17 ずる賢い事をする死神
「クソ!!また吸い込まれちまった!!」
男は、荒々しい口調で言葉を発してパチンコの下の台を拳を強く握り閉め叩いた、すると、灰皿が飛んで後ろを歩いていた子供の手前に落ちた。
それを見た男は、大人げない自分の態度に落胆して、その子供に「ゴメンね。坊や。」っと軽い、ほろ苦い笑顔を見せて優しく言った。すると、その子供は地に落ちた灰皿を手に取り、子供らしい頬を丸々と膨らませて笑顔で言った。
「おとうさん。久しぶり!!」
突然その言葉を聞いた。その男は、驚いた顔をして、何やら考え始めた。すると、
その子供は、その男の左腕をしっかいりと掴み。
「ぼくのお父さん!!ぼくのお父さん!!」と
言いながら、飛び跳ねて、男の体が揺れた。
「おじさん、ぼうやの事知らないんだけど・・・」
「何で知らないの?」
「何でって?」
「前に家に行ったじゃん。」
「前に・・・家に・・・?」
「たかしと。」
「たかし・・と?何でたかしの名前知ってるんだい坊や?」
そう言うと男は、深く考えながらシワを寄せ始めた・・・・「あっ!?あの時の坊やか!?夜遅くに来た!?」
「ピンポ~ン。」
「でもね、おじさんは、坊やのお父さんじゃないよ。」
「おとうさんじゃなくないよ、ぼくのおとうさんなんだもん。」
「そうかな~見間違いじゃないかな~。」
「見まちがいじゃなもん!!」
「そうかい。それなら、それでいいんだが。」
たかしの父は別にどうでもいいやという素振りをしながら言った。すると、
死神と呼ばれている子が目をキラつかせ言った。
「ぼくね、このゲームの玉をいっぱいにする事ができるんだよ。」
「坊や小さいのにパチンコの事分かるのかい?でもねパチンコの玉をいっぱいにすることは、難しいんだよ。」
「簡単だよ。それじゃあさぁ~あの台でゲームやってみてよ。」
「この台かい?」
たかしの父は、左から二代目の台の椅子に座って言った。
「この台、目釘が傾いている、それにフィーバーのバーの大きさが小さい、坊やこの台は、さすがに駄目だな。」すると、
すかさず死神と呼ばれている子が言った。
「それじゃあ、一回でもいいから、やってみてよ!!」
たかしの父は、どうせだめだろうと心の中では、思っていたが、嫌々ながらも、右上の札入れに千円を投入した。すると、玉はやはり釘は悪いのかあまりバーに入らなかった。
「ホラな言っただろう。坊やこの台はダメだって。」
そう言うって数発玉を弾いて、止めようと席を立った瞬間絵柄と数字が回り初めて、二つそろって「リーチ」という心地よい響きの音声の音がした。「どうせ当たりはしないよ。」と
たかしの父は、そう心の中で思っていると、絵柄のキャラクターが片目をウィンクして。当たる確率が、高いリーチが掛かった。それでも、まさかなと、たかしの父は思ってあくびをしていたら、大当たりと言う文字が映像から飛び出してきた。
「おお!!本当に当たった!!」
「でしょうぼくの言った通りでしょう。」
「でも、ただのマグれじゃねーか?」
「まだ当たるよこの台は、」
死神と呼ばれる子がそう言うと、半信半疑打ってみると次々と本当に当たってしまった。それが3回連続で気持ちよく打って当たると、その骨を折るように死神と呼ばれている子が言った。
「この台もう当たらないよ。今度は、あの台で打ってみて。」
「そうか、それじゃあ、打ってみる事にするか!!」
その数箱を玉がたくさん詰まった数箱を店員に預けて、たかしの父は、死神と呼ばれている子が指定した台に移動する事にした、そうすると、当たり前の様に大当たりを引き出した。
「今日は、儲かったな~。坊や何か好きな物買ってやろう。」
「ほんとう!?」
「おう!!なんでもいいぞ。」
「やったー・・・・それじゃあぼくお父さんがいい!!」
「はっ・・・!?」
「おとうさんともっと一緒にいたい。」
たかしの父は、少し考える様にして、冗談交じりに言った。
「そうか~~それじゃぁ・・・このまま一緒にいるか!!」
「うん!!」
「でも本当にそんなんでいいのか?」
「ぼく、おとうさんの事い~~っぱい好きだから、それでいい!!」
「そうか、じゃあ今度もパチンコ勝たせてくれよな。」
死神と呼ばれている子は、ため息をつきそうな困った顔をしながら説明した。
「それが・・本当はダメなんだ。こんなズルい事したら・・・神様に怒られちゃうんだ・・・」
「そうか~それは、チョット残念だな~。」
「お父さん本当にぼくの事、本当の家族だって思ってる?おかあさんとエリもたかしも信じないの・・・」
たかしの父は、一瞬言葉が詰まった。だが、
この子を傷つけたくなかったので、例え嘘でもいいから、ごまかすように言葉を詰まらせながら言った。
「あっ・・・ああ、俺は信じるよ・・・だってパチンコだって当てたんだし、この間、家であった時もちょっとピンときてよ。」
「本当に?」
「おおっ。」
「でもね。ぼくね、もうすぐ神様の所に帰らなくちゃいけないんだ。」
「あと、どのくらいでだい?」
「あと5日位かな。」
「そうか、せっかく会えたのにそりゃ悲しいな。」
たかしの父は死神と呼ばれている子の頭に軽く手をおいて、優しい口調でその子をなだめた。