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10年付き合った彼氏に浮気された地味女は、ヤンデレになった後輩に溺愛される。  作者: 文字書きA


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後輩の家④

想像できるだろうか。

起きたら目の前に、アニメキャラのようなイケメンがいる状況を。


「…………おはよう?」


秋子(あきこ)はなんと言えばいいか分からなかった。とっさに出たのは、挨拶だけで。


「おはようございます、秋子先輩」


春斗(はると)はニコニコと笑っている。この笑顔が見られるなら、お金をいくら払ってもいいと思う女の子は多いだろう。


(……私なんかにはもったいないな)


どうしてもそう思ってしまう。と、そのとき。彼女のスマホが、ポケットの中で震えた。


「……あ、ごめん」


ひと言断ってから、スマホを取り出す。待ち受け画面に表示されたのは、雪也(ゆきや)の名前だ。


「出ていいですよ」


迷う彼女に、彼は笑顔で声をかける。秋子は震える手で、通話ボタンを押した。


「……もしもし」


「荷物いつ引き取りに来るの?」


思考が止まった。雪也はかまわず話し続ける。


「邪魔なんだけど。夏海(なつみ)も早く引っ越したいって言ってるし、早く持っていってくれよな。家具とかはもちろん、そのままで。俺も金を出したやつだし、このまま使い続けたいから」


勝手すぎる。そう言いたかったのに、口がうまく動かない。


「……分かった。すぐ行く」


結局、出てきた言葉はそれだけだった。そばにいる春斗が、心配そうに眉を寄せる。


「1人で大丈夫ですか?」


「……うん、多分……」


「でしたら、せめて車で送りますよ」


「いいよ、そこまでしなくても。須東(すどう)くんは忙しいでしょ」


「僕がやりたいんです。今日は日曜日で、会社も休みですし」


強く押されて、秋子は迷った。


(車があったほうが、ありがたいのは確かだし……)


自分の食器。メイク用品。本やマンガ、グッズなどの私物。どうまとめても、段ボール1箱では収まらない荷物のことを思い浮かべて、彼女は目をあわせずに答える。


「……じゃあ、お願いしようかな。ごめんね、泊めてもらえただけでもありがたいのに……」


「先輩のためなら、なんでもしますよ」


「こら。ダメだよ、そういうこと言っちゃ」


秋子はゆっくりと起き上がって、春斗に軽くデコピンした。彼が目を見開く。


「君は須東(すどう)グループの社長でしょ。しっかりしな」


そう言って、彼女は顔を洗いにいく。残された春斗は、相手の指で弾(はじ)かれた場所を、自分の手のひらで押さえた。


「……ふ。ふふ……」


我ながら、気持ちが悪いとは思う。それでも、彼女から思いやってもらえたことが嬉しくて。彼はつい、笑ってしまう。


「本当に、あなたの言動(げんどう)だけは読めないな……」


気を抜くとゆるむ頬(ほお)を、無理やり引きしめて立ちあがる。そして春斗は、彼女が戻ってくるまで待った。

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