02 光る棒を振る仕事
日常が歪んで見える。あの青い空はビルに囲まれて、行き場を見失っていた。
黒いゴマの行列が、あちらこちらに散りばめられている。俺は、その人達を誘導する事が仕事だ。
赤い光るライトの棒を振り回して工事中の足の踏み場もない所に人が落ちない様にする事が俺の使命だ。
今では慣れ過ぎて人が来たら勝手に手首を振り回しているけど、たまには
ボーっとして人が通り過ぎているのを忘れている時がある。そういう場合は仕方ないか・・という気持ちがスゴクでる、前はちゃんとしないといけないと言う、
責任感と正義感があったけど、今ではそれが全くない心の無い人形がただ、光る棒を振り回しているだけのようだ。だけど、
その現場で歩道人が事故った場合それは、それで面白そうだが上に責任を取らされるから面倒くさいだよな、だからちゃんと仕事しているように見せるんだ。早く言えば形のようなもんだ。こんな考え方をしている人に仕事をさせてる会社なんて一体どんな会社なんだ。本当におかしな世の中だよ。
だからもっと人の心をさぐれば本当に奇妙な人達がたくさん出てくるんじゃないか、と思う。
「たかし!!」「たかし!!」
考え事してたら急に俺を呼ぶ声がしてきた。パッと横とみた・・・・死神だ。
「たかし!!元気でやってる?」
「何でお前がここにいるんだよ!?」
「ひまだから、たかしの様子をみにきた。」
「それに、何で俺の名前知ってるんだよ?」
「僕の弟だから。」
「お前より俺の方が年上だろー。」
「ちがうもん!!ぼくが年上だもん!!」
なんだよ!!コイツもしかして俺のお袋の名前も分かるんじゃないか?
「俺のお袋の名前分かるか?」
「恵子」
「何で分かるんだよ!?」
「だって僕のおかあさんだもん!!」
「訳分かんね~~よ、俺のお母さんだっつ~~の!!」
何だよ、この死神、俺を殺しに来たんじゃないのか?それとも、もて遊んでいるのか?じわじわと・・・・たち悪ぃ~~な結構・・・死ぬ時って皆こうなのかな?
ちょうどお昼時間になった「お前メシどうするんだよ?」
「おかあさんが、お弁当作ってくれた。」
そう言って死神は青いリュックの中から弁当を取り出し自慢するかのように俺に弁当を見せていた。
死神もご飯食べるんだな・・・そして俺はスグ近くにあったコンビニに寄り弁当を買った。死神は俺の後についてきていた、それから俺と死神は近くの公園のベンチに座って弁当を食べ始めた。
「これ!!おかあさんから貰ったの!!」
死神は目をキラつかせながら言った。
「それ、俺のリュックだろう。」
死神が持っていたリュックは、俺が小学校1、2年の頃に使っていた物だった。
「これ、たかしのなの!?」
「おう。俺が子供の時に使ってたヤツだ。いわゆる、おさがりと言うヤツだな。」
俺は自信満々に言った。これで俺が年上という事が証明されたな。
「・・・・・」
死神は不服そうに、ゆっくりと顔を下にうつむかせた。
「それ食ったら、もう帰れよ。」
「・・・・うん。」
「自分の家にだぞ。俺の家にはもう行くなよ。」
「なんで?僕おかあさんの子供だもん。」
俺は何だかもう意味が分からなくなってきた。