プロローグ
「いたぞ!河原の方面だ!」
バタバタと俺を追いかける足音が後ろから聞こえてくる。
俺は人混みを掻き分け川の方へ全力疾走する。
昼の都会を騒がすこの俺はアラサーの銀行強盗犯。
いい年こいたおっさんだが先月リストラされてもう全てがどうでもよくなった為奇行に走った。
それ以外に特に理由はない。
この世の中クソッタレだ!
兎に角ここで俺は捕まったら後がない。
そんな事は考えなくたって身に染みるほどわかる。
こんなことやっておいて今更後がどうなるかわかりませんでしたなんて笑い話じゃないんだから。
「クッ…」
足音が段々近づいてくる。もう10mは切っただろう。
自分の体も限界だ。だがここで捕まってなるものか!
俺は自分を奮い立たせ強く地面を蹴り上げた…はずだった。
ガッ
つま先に固い何かが当たる。
何かって言うか小石。拳より一回り小さいくらいの小石だ。
つま先に当たった事により俺の体はバランスを崩す。
あ…終わった…
体が地面に激突、すると思いきや
ぐるん、っと回転する。
そのままぐるぐるぐるぐると回転し、そして
ドッパーン!…と勢いよく飛沫をあげて川に落ちた。深い。
いや落ちたとか冷静に言ってる場合じゃない俺泳げなごぼぼぼぼぼ
まさか…こんな事で死ぬなんて…コメディと言うかシュールな死に方に自分でも呆れながら
俺は意識を手放した。