最終話 今日は、なんの日だ?
徐々に空が青から赤へと変わっていた。そして、薄暗くなっていた。
その中でスーパーのきらびやかな光は、暗闇を消していた。
大きな買い物かごに次々と商品を乗せている。
「これもお願い。」
「うん。」
「これもね。」
すると買い物かごのカートが重くなったのか少し沈んでいった。
「たかし喜ぶかなぁ?」
死神と呼ばれている子がそう言うとたかしの母は、「うん。」と首を縦にふった。
あたりは、もう真っ暗になっていた。2人は大量の食糧をエコバックと有料袋に引き詰めて両手で、顔を赤くしながら持って家へと向かった。
「たかし、まだこないのかな?」
「遅いわねぇ」
死神と呼ばれている子と、たかしの姉がそう言うと、たかしの母は、揚げたてのフライドチキンを皿に盛りテーブルに置いた。
数分経っても、いっこうに来ないたかしの状況を見て死神と呼ばれている子とたかしの姉は非常に苛立って、その苛らだちが表情にも出るほどだった。すると、
玄関から一瞬音がするのが聞こえた。その瞬間、瞬時に死神と呼ばれている子とたかしの姉は、ある物を手に取り急いで玄関のもとへと向かった。
「たかしお誕生日おめでとう!!」
と言い手に持ったクラッカーのひもを引き、大きな濁音をならした。
「いきなり、何だよおめーらぁ!!」
たかしの頭にはクラッカーから放たれた、色とりどりの紙ビラが下がっていた。
「だから、たかしお誕生日おめでとう!!」
「誕生日?誰の?」
「あんたのよ!!」
「俺の?俺、今日、誕生日だっけ。」
「そうよ5月20日あんたの誕生日じゃない。」
「・・・そうか、今日、俺のたんじょうびだったのか、完全に忘れてた。」
「で、それで?」
「それでって?」
「今の感想よ。」
「今の感想?何だよそれ。」
「なんだよ、じゃないわよ、早く言いなさいよ!?」
「う~~ん・・・飯がうまそう。」
「何よそれ~~。」
たくさんのご馳走を目の当たりにした、たかしは、むさぼるように両手を器用に使いながら食物を口の中へと続々と運んだ、あまりにも食欲おうせいなたかしを見て一同は、驚いて言った。
「たかし、あなた、ものスゴイ食欲ね。」
(さすがに練炭自殺をするために山に2日こもってたから、メシ食ってないって言えないしな。)と
たかしは、心の中で一人呟いた。すると、急に部屋の明かりが消え5本ほどの明かりの灯火が表れた。
「ハッピバースデートゥーユー♪。ハッピーバースデートゥーユー♪、ハッピバースデーDearたかし君~~~♪ハッピバースデートゥーユー♪。」
一同がそう歌うとたかしは、照れ隠すかのように食事に集中した。
「たかし早く消しなさいよ!!」
「何が。」
「分かるでしょうロウソクよロウソク。」
たかしの姉がそう言うと、たかしは、恥ずかしながら拒絶していた、だが、あまりにも、しつこく2人が寄ってたかって言うので仕方なく5つの明るみを消した途端、部屋中に歓声が湧き起った。
「たかし、おめでとう!!」
「おめでとう、たかし!!」
食事を終へ後片付けをたかしの母と姉がしていると急に死神と呼ばれている子が急に体調を崩したのかグズリだした。するとたかしの母は、それに気づいたのか、その子をなだめる様に言った。
「どうしたの?具合でも悪いのかい?」
死神と呼ばれている子は直、表情を黒くしていた。
「・・・ぼく、もう神様の所に行かなきゃいけないの。」
「また、それかい、それって、いつなの?」
すると死神と呼ばれている子が部屋の壁に掛かっている時計を指して言った。
「あの、みじかい針が12にきたらいかなきゃいけないの。」
たかしの母とたかし達は、一同に時計を見ると、11時50分を過ぎる所だった。
「ぼく、いきたくないよ!!このまま、おかあさんとエリとたかしと一緒にいたいよ!!」
「大丈夫よ、このまま一緒にいられるよ。」
そうたかしの母が言うと死神と呼ばれている子は、たかしの母の胸に飛びこみ多量、涙を流していた。
そのまま、ずっとその子を抱きかかえている、
急に隣の部屋がまばゆい光に包まれた。
するとカミナリの様な大きな声がたかし達の耳に入り、一同は、一瞬にして鳥肌が立った。
「何!?今の音!?」
「かみさまの声だよ。」
「神様の声!?」
「うん・・・ぼくを呼んでいるんだよ。」
「ホントにいるのか?神様って?」
「うん・・いるよ。」
するともう一度光の中から人では耐えきれない様な鋭い大きな声が直接たかし達の耳に入ってくる。
「かみさまが早くこいっていってる。」
「お前が言っているのがホントで、神様がいるとしたら、お前が言ってた俺とお前が本物の家族だって言うのは本当だったのか?」
「うん、だからずっと言っているじゃん。」
死神と呼ばれている子が、そういうとたかしの母は言った。
「ぼうや、もしかして、あなた、あの時の・・・・・。」
「そうだよ、ぼくは、お母さんのこどもだよ。」
そう聞いた瞬間たかしの母の膝が崩れ込み、体が前に沈み込んだ。
「ごめんね、ぼうや、本当にごめんね、私が全部悪いのよ。」
そう言いながら、たかしの母は大声で泣いていた。
・・・・初めて見たお袋がこんなにも俺たちの前で大声でわめきながら泣いているのを、そして、聞いた。その死神を中絶した事を、望まれなかった子供。オヤジとお袋が高1の時に不本意にも授かった子だと言う。
その時、2人の両親は、猛反対して、「おろせ!!おろせ!!」の一点張りだったと言う。
多分、世間体を気にしての事と学生の2人が本当に子供をちゃんと育てられるのか疑ったのだろう。そして、互いの親たちは、責任を言い逃れ。不貞の子みだらな行為で産まれる子だと、ののしったらしい。だけどお袋は、その子を産みたかった、単純に女性の母性の表れだろう。だが、
それは結局は、叶わなかった。周りからの圧力があり自分は罪を犯してしまったと言う、罪悪感にかられ、追い込まれたのだ。
「私の事恨んでいるでしょう!!」
お袋は光に包まれている死神の体を必死につかみ泣きわめくように言った。
「にくんでないよ。」
「それじゃあ、行かないで私の側にいて。」
「それは、できないみたい、だってかみさまと約束したんだもん。じぶんのお父さんとお母さんは、どんなひとなのか知りたいって、そしたら、神様がぼくに6才のとしをあたえて、見にいっていいって言ったんだ、でもそれを、おえたら必ずかえってこいって、そしたら、おまえを一度ちじょうに降ろすっていってくれたんだ。だからここには、のこりたいけどのこれないの。」
するとお袋は、光の輝く方に大きな声を出して言った。
「神様、仏様、どうかお願いです、この子を連れて行かないで下さい!!」と
何度も、喉の奥がはち切れんばかりに言った。
もう時間がなかった時計の針はスデに12時を回っていて、死神の体は光に飲み込まれて体が消えかかっていた。それでも、お袋は、死神の手をガッチリつかみ必死に離さないようにした。そして、喉の芯で
「連れてかないで!!」
と光の中に訴えかけていた。そして、数秒、死神の体が全て光に優しく包まれ消えていた。
「ぼく、おかあさんの子供でほんとうに良かった・・・
今日も空が青く澄み切っていた。ここの所、毎日、快晴だ
俺は、相変わらず赤く深く光る棒を振っている。もう少しでお昼だな、俺は幕の内弁当とおなじみのカレーパンを手に取りレジへと向かい清算した。
そして、ポケットの中にある振動体を手に収めカレーパンの油を吸った親指で画面を打ちしネットを見た。
《今日は、気持ちのいいくらいの青空。みんなもこの空見てるかな?私は、今スーパーの休憩室で手作りのキャラ弁とまでは、言わないけどお弁当を食べています。》
彼女は、色とりどりとは、言わないが黄色と赤が妙に目立つような弁当の写真をネットに掲載していた。
ハハハハハハ・・・・白馬に乗った王子さまだったけ?何か笑えるよな、自ら自分の命を絶とうとしていた人間がのんきに、日常をつづっている。
そう考えると今までの自分がなんかバカらしく見えてきた。生きたくても、生きられない命もあるんだよな。
俺は、死神・・・・いや、
兄貴にそう教わったような気がした、あの無邪気なくらいな眩しい笑顔で・・・・




