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存在証明を奪う徴税官 ――神も天使も督促だらけ、未納は消滅確定  作者: 雪ノ瞬キ
始動編

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第21話

「ポコポコ、是贋の予備はつくれるか?」


「1か月ぐらいかかるー」


「ああ、そしたら頼む」


「うん、わかったー」


 今日も是贋の本体には細かい欠けがある。無理させすぎだ。

 どうにも、きな臭ぇ。


 前回、神族の研究所で大暴れして、その場に残されたのはエリザだけだ。

 だから、あとでかなり面食らったんじゃねぇか?


 まあ、どうなろうと知ったことじゃねぇけどな。


 それにしても、あの時――外法神の研究所で感じた“気配”は何だったのか、多少は気になる。

 あの中で動けるヤツだとしたら、俺と同等の力があるってことだろ?


 まあ、今さら気にしてもしゃーねーけどな。


 神族はともかく、今のところ、天使族に対して俺らが出張ることはねぇ。

 ほぼ全員納付済みだからな。

 神族は違うが。


 となると、尻に火がついちまっているヤツがねらい目か。

 とくに、神族の脱税犯を追いながら、ついでに調べてみるか。


 俺の仲間が平穏であることが最優先だしな。



 とくにこれと言って特徴はねぇヤツだな。

 資料をめくると、たまたま目に留まったヤツがいる。

 そのプロフィールはいたって目立たない。

 魔導探知が埋め込まれているぐらいか。

 ってことは過去何度も滞納しているヤツか。


 現在地も手に取るようにわかる。

 俺たち特殊捜査官は、存続か抹消を判断できる。

 回収課みたいな回収をすることもある。

 要は、ケースバイケースだ。


 でもこいつ妙だな。

 クセェ。

 マジでクセェ。

 一見、仕事もあるし地位も高けぇ。

 いうなればエリートだ。

 そんなヤツが、脱税を繰り返すだと?

 おかしくねぇか?


 この資料が間違うことは基本的にねぇ。

 だとすると脱税してまで金をどこに突っ込んでやがる?


 仮にその記録が間違ったとしても似顔絵だけはずれない。

 この人物の今を反映する三面図を見て、不審以外何者でもねぇな。


 短刀を両脇に刺し、懐には魔導爆弾の銀爆弾。

 ローブは耐衝撃・耐魔導の万能タイプを羽織る。


 どう見ても戦う気満々だよな。

 資料のプロフィールがあてにならねぇと思った瞬間だ。

 どこが温厚で人が良いだ? 差が激しくねぇか?


 つまり何かがつかめる可能性のあるヤツだ。

 さっそく、現地へ飛ぶ。


 魔導探知がある奴がいる地域へは、徴税局の転移魔法陣から飛べる。

 便利だよな。


「おいおい。マジかよ」


 辺り一帯は瓦礫の山。

 血まみれで息絶えたヤツが複数。


 一体どこの戦場に飛んだんだ?

 神無大戦よりはマシ……っちゃマシか。クソみてぇな光景だがな。


「ッ!」


 前言撤回だ。

 なんでアレが今あるんだ。


 局地戦制圧戦用・殺戮ゴーレム第四式『回天』

 俗にいうミンチ野郎だ。

 あんな丘が歩くような巨体に歯向かうのがばからしくなるヤツだ。

 ヤツの通った後はひき肉にされちまう。


 ……あの気配と同じ質のモンを、ここでも感じる。

 偶然じゃねぇな。


「ギャー!」


 今度はなんだ?


 アレは?

 

 対人戦用・四足殺戮ゴーレム、ハイエナ型二式『絶影』


 おいおい神無の再来か?

 どうなっていやがる。

 いた、あいつか。

 魔導探知に反応するヤツがいた。

 物陰に潜んでいた。


徴税官ぜむかんだ――動くな!」


 一瞬はっとするが、すでにあきらめた目をしていやがる。


「徴税官のあんちゃん。逃げな。もうここはダメだ」


「バカ言ってんじゃねぇーよ。こい」


 俺は襟首捕まえて移動させる。

 周囲の喧騒から少しだけ離れた物陰に隠れる。


「何があったか言え!」


「研究をしていた。だが、触れちゃいけねぇもんだった。

アレに触ったばっかりに、深淵のヤツが怒ったにちげぇねぇ。

ああ、俺たちはもうだめだ」


「だー要領得ねぇな。何に触れた?」


「創生の……禁区だ」


「は? なんだそれ?」



「存在証明の“根本”に触れる領域だ……書き換えるなんざ、本来ありえねぇ……」


「書き換えて回数を調べて、女神の器を探してるって話がどうした?」


「お前、そこまで知っているのか」


「キャー」


 振り返ると、母と子で逃げ惑うヤツがいた。


「チッ」


「お前はそこにいろ」


 やるしかねぇ。


「是贋!」


 風は呼吸を止めた。

 音は静まり。

 視界は後方に置いてきた。


 瞬時に魔獣型ゴーレムに肉薄する。

 黒い四つ足の魔獣に目掛けて音を超えた。

 横一文字に光の刃を薙ぐ。


 真っ二つに割れた体躯は、そのまま切り口を上にし倒れる。


 さらに背面に迫る。

 息が俺に触れる前――

 振り返りざまに一気に頭骨を貫く。


「ギャン!」


 動かなくなった体を放り投げ地面に転がる。

 この速度なら間に合う――


 次ッ!


 さらに子に迫っていた魔獣型ゴーレムだ。

 横っ腹を上段からまっふたつに。


「ギャン」


 断末魔が響く。

 走った勢いのまま胴体がそれぞれ転がっていく。


 足止めできるのか?


 俺は左腕の是贋を真正面に向けて構えた。

 右腕を肘に添えて、殺戮ゴーレム第四式『回天』に狙いを定める。


「是零砲」


 ――一枚、燃やす。

 

 視界を白一色で覆うほどの光を放ち、光の奔流がゴーレムを貫く。


 ドッガーン!


 破砕音とともに、二体のうちの一体が腰より下を失い地面に転がる。


 撃破。


 これ以上は、多勢に無勢だ。


「おい、大丈夫か?」


「ありがとうございます。あなたは」


「ああ、俺か? 脱税者を追う徴税官だ」


 俺はこの親子と別れ、先のヤツの所に向かう。

 が――

 遅かった。


 すでに息絶えており、魔獣型ゴーレムが腹に顔を突っ込んで喰らってやがる。

 ゴーレムでも食うのか?


「行くぜ!」


 デタラメに穿った光の刃で、魔獣型ゴーレムを串刺しにする。


 ここはもうだめだな。

 さっきの親子はうずくまっている。

 ダメだ。そこにいんな。


 クソっ、仕方ねぇ。

 俺は急ぎ向かう。


「おい、ここはダメだ脱出する。こい」


「え? お兄ちゃん。また来てくれたの?」


 ――さっきの悲鳴の主か。

 ああいう声、昔から聞き捨てできねぇんだよ。


「さあ、来るんだ」


 母親と思わしき者は、弱々しく言う。


「どこも地獄です。一体どこへ逃げろっていうのよ……」


 母親の心は折れて、腕は震えちまっている。

 ……もう無理だな。

 血を流し過ぎだ。

 生き延びた喜びなんて、もう実感ねぇだろ。


「安心しろ徴税局だ」


 ここに飛んできた転移魔法陣は、俺の任意で再度同じ位置から戻れる。

 もとの位置に戻った。


「俺にしっかりつかまれ、いいな!」


「はい!」


「帰投!」


 光の粒子が俺とこの親子を包み転移した。


「おい、お前この親子の保護を」


「はい、わかりました」


「俺は緊急報告を行う」


 俺は局長代理へ、急ぎ報告へ向かった。




 報告後、徴税局は一時的に蜂の巣をつついたような騒ぎになった。

 『回天』と『絶影』

 この二つのゴーレムは、過去の大戦の遺物だ。

 そんな物が闊歩しているとなると尋常でない。


「……これ、神無大戦の再現じゃねぇか」


「いや、それより質が悪いって話だ」


 局内は噂で持ちきりだ。


 誰の制御なのか。

 自立なのか。

 数は?

 地域は?


 もうそれこそ、大騒ぎである。

 まあ、ここまできたら俺の出番はない。


 だいぶ地域が離れているとはいえ、アレが出てくるってのは尋常じゃねぇ。

 一体誰が――

 まさか、深淵の女神じゃねぇよな?


 というより、その可能性のほうが高けぇ。

 本当の禁忌にふれたってヤツか。


 神族はやたらおかしな実験をしてたからな。

 とくに女神創造なんぞやばすぎる。


 思わず、神族の親子を助けちまったが。

 関わり具合によっちゃ、俺たちも制裁対象になりうる。


 久しぶりに危険を冒したな。

 こんな事になるとはな。

 何の気なしにめくった資料の魔導探知を追っただけだってのによ……。


 ――やっぱ、一人で動くとこうなる。

 

 この資料は再度、精査してもらうほうがよさそうだな。


 脱税と納税について、確定課はどこまで最新情報を把握してるんだ。



 恐らくは、局長代理から確定課へ通達がいくと思うが、先に確認してみるか。


 ホールで在香と出くわす。

 

「是明、この騒ぎは一体」


「ああ、神無大戦の遺物が複数体、神族領域を侵攻した。壊滅的だ」


「そんなことが」


「今から確定課にいく。払わねぇヤツらの地域的な繋がりを洗わせる」


「来るか?」


「ええ、当たり前でしょ?」


「そうか?」


「私たちは相棒よ」


「ああ、そうだな。行こう」


 俺たちは扉を開けて向かった。

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