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空とパレード

作者: しょう

毎年9月のある時期になると、両親に連れられて祖父母の実家へと行っていた。

夕方になると一家総出で玄関を出て簡易椅子に座って待つのは、何十台も連なるオープンカーのパレードツーリング。

手を降ると振り返して貰えるのが嬉しくてずっとずっと楽しみにしていた。

そのために何日も前からソワソワと天気を気にして晴れるのを祈っていたのを覚えている。

父の経営していた会社が事業に失敗し両親が別れ、父方の実家であったその田舎に行くこともなくなってしまった。

それでもたまに街でその車を見かける度に、田舎の秋の薫りが胸をよぎり切ない気持ちが蘇った。


いつかたくさん稼げるようになってあの車を買おう。


その気持ちが私を机に向かわせていた。

塾も家庭教師もつけられず、財力的に大学進学すらも諦め、日々の生活に追われ続ける毎日。

それでもまだその思いは「人並みの生活をしたい」というささやかな夢の片隅にそっと寄り添っていた。



車の修理工として働いていた夫と出会ったのは2年前。

中古車販売の小さな会社で事務員をしていた私にしつこいほどに声をかけ、やたらと食べ物を与えようとする人だった。

独りきりで生きていこうとただがむしゃらに働いていた私の夢は、「二人」を選んだ事であっさり叶うこととなる。


今年の秋、二人で訪れた北海道の田舎の街。

思い出の家も土地ももうないけれど、牧草と緑の薫りにこの一年で馴染んだ人の薫りが加わって、私の郷愁を刺激する。 車道の端から手を振ったあの景色が、今年は助手席からの景色に変わる。


幌を開けた車に乗るのは二人。

前後に連なる数十台オープンカーのパレード。

懐かしい薫りに包まれて、空と山を360℃見渡しながら新しい思い出と走り続ける。


来年も、その先も、ずっと。続くパレード。


このキーワードで車種とイベント名が解る方は仲間ですね。

ちなみに私はペーパードライバーです。

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