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夜月  作者: 御華槻 羅夢
4/5

第4話


 翌日、僕は部屋に射し込む朝日で目が覚めた。


 昨日のプールへ行った為、少しだけ疲れていた…。


「もう朝か…」


 体を起こそうとしても起きない…。


…またか…。


 不意に右頬に温かい風を感じた。右を向くとラズが可愛い寝顔をして寝ていた…。


「…大人しいと可愛いのにな」


 頭の後ろにも温かい風を感じる…。


…あれ?


 後ろを向くと小学生ぐらいの女の子がいた。


「…おはよ。お兄ちゃん!」


…僕の妹だ…。


「…何でいるんだ!胡代里!」


 僕の横で寝ていた小学生は僕の妹で[海灘胡代里]。昨日まで修学旅行に行っていた。ちなみに今は下着姿だった…。


「何でって…。私の家じゃない?」


「…朝から何騒いでんの…?」


 ラズが目を覚ます。


…嵐の予感するんだよな。


「…あんた誰?」


 ラズはまた裸だった…。


…2人とも朝から刺激強いよ…


「…私?私はお兄ちゃんの妹です!」


 そう言って僕の腕に抱きついてくる…。


「ちょっと何してんのよ!離れなさいよ!!!」


 ラズは胡代里を引き剥がそうと必死になっている。


…僕としてはゆっくりしたいんだけど…。






「えっと…、ドタバタしてて自己紹介は出来なかったね…。海灘胡代里です!よろしくね!」


 胡代里は笑顔だった。一方ラズはムスッとしていた…。


「…ラズ。…よろしく…」


「自己紹介も終わった所で、仲良くなったし…、僕は寝るから…」


…今日はとりあえず寝たい。


 僕が2階に上がろうとすると、


「お兄ちゃん!久しぶりに会ったんだからどっか行こうよ!!!」


 胡代里が引き留めてくる…。


「何言ってんのよ!あたしと出掛けるんでしょ!」


…2人とも外に出ること前提なんだ…。


「どっちにするの!?」


…同じタイミングで、しかも2択…。


 2人から追求された僕は、とんでもないことを言ってしまった…。


「…3人で出掛けたらいいんじゃない?」






 両手に花とはよく言うけど、今回の状況で喜べるのは能天気でロリコンな友哉だけだろう…


 僕は今、とてつもなく気まずい状況にある。


 右には笑顔で腕を組んでいる胡代里が…、左にはそっぽを向いて歩いているラズがいた。


「そろそろ仲良くならない?」


 僕が話題を切り出す。


「私はいいんだけど、ラズちゃんがねぇ…」


 胡代里が悪戯っぽい笑みを浮かべてラズを見る。


「何よ!ケンカ売ってんの!?」


 ラズがムキになって反抗している…。


…こんな時に友哉と菜穂がいてくれたらなぁ…。


 僕は考えていると遠くから、


…ラズちゃん今頃何してるんだろ~なぁ」


…私の買い物について来てるんだから今はその話は無しよ!」


「え~っ!」

 友哉と菜穂が並んで歩いていた…。


…ラッキー!!!






「両手に花とはこの事だね~!!!」


…僕の予想は見事的中した。


「…友哉って性格変わるよね」


「…ああ」


 菜穂と僕はラズと胡代里の肩を抱いて陽気に歩いている友哉を見て引いていた…。


「菜穂達は何してたの?」


「友哉に買い物について来てもらってたの。隼人達は?」


「…半強制的にデートかな?」


 僕は皮肉を込めて言った。


「…邪魔しちゃった?」


 菜穂は笑いながら僕を見てくる…。


「…いや。むしろ助かったよ。まさかあの変態がいるとは思ってなかったからさ…」


 未だテンションの上がっている友哉を見ながら言った。


…昨日とは大違いだな…。


「ところでさ、この後って予定ある?」


 菜穂が聞いてきた。


「…特にはないけど?」


「じゃあさ、遊園地行かない?胡代里ちゃんもいるしさ!」


 菜穂は胡代里の事を小さい頃から知っている…。


 僕は、テンションが最高潮を迎えていた友哉に後ろから蹴りを食らわした…。


「…何すんだ!!!」


「…遊園地行くぞ」


「遊園地に行くの?本当?お兄ちゃん!」


 胡代里が目を輝かせている一方、


「ちょっとまた勝手に決めたでしょ!…まぁいいけど…」


 ラズも納得していた…。


…何気にまとまったな…。


「…遊園地=お化け屋敷。お化け屋敷=…。…ムフフ」


 友哉が壊れていた…。


「意見もまとまったし早く行くよ!」


 菜穂が友哉の頭を叩いて言った…。





 遊園地に着いた…。


「まだ昼だし、最初はジェットコースターにする?」


 菜穂は辺りを見回しながら言った。


「僕は高い所は無理…」


…高所恐怖症なんだよな…。


 多少の高さなら大丈夫だけど、ここは半端じゃなかった…。


「大丈夫だって!落ちたりしないから!乗ろうよ!お兄ちゃん!」



 半ば強引に僕を連れて行く菜穂と胡代里だった…。


「俺達はここで待ってるよ!」


 後ろからは友哉の声が聞こえてくる…。


…後で覚えとけよ!


 友哉に対してだけ強くなれる僕だった…。






「…もう乗りたくない…」


 僕のテンションは下がっていた。


「楽しかったねぇ~!」


 菜穂はまたしてもテンションが高かった…。


…菜穂も性格変わるよな…。




「大丈夫?…お兄ちゃん?」


 胡代里が心配そうに僕を見てる…。


 僕達はジェットコースターの後も色々回り、空を見れば赤くなっていた…。


「…そろそろお化け屋敷行っちゃう?」


 気分が落ち着いたらしい菜穂が切り出した。


「やっとお化け屋敷?待ちくたびれたよ!!!」


 反対に友哉のテンションはうなぎ登りに上がっていく…。


「…変な事はするなよ…友哉」

…こう言っとかないとな…。


 言った所で、聞かないが言わないよりマシだった…。


「大丈夫だって!!!」


 友哉は笑顔を見せていた…。


「それじゃあ行こっか!」


…僕達はお化け屋敷へと向かった。






「…なんか暗い家じゃない…」


 ラズが不気味そうに屋敷を見つめている。


「ラズちゃんってお化け屋敷知らないの?」


 胡代里がからかうようにラズに言った。


「…そんなわけないじゃない!!!」


 虚勢を張っているのはバレバレだった…。


「…ようこそ[学校の教室]へ」


「ギャーーーーーー!!!」


…店員だった…。口裂けのメイクで、頭から血を流していた。


 一瞬見れば、本当に分からない精巧なメイクだった…。


 ちなみに叫んだのはラズで僕の後ろで震えて頭を抱えていた…。


「…何名様ですか?」


…口調からしても本当に分からない…。


「5人で!!!」


 正反対に友哉は元気だ…。


「…わかりました。…それでは…気をつけて…」


「は~い!」


 僕達は返事をして中へと入った…。






「…よく出来てるな…」


 僕は辺りを見ながら歩いていた…。右腕には胡代里がしがみついている。


「…ちょっと怖い…。…キャッ!!!」


 しがみつく強さが増した。


…あの。当たってるんだけど…


「…今太ももの辺に何か当たったんだけど…」


 基本的にどこのお化け屋敷でもお触りは禁止のハズだ。


…となると、答えは1つ。


「…胡代里。暫くは菜穂にしがみついとけ…」


「…?わかった…」


 菜穂は、失神しているラズをおんぶしながら僕の前を歩いていた…。


…さてと…。


 今、僕の真後ろで足音が聞こえる。おまけに囁くような笑い声も…。


…友哉だ!


「…人の妹に何、手ぇ出してんだ!!!」


 僕は渾身の力を込めて蹴りを放った…。さっきの恨みも含めて…。


…手応えあり…!


 僕は蹴っ飛ばした友哉を放置して、菜穂達に追いついた…。


「…何してたの…?」


 胡代里が涙目で訊ねてくる。


「ちょっとバカを退治してきた…」


「ふ~ん…。お兄ちゃん。菜穂ちゃんが早くここを出た方がいいって言ってたよ…」


「…そっか。ラズもいるしな…」


「うん。それに、2人とも体温下がってるみたいだったよ」


「…じゃあ急ぐか!」


 僕達は早足でお化け屋敷を抜けた…。






「…やっと終わったな…」


「怖かったね…」


 僕達が安堵していると、ベンチでラズを介抱している菜穂と友哉を見つけた…。


「…最後は大丈夫だったか?体温が下がってるって聞いたけど…」


 僕が聞くと、菜穂は不思議そうな顔をして


「…?最後はって何の事…?私達お化け屋敷に入ってないよ?…ねぇ?」


「うん…。ずっとここでラズちゃんを診てた。隼人達が入っていった後、いきなりラズちゃんが入りたくないって言った時は焦ったけど…」


 友哉も同意見だった。僕は反論した。


「…嘘つけ!…人の妹に手ぇ出しただろ…」


「何の事だよ…。本当に俺達はここにずっといたって…」


 友哉とは長い付き合いでわかる。今の友哉は嘘をついていない…。


…となると…。


「今の話をまとめるとさ、お化け屋敷に入っていたのは私とお兄ちゃんだけで、菜穂ちゃんとラズちゃんと友哉君はユーレイだったって事だよね?…お兄ちゃん…」


 胡代里は泣いていた…。


 友哉と菜穂、僕は顔が青ざめた…。


…僕達はそこから全力で逃げ出した。





「…もうごめんだね。あんなことは」


 友哉が疲れきった表情をした…。


「私も疲れたよ…」


 胡代里も同様だった。


「皆ごめんねぇ…。まさか[出る]とは思ってなかったからさ…」


…菜穂もだ。


「…まぁ涼しくはなれたからいいんじゃない?」


 僕もそこそこ疲れていた。


「…これが夏なら良かったんだけどね(笑)」


…菜穂のツッコミ…。


「…ラズちゃんは大丈夫?」


 珍しく友哉が心配そうに聞いてきた。


「今晩には元気になってるさ…」


 ラズは、僕の横でまだ震えていた…。




…僕達はY字に着いた。


「じゃあまた明日な!」


「バイバイ!」


 友哉達と別れて、僕達3人は家への帰路についた…。






「何であたしを置いていったのよ!!!」


 案の定、ラズは元気になっていた。


「プルプル震えてたラズちゃんを見ると可愛そうで…。ね、お兄ちゃん!」


 胡代里が小悪魔の様に微笑んだ。


…僕を間に挟むな…。


「あんたケンカ売ってんの!?」


 ラズは既に噴火寸前だった。


「そんなつもりはないけど?」


 胡代里は余裕だった。


「あんたも[暗い家]から出てきた時はビクビクしてたけど、あれは何?」


 ラズが痛い所をついたのか、胡代里の表情が変わった…。


「…何て言ったのか聞こえなかったな…」


 胡代里は俯いて空気で威圧している…。


「何よ!?」


 しかし、ラズには効かなかった。




…争いは夜遅くまで続いた…。

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