強情バカップル
バカップルを書きたかったんす。
譲れない物。譲りたくない物。生きていれば誰しも一つくらいはあると思う。だというのに目の前でぴょこぴょこと鬱陶しさを感じさせるふわふわした生き物は恥ずかしげも無く言い放った。
「一個だけ、一個だけちょうだい!」
キラキラした眼差しで俺の手元を見つめるのは紛う事なき我が彼女。進藤夢芽である。
彼女との付き合いは長い。中学校から大学まで苦楽を共にした最愛の彼女であり、戦友だ。
ただそれだとしても、いや、だからこそこれだけは絶対に譲れない。
「けちー! いいじゃん! 雪見だ◯ふくの一個くらい!」
「良い訳あるか! 50%だぞ!?」
「良いじゃん! 私たち人生の半分以上共に過ごしてきたんだし実質50%は私の人生は貴方のものだし、貴方の人生の50%は私のものなんだからさぁ!」
そう言われるとそうなのかもしれない、などという軟派な思考に流される訳がない。今の今まで何度そう言って俺の物を横から掠めていったことか。
この雪◯だいふくだけは譲らない。そう強く決意して俺は一口に頬張って見せた。
「むぅぅぅぅぅぅ!」
わざとらしく頬を膨らませて抗議してくる。まったく愛い奴である。咀嚼を続けながら俺は冷蔵庫を指差す。
「え、なに? 見てみろ、って?」
どうせこうなることは夢芽の傾向から分かっていたのだから対策も完璧だ。
期間限定チョコレート味を底に隠しておいたのだ。
「んー? あっ! これって……」
ふっふっふ。傾向と対策なんて当たり前のことだ。
「私デフォルトのが食べたかったの!」
「へ?」
思わず二つ目を食べる手が固まってしまった。夢芽がその隙を見逃すはずもなく、瞬く間に彼女の大きく開かれた口に吸い込まれていった。
「ん〜おいひぃ〜! やっふぁりふぉのあひがひちば〜ん」
してやられた。これで3684戦1841勝1843敗……負け越してしまった。
「もー、そんなに悔しがらなくても良いじゃん。ほら、代わりにこれ! 半分あげるから、ね?」
そう言って夢芽は満面の笑みを向けてくる。勝ち誇ったような雰囲気を隠そうともせず。
今回はたまたま虚を突かれただけだ。次は絶対に負けてやるものか。俺は決意を新たに差し出されたチョコレート味の雪見だい◯くを頬張った。心なしか苦味が強かった。




