき事は特にございません。読めば伝わると思っておりますので。

強いて言うなら、読者である「あなた」に発信している身として、ワタクシは何ができるのか、追究した結果がこの物語です。もちろん、読者の思考を阻むつもりは一切ございません。しかし、一つ伝えたいことがございます。これだけは語らせてください。文学において最も大切なことは『読者が進んで想像していかなければ理解することはできない』と留意して理解することだと感じております。大変身勝手であることを承知の上、申し上げます。ワタクシは「物語の内容を読み取ること」よりも「作者は何故この物語を書いたのか、作者は何を伝えたかったのか」「何故この物語を創作するに至ったのか」を考えることの方が読者のためになると思うのです。

物書きをするにあたり、少なくともワタクシは『読者の望むもの』を提供するのではなく『読者の為になるもの』を書こうと心がけております。自分の書きたいものだけを書くようでは技術面においても、人として成長することにおいても、難しいのではないかと思います。ワタクシは執筆するにあたり、自信と誇りを持って行っております。ほんの僅かでもかまいません。読後に何か一つ、自分の心に持ち帰っていただけたなら、作者として、これほどまでに嬉しいことはございません。

前書きと言いつつも本編と思わせるほどの長文にお付き合いいただきありがとうございます。

では、本編をお楽しみください。

 僕は君を探している。ずっと昔から。ずっとずっと。


初めて君を見たのは一年前のちょうどこの時期だった。

夏になりかけのまだ梅雨が抜けきっていないむさ苦しい時期だ。

僕は生まれたばかりでデリケートだから部屋の外には出たことがなかった。ご主人様は僕を沢山かわいがってくれた。


少女が冷凍庫からチューペットとそれを取り出した。縁側に座り、少女はチューペットを二つに折ると片方にかぶりついた。とても美味しそうに食べていた。

僕はその光景を横目で見ながらチューペットと共に取り出された『それ』をじっと見つめた。

大きさの異なるものが無理矢理つなげられていてなんとも言えない不格好な形をしている。しかも上の方が下のものよりも大きい。取って付けたような可愛げのかけらもない仏頂面をしている。どうせこの少女が作ったものだろう。

その証拠に「鼻」がない。

僕がずっと文句を言っていると

「何よ、」と声がした。不機嫌そうな声色は言うまでもなく彼女のものだった。

もちろん、僕と彼女の声が少女に聞こえることはない。

僕は少し落ち着き払った声を作って、「やあ、君も宿っていたんだね。僕は少し前からここにお世話になっているんだ。ここの空気はおいしいし、何よりきれいなお水が僕のエネルギーの源なのさ。あと、日当たりもいいよ。」と聞かれてもいないことをぺらぺらと口にした。

「あぁ、そう。」と彼女が一言。

彼女の機嫌を損ねることになってしまい、罪悪感を感じた僕は彼女の機嫌をどうにか戻そうと褒めたりどうでもいい質問を繰り返したりしてその場を必死に取り繕った。


少女が片方のチューペットを食べ終わる頃、少女の母親であろう女性がそれを見つけて叱っている。

どうせ勝手にチューペットを開けて食べたことと彼女を冷凍庫にしまっておいたことだろう、と内容は容易に想像できた。

一通り叱られた少女は彼女を庭先に置いて、もう片方のチューペットを口に銜えたまま部屋へ戻ってしまった。外に置いてくるように母親に言われたのだろう。

僕は窓越しから彼女に目をやる。

相変わらず彼女の顔は仏頂面であったが何処か切なげな表情でこちらを見ている。


翌朝、見るとそこには彼女の姿はなかった。

僕は彼女が動けないのを知っていた。彼女が自分の足でどこか行こうとすることは出来ない。


僕は彼女のことが気になってしまった。

もちろん僕も彼女と同様、自分の足で動くことは出来ない。僕が仕方なく外を眺めていると、小鳥がやって来た。彼は鳥の中で最も小さい雀であった。

「君はなぜ外を見てるんだい?誰か探してるのかい?」と言った。

僕は彼に向かって「昨日までそこにいた彼女(・・)が今朝見てみたら、いなくなっていたんだ」「どこへ行ったのか君は知っているかい?」と言った。

雀は少し考えてから「そうだなあ、僕はこの近くに住んでいるから君の言う彼女さんのこともよく知っているしどこにいるかもわかるよ」と言った。

僕はその言葉に胸が躍った。早く彼女に会いたかったからだ。

「雀さん、僕を彼女の所へ連れて行ってよ」と僕は雀に頼み込んだ。

雀は首を縦には振らなかった。僕は雀が意地悪をしているのだと思った。

しかし、雀は「僕の力では君を運べないよ、夏が終わるまで待ってくれるならいいよ」と言った。

僕は二つ返事でその提案を了承した。


それから月日は経って、夏が終わった。

それでも雀はまだ僕を迎えに来なかった。

僕の花びらは全て散って、カラカラに乾ききって、残ったのは種だけになってしまった。

そして、ようやく雀が顔を出した。

雀は言った。「見事な種になったね、これなら僕でも運べそうだよ」

そして雀は僕をくちばしにくわえた。

僕は何がどうなっているのかわからなかったが、だんだんと意識が遠くなり、いつの間にか眠ってしまった。


しばらくして、雀は、飛び立った。


「急がなくっちゃ、早くあっちに行かなきゃ」と言い、北へ北へと飛んでいた。

空気がだんだんと冷たくなった。

雀の吐く息が白くなった。

それでも雀は休むことなく飛び続けた。

雀の意識も朦朧としてきた。

それでも雀は飛ぶことをやめなかった。飛んで飛んで、そして、飛んだ。


休まずに飛び続けた雀の身体は疲れ切ってもう飛べなくなった。

雀は力尽きてそのまま地面へと落下していった。

地面に転がった雀のくちばしには種が無かった。

落下の衝撃とともに羽翼のそばに転がっていた。



しばらくして、僕が目を覚ますと横に雀がいた。

いくら呼びかけても雀が返事をすることはなかった。

「雀さん、雀さん、僕を彼女の所に連れて行ってくれる約束は?」「起きてよ、雀さん」

何度呼んでも反応はなかった。僕は泣きじゃくった。泣いて泣いて、いっぱい泣いた。


次第に辺りは暗くなっていき、どんどん寒くなってきた。僕の意識も朦朧としてきた。

 ふと、何かやわらかいものが僕を包み込んだような気がした。僕が目を開けると、僕を包み込むようにして彼女がいた。彼女は僕にずっと微笑みかけている。僕の中でのあの仏頂面はもうどこにもない。

僕はなんだか心地よくなってきた。少し眠くなってきたので寝ることにした。

彼女は「おやすみ」とだけ言った。その言葉を最後に、僕は深い眠りについた。





雪も解け、春の訪れを感じさせるそよ風が、咲いたばかりの花々を掠めていった。

雀はどこか遠くへ行ってしまったらしい。


静かに時は流れ、お世辞にも暖かいと言う言葉では足りないくらいのむさ苦しいほどの暑さがやってきた。土から芽を出した向日葵はどんどん成長していき、太陽に挨拶をしている。

「やあ太陽さん、こんにちは」「僕はとても心地の良い夢を見た気がします、とっても心地のいい夢です」とまたぺらぺらと話していると「ああ、もちろんさ」「君たちのことはいつでも見ていたよ」とかえした。

「それにしても珍しいね、本来ならお互いの存在すら知るはずもない雪と向日葵がお互いに探していたなんてね」「私の手助けも役には立ったみたいだし」と言った。

向日葵はあっけらかんとした表情でいたが太陽は「はっはっは」と笑うばかりであった。その横を何食わぬ顔で一羽の雀が通り過ぎていった。相変わらず雀の体は小さい。



少し離れた向日葵畑で少女がかくれんぼをしていた。

「おばあちゃん、おやつ!」と元気の良い声で言った。

「はいはい、あなたの好物はあなたのおかあさんからいつも聞いているよ」と言い、少女の好物を渡した。

それをもらうとすぐに向日葵畑へと駆け出した。手にはチューペットが一本。


向日葵畑に着くと、少女はチューペットを二つに折ると片方にかぶりついた。

とても美味しそうに食べていた。












ワタクシにとって後書きとは、お口直しのたくあんとほぼ同じですので軽く聞き流す程度に読み進めていただければと思います。


突然ですが、ワタクシが感じていることについて少しばかりお話しさせてください。


最近、snsや会話の途中、物語の中でも「個性」や「キャラクター」などを過度に尊重する風潮があると思うのです。もちろん、それらが一瞬のうちに消えたとするならば色々と不都合が生じることでしょうし、個性がなければ自分を主張することができなくなるかもしれません。しかし、ワタクシには世間一般において個性が大切にされる意味もわからなければ意図を理解する気すら起こりません。何故かと問われれば、理由はいくつか思い浮かびます。順を追って説明していければと思います。しかし、ワタクシの思う風潮への意識は世間一般でいう「普通」とは少しずれているのだと思います。ワタクシの考えなどたった一つの視点を変えたものに過ぎません。見る側によって受け取り方は大きく変わることでしょう。それはあなたとワタクシが他人であるが故、致し方ないことなのだと思います。

さて、個性と言えば聞こえは良いものの、言い方を変えてしまえばそれはただの特徴に過ぎません。

「ある子には個性がない」と言うことと「ある子には特徴がない」と言うことはほぼ同義であると言っても良いでしょう。そして、「特徴がない」と言う言葉は裏を返せば「特徴がない」ことがその子にとっての「特徴」ということなのです。「個性」とは、本来、ある個人を特徴づけている性質そのものを指すのであって、そこに特別な何かが備わっている必要は全くないのです。そのことに気づける人がどれほどいることでしょうか。

また、先ほど少しだけお話に出しましたが、「普通」に対する意識の差がワタクシと皆さんではどれほどあるのでしょうか。

よく耳にするのは「普通って何なの?」「普通でいることに意味はあるの?」などです。「こんなのあなたの経験にすぎないでしょ?」「勝手なこと言わないでくれる?」と思う方もいるかもしれません。ええ、これはワタクシの経験や価値観から言えることに他なりません。また、ワタクシと異なる意見を持つ方を攻撃したり、反論するつもりは一切ありません。何故なら、自分と異なった意見だとしても相手にとって絶対に正しい事象として存在しているため、相手の中では絶対に正しいわけで、それを部外者である他人が何を言おうと本人の気持ちが自ら変わらぬ限り、相手の意見は変わらないと考えているからです。反対の意見は、相手の意見を変えさせるきっかけにはなり得るのかもしれませんが直接的な要因とするには少々無理があります。そして何より、ワタクシの場合でも同じ事が言えます。ワタクシの考えがワタクシの中で正しさが絶対的であるうちは、ワタクシの意見を主張していくつもりです。もちろん、ワタクシが自分で納得のいく他の意見があれば、その意見を拒んだりせず取り込んでいく所存です。

では、本題です。「普通」を疑い、「普通」が何かと問うことは、あまりにも愚かで野蛮な行為だと思うのです。多様性が求められる現代に生きる我々は己を理解し、技術を超越するほどの考察力が必要になっていくと思います。そんな中、「普通」というワードがどのような意味を持つ事になるのか、想像してみてください。そもそも、一部分を切り取って拡大してみようとするから全体が見えにくくなっているのです。最初から近づいて見る必要はないのです。まず、「普通」という全体像を思い浮かべてみてください。そこには大衆という言葉で括られた世間一般の人々が見えてくることでしょう。そして、世間一般の人々の中には芸能人もいるだろうし、職人もいる、雇用者もいれば被雇用者もいることだろう。ここで忘れてはいけないのが自分自身の存在です。「普通」を作り上げている人々の中には家族や友人、そして自分自身も含まれているのです。

一旦視点を変えてみましょう。

気づきましたでしょうか、先ほど述べたとおり、「普通」を作っているのは私たち個人であるということに。

「普通」が何であるかと疑問をぶつけることに区切りを指し、「普通」の正体に気を取られるのではなく、「普通」を構成する人々の内の一人として自分の中にある「普通」と向き合い、自分の中で何を「普通」としていくのかを自分で決めていくことが大切になってくるのだと、そう感じます。


何度も申し上げますが、これは私の考えであり、意見を押しつけるつもりは全くありません。各々が自分の考えを自分の思うように全うすれば良いと考えております。

自由に書くことの喜びを知り、それを誰かに伝えたい、そう感じたのです。

『ものかき』というのは本当に気まぐれで、お節介で時には憎まれ口を叩くこともございます。それがワタクシの特徴なのだと理解していただけるのであれば、この長い文章を書いた甲斐があったなと一安心できることでしょう。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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