始まりは身近なところから
普段、クローゼットを開ける時、中に怪物がいる!などと馬鹿げた事を考えず、普通に開けるのが常人のすること。だから、この話を僕の周りにいる常人達にこの話をすると、だから何?って返ってくるのがオチだ。だけど、その常人達を驚かせることが出来るであろうことが、今僕の目の前にあるクローゼットで起きている。
「……………………」
僕の部屋のクローゼットは、どうやら全体が緑タイルの歪んだ部屋だったらしい。正面奥には高級そうなドアがある。
…あれ?入れていたはずの中身がどこかにいっているけど、僕がしまったと思い込んでいただけかもしれない。多分。
キィィ
おいおい、なんか聞こえたぞ。ドアが空いてるよ。なんか人影見えるぞ。…夢だー、これは夢だー。クローゼットから人が出てくる訳がないだろー。
その時。
「やっと出れたわ。えーと、ここはどこかなー。参ったなー」
神様お願い見捨てないで…。そんな思いを神様が聞くわけもなく、恐怖でいっぱいの僕はでて来た 人?に話しかけられた。
「おーいそこの君ー、ここはどこかなー?」
「…軽!今ので冷静になったわ。えーとここ は僕の部屋ですが。」
よく見てみると、外見少年だな。外ハネの茶髪に透き通った水色の眼。赤のパーカーに短パンだ。少年そのものじゃないか。何を僕は怖がってたんだ。それにしても……身長低いな。
「そうか。聞きたかった答えと少し違うがまぁよかろう。あっそうそう、俺はミルっていうものだー。よろしく!」
「僕は梶原悠人だ。って聞きたかった答えってなんだよー、コノコノー。」
「それをいうならお前心の中で俺の身長低くねって思っただろー。」
「うっ………」
「へっ、図星だよ。これだからへっぽこ人は…」
へっぽこ人ってなんだよ。と、そこで僕は話題を変えてみようと思う。
「ところでミル、今のはなんだったんだ?」
「まずな、俺はココとは別の世界から来たんだ。そんでゲートがあったこの場所へ出た。これ、頭に入れとけ。で、何しにきたかというと…あれ?なんでだっけ?忘れちゃったっ。てへっ。ということで一緒に居させてねってことだ。」
最後の方、棒読みだったぞ。結局お前何しにきたんだし。
とりあえず、今日のところは眠ることにした。もちろんミルにも布団を貸してやったさ。
でも、恐怖は続いた。ー 後に起こる惨劇は、まだ、誰も何も知らない。
ガタンっ!
…んー。何か今音がしたような。…ま、いっか。二度寝〜二度寝〜とか思いながら寝返りをうつ僕。
「うわぁっ!?!?」
目の前に顔があった。
…落ち着いて、しばらくよく見てみると、ミルじゃあないか。
「…よし、寝よう」
「そんなのあんまりですぅー!」
ミルがいきなり叫んだ。…いや、ミルじゃない?では、一体誰なのか?まぁ、本人に聞いた方が早いだろう。
「おい、お前は誰だ?」
「それを言うならそっちこそ誰ですっての。仕方ないわ、答えてやろうじゃないの。」
僕は思った。ウザっ!そして可愛い!そんな容姿で見つめられたら(僕のフィルターを通してでは)ウザさなんか羽ついてとんでいったわ!
あ、でもどうでもよくなった。可愛いから許す。頼む、寝かせてくれ。
「いえ、やっぱ結構です。」
「なんでーっ!どうしてーっ!私の名前聞いてよー!私はラルミよ!もう一度言うわ、ラルミよ。はい、ここ大事。テストに出るよー」
「いや、人の名前如きでテストなんか出てこねーだろ!」
たかが人の名前だ。しかも、徳川家康やペリーなど有名な人物でもない。
だが、悠人の言葉を聞いたラルミは額にしわを寄せた。そして、こう言い放つ。いや、怒る。
「たかが、人の名前ですって?名前って、大切な物はなんですよ?自分を証明してくれる大事な大事なものなんです!それを軽く馬鹿にするとは、どんな神経してるのですか!」
「……すみません。これからは大切にします。」
「解ってくれれば結構なのです。」
ラルミには、名前に何か因縁でもあるのか?
いや、今問題なのは名前じゃなくてあなたの正体だよな?確か。
「それは、次回!」
「次回があればな!っていうか次回って言うなー!」
「期待しないでくださいな(笑)ただの……人間です…」
「その(笑)は何だ!何の(笑)だ!フラグでも立ててんのか!」
ほれほれ、と手を叩くラルミ。…お前がはじめたんだろ!?
「えー。話題を切り替えまして。私、ラルミは。ぐずっ。ミルのっ。ぐずっ。もうひとりの人格ですっ!」
えーーーー!さらっとそんなこと、言うなーーーー!
「えーい、うるさいわボケ!」
ガツっ。
…いたいおー。
目の前に叩きならぬグーパンチがとんできた。