月光に照らされる
雪がしとしとと降り積もる。
その積もった雪の感触を楽しみながら私は一歩一歩と歩みを進める。
感触をしっかりと確かめるように。
だんだんと楽しくなってきた私は、ステップを踏み始めて踊りだす。
夢中になって踊っているうちに思ったよりも時間が過ぎてしまったみたい。
楽しく踊る私を少し離れたところから男の子が見ている。
私は踊りをやめる。
ちゃんとしたお作法にのっとっていない私の踊りをじっと見ていた男の子を
微笑みながら見返す。
ゆっくりと私は手を差し出すと男の子はおずおず私の手を取ってくれた。
そして私たちは踊りだす。
途中何度も何度も転びそうになる彼を何度も何度も支えて笑いながら踊る。
月光が照らす雪降る夜、森の中の小さな広間で狂ったように笑いながら私たちは踊り続けた。
------------------------------------------------------------
けがをした弟のために森の中に薬草を取りに行った帰り道。
森の中の小さな広間で、笑いながら踊っている女の子を見た。
雲一つない月のきれいな夜。
月光に照らされた彼女の表情は心の底から楽しんでいるようだった。
時折、何かをすくうように手を差し出す。
その手から滴る血が足元の死体に落ちていく。
その異様な光景に身体が全力で避難信号を出すのに、なぜか彼女から目を離せなかった。
そんな僕に気付いたのか、彼女は踊りをやめて僕を見る。
そして儚げな表情に笑みを浮かべながら僕に近づき手を差し出した。
まるで、一緒に踊りませんかというように。
気づいたときには僕は彼女の手をとっていて彼女と一緒に踊りだす。
彼女は儚げな表情のまま心底楽しそうに笑い続ける。
何度も何度も転びそうになる僕を支えながら楽しそうに笑う。
何度も何度も支えてもらいながら、僕も楽しくなって笑いだす。
月光照らす静かな夜、森の中には僕たちの笑い声だけが響いていた。