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12 グチャグチャになったリスカの跡 

 遠い空を見ていた。青い空は雲と溶け込んで、何も不自然さがなかった。

だが、この世界の不自然は、明るみに身近に感じられるのが何だか不公平のように思えた。そして、窓の枠じたいは何だか不自然に見えた。

頭がボーっとして、口が半開きになりだらっと顔全体の肉が垂れ下がり目は、どこにも焦点が合わなかった。

と言うより故意に合わせないようにしていた。

お昼時間になったと同時に食事が始まるチャイムが鳴り、昼食が配られた、俺は横を振り向き看護婦が食事を置くのを見ないようにしていた。そうしていたら看護婦が調子はどうですか?と聞いてきたので俺はウソをついて「調子は悪い。」と言い返した。そしたらその看護婦が心配して、あれこれ聞いてきたので、「別にウソだよ!!」と言い、本当にここは、めんどくさい所だなと思った。

もうこの病院に何週間いるのだろう?

何カ月は、経っているんじゃないか?

あのカウンセラーの人と話すのも、もう苦痛でしかなかった。1時になった頃、医者が様子を見に来ていた。あの、白髪だらけの老人だ、その医者が俺の不機嫌な顔を見て言った。

「調子はどうだね。」

いつもそれだ。俺は受け応えするのが、めんどくさかったので何も言わすに無視をしていた。そして、医者は、軽はずみの言葉で言った。

「今日は、カウンセリングの日だから、また頑張って話を聞くんだよ。」

そういうとスタスタと、どこかへ去っていた。

また、あの女の人の上辺だけの話を聞くのか。一週間に2回は、聞いている、何だかウザイ。

あの裏声交じりの声を聞くたんびに胡散臭く思えて来る。


 蛇口をひねってシャワーから出て来るお湯を俺は浴びながらカッターで切った。左腕の傷口のかさぶたを指でなぞるようにして、その快ちい快感を味わっていた。そして、

赤くグチャグチャになった、その跡がスゴク気持ちがよくて、指でなぞるのがやめられずにいた。俺が病院の風呂から出て自分の病室の中に入ると、カウンセラーのあの女の人が俺が眠るベットの横のイスに腰掛けていた。俺は、

一瞬で顔を曇らせた。そういう俺の顔の状態を知ってか知らずか、その事をかまわずにいつもの調子で俺に話しかけて来た。

「今日はいい天気だね。」

俺は、その言葉を無視して寝床に入って目を閉めた。そうすると負けずと俺に話しかけてきた。

「ねえ、カウンセリング室に移動しましょう。」

俺は直、無視し続けていたら、その女はあきらめずにまだ、俺に話しかけてきて、ずっとベットの横のイスに座っていたので、もうこれは、この人は、俺と話しをするまで引き下がらないと思いうっとうしくなって、仕方なくその女の人の要望に応じた。

「この社会は、人を選んでいる。」

俺がこううち出すと、そのカウンセラーの女は答えた。

「そうよね。この社会は人を選んでいるわね、でもそうしないと社会はなりたたないのよね。」

「能力のない人間は、削がれていくんだよ。」

「そういう経験はあるの?」

「毎日さ書類さえ通らない、通って面接したとしてもダメ。」

俺がそう言うとカウンセラーの女は、チョット考えて具体的な話しをしてきた。

「私が協力して、仕事を探してみるから、やってみない?今すぐにとは、言わないけど精神的にも落ち着いてきたら。」

「もう遅いよ。」

「もう遅い?何故?」

「やる気がない・・・いや、こんな社会にすがりたくない。」

「だから死にたいの?・・・」

「・・・・・・・。」

俺は、口ごもった。そして、もうこの女と話しはしたくなかったので、それ以上は何も喋らなかった。

 カウンセリングなんてただの技術だ相手の心を伺って、いかに傷つけないで相手を立ちなおらせる、犬や猫をしつけするのと同じだ。犬がお手をするにはどうすればいいのか、

犬がお座りをするには、どうした方が得策か。人間の心理を読んで今この人は、こう考えているから、こうした方がいいとか。

今はそう考えてるから、そうした方が良いとか、そういうの・の心の探りあいであって本心ではない、ただの技術のプロだ。

そう考えると俺は、そういう人にスゴクうんざりするんだよ。だから、無駄なんだよ、一人の人間を変えるという事は。

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