5.ねぇちょっとまってなんでこんな状況になったのねぇどうしt
私はルン。ルンです。
訳あってミューナンセの森に跳ばされて、魔力が足りなくて盗賊を襲って魔力回復のポーションを奪おうと思ったら逆に盗賊に襲われて捕まって、その後、助けてもらったリネアさんと現在行動中です。
……とりあえず、戻ったら金髪爆笑女をぶっ飛ばします。
今はギルド内でリネアさんの依頼達成報告をしてるんだけど……。
ギルド内の空気は暗く、冒険者たちはピリついていた。
うぅぅ。怖いよぉぉ!なんでリネアさんそんな平気な顔してられるのぉぉ!今すぐ帰りたいよぉぉぉぉ!!
そう思いつつ、私は荷台で座り込んでいた。しばらくするとリネアさんがこちらに来て、何かの液体が入っている瓶を渡してくれた。
それは、私の欲しかった念願の魔力回復のポーション……!
「後でお金は貰うから」
「!あ、ありがとうございます!」
私はお礼を言って、ポーションを飲んだ。
すると、魔力はみるみるうちに全回復していき、体を動かせるようになった。
やっぱりリネアさんっていい人だなぁ……。
私は動けるようになったので、荷台から降りて改めてリネアさんにお礼を言った。
「あの!本当にありがとうございます!助かりました!」
「ん。鑑定まで時間かかるらしいから、もうちょっと待って。そしたらおいしい食べ物が食べれるお店、教えて」
「は、はいっ!」
ヤバイィ!!おいしい食べ物が食べれるお店なんて本当は知らないんだけどぉぉ!!どうしよぉぉ!?あの時とっさにああ言っちゃった私が悪いけど、ど、どうすれば………!
私がそう悩んでいたその時、脳から声が聞こえた。
『ルン、聞こえるか?』
『!!あぁぁぁはいっ、聞こえてる!!』
その声は、私にとっての救済だった。
『どこに居る?』
『え、えっと、ヴォルメ王国にいる!』
『早く戻れ。お前待ちなんだが?』
『ご、ごめんなさいぃぃ!今日引き運悪くてミミックが全然召喚できなくてぇぇぇ……!』
『は?ミミック……?お前には便利すぎる使い魔がいるだろう?』
『えっ、んん……?……あーーー!そうだったぁぁ!レリア召喚すれば帰れたぁぁ!』
私の使い魔、レリアは、非常に優秀で魔術やスキルがとても上手。あんまりこう言う言い方したくないけど、本当に便利なのである。
『相変わらず抜けすぎだろ。……まぁいい。ルン、今ヴォルメ王国に居るんだろう?』
『う、うん……』
『丁度良いから────。やり方は任せる』
『えっ?い、いいの?予定はまだ先のはずなんじゃ』
それは私にとって意外な命令だった。
『どうせお前のことだから、やらかしているだろうし、丁度良い』
『わ、分かった。それ終わったら帰る!』
『なるべく早く戻れ』
『は、はーい……って、待って待って!』
『何だ』
ふぅ、危ない。折角のチャンスを逃すところだった。
『あ、あの、首都ヴォルメアのおいしい食べ物が食べれるお店……知らない?』
『それは今必要なのか?』
『え、えっと、実は召喚のしすぎで魔力が少なくなっちゃって盗賊に捕まってすっごく親切な人に助けてもらったんだけど助けてもらう代わりに首都ヴォルメアのおいしい食べ物が食べれるお店を紹介することになっちゃって、当然私が知るわけ無いからどうしようって、思って……』
『よく噛まないな、それ……。分かった。ヴォルメアのおいしい店だな。少し待て。…………ふむ。『カキス』と言うスイーツ屋、中々美味そうだぞ』
『え、か、柿栖?』
『違う『カキス』だ。店の名前だからな、これ。これでいいか?』
ちょっと雑な気がした。でも、教えてもらえるだけ有り難いからなんも言えない………。まぁ、問題は解決したから結果オーライ!
『……うん!ありがとう!』
『早く済ませろよ』
そう言って、私は彼との会話を終わらせる。
ほんっとテレパシー便利!
さっきの人は、私たちのいわゆるボス的存在で、私達の恩人のようなもの。思想も似ていて、あーゆー命令もありがちだから、今回もそれをこなすだけ。
ふふ。楽しみだなぁ。
私は口元がにやけそうになり、あわててその気持ちを隠す。
今はリネアさんにお礼することを優先しないと。
丁度、リネアさんはお宝の鑑定金額を受け取りに行っていたため、バレてはいないはず。
暫くすると、リネアさんは受付から戻ってきて、大きい袋とその袋の半分くらいの袋を持っていた。リネアさんは、私に大きい袋の方を渡した。
「ルン。これ」
中を見ると、白金貨が数枚入っていた。
「五、六、七……白金貨八枚!?こ、こんなに……!」
白金額は1枚で金貨で約一万枚。
予想外だった。
「額が大きすぎて細かくするのめんどくさかったから、白金貨一枚だけもらった。代わりに全回復のポーション大量に買ってきたから」
そう言って、リネアさんはもうひとつの大きな袋を取り出した。
わっ! た、大量……!
「大丈夫?」
「あ、ぁぁ大丈夫です!全然大丈夫です!」
多分このあと大量に使うし、ありがたい。
「この後店紹介してもらおうかと思たけど、今日はやめて明日にする。日が暗くなってきたし。ちなみにそのお店って、夕食に行く感じなの?」
「あっ、ち、違い、ます。…す、…スイーツ系です!」
「ふーん。じゃあ今日は私が泊まってる宿屋で食べようか。ルンもそこに泊る?」
「ぁ、は、はい!そうします!」
「決まり」
リネアさんは淡々とそう言って、スタスタと歩き始めた。
リネアさんすっごいテキパキしてる……。これ、ついていけばいい……のかな?
少し遅れながらも私はリネアさんに着いていった。
その後、私はリネアさんが泊まっている宿に夕食を頂いて、一晩泊まった。
いつも食べるご飯も美味しいけど、宿屋のおばちゃんのご飯もおいしかった。
ーーー翌日。
私たちはボスに教えてもらったスイーツ店の『カキス』へ向かった。
店の外見は他の店に比べて綺麗な造りになっていて、看板には『カキス』としっかり書いてあった。
き、来てしまったぁ……!!普段皆以外と外で食べないから緊張するよぉぉ!ああぁぁ帰りたいよぉぉ!
「ここ?」
「は、はいっ!そうです!ゆ、友人絶賛のスイーツ店なんです!」
「ふーん。行こ」
「はいっ!」
リネアさんはテキパキとどんどん事を進めるかのように潔かった。店の扉を開けて中へ入ると、お店の人がニッコリと私たちに笑顔を向ける。
「いらっしゃいませ」
人の視線を向けられるのが苦手な私は、それがかなり怖かった。
◇
数十分後。
あれからリネアさんの好みをひたすら二人で食べていた。
リネアさんなんか口数少なくてすっごい緊張したんだけどぉぉ!はぁー心臓に悪い!
無言が一番落ち着かないということがよく分かったかもしれない。
それにしてもここのスイーツ美味しいぃ!
ボスもなかなかいいセンスしてるなぁ。
……今度皆と行きたいなぁ、ここ。
私はそんなことを思いながらスイーツを完食した。
暫く時間が経って、リネアさんも全部食べ終わったようなので、お会計をリネアさんが済ませる。
「……B級かな」
「へ?」
店を出るなりリネアさんがそう言った。
「この店B級かなって思って」
びぃ級………………B級!?
「なんで!?なんでなの!?めっちゃおいしかったよぉ!?ちょっと意味わかんない。もしかして味覚狂ってるんですか?美味しかったじゃん。ほんとに美味しかったよ?マフィンのふわってした食感とか、ケーキの控えめな甘いあの感じ!!それはもう癒し!ここ最近の疲れを癒してくれる癒し!!そして極めつけはこの店一番の押し、フルーツタルト!!タルトのビスケット部分の甘さと様々なフルーツの甘さや酸っぱさ!それが絶妙に絡み合って美味しさが引き出てた!!あれは美味しかったよぉ!!他のやつが不味かろうとフルーツタルトだけは絶、品!あれがあるからこそ私はA級だって言ってるの!!これ明らかにA級だから!!だからここはB級なんかじゃない!!……はっ……」
私は敬語を外していた。それもあったかもしれないけど、感情的になりすぎて早口になり、リネアさんを少しでもびびらせていないか心配だった。
予想通りリネアさんは引いている目をしていた。
うわぁぁぁぁ!!引いてるぅぅぅぅ!!
「……えっと、えっとこれは、その……!」
「……ふふ」
「り、リネアさん……?」
リネアさんは下を向いて俯いた。
ど、どうしたんだろぉぉぉ!!まさか私なんかがでしゃばったから……ッ!!
「ふふ。あははっ。いいね、ルン。私そういうの好き」
「えっ、えっとぉ?」
ど、どういうこと?
私は訳が分からずおろおろしていて、リネアさんはクスクスと笑う。
「いいね、ルン。面白い。超面白い」
「お、面白い?な、ななな何を言ってるの?」
「ふふふ……熱烈に話してくれたルンには悪いけど、私にはこの店、何を言われてもB級評価だから」
「な、なな、なななんでっ!?」
その流れは評価を改めてくれるやつでしょ!?なんでそうなるの!?
「りっ、リネアさんが、分からない……」
「私は自分の意思は曲げないタチなの」
「いやでもちょっとは耳を傾けてくれたって――」
「それよりもさ、ルン。"ティミッド"って何?」
「――!?」
ど、どういうこと!?なっ、なななななんで、それをリネアさんが!?
えっ!?私どっかでやらかしてたっけ!?
「私、鑑定系スキルを持ってるの。それでこのスキル、勝手に発動しちゃうことがあってね。ルンを見た時にその名前が見えてさ。……で。これ、なあに?」
「………」
な、なるほど。鑑定系スキル。
な、なら、リネアさんの言葉からして、あの単語だけ見えたってことかな。……そ、それなら、まだ……
「え、えっと、な、なんだろ。わ、わわ私にもよく分からないなー?」
「ふーん……」
ひいいぃぃぃ!!怖いっ!!怖いってぇぇぇ!!絶対疑ってるじゃん!!怪しんでるじゃんん!!
「……まぁいいや」
ゆ、許された?う、うん。きっと許された。許されてる!お願いだからもう疑わないでぇぇぇぇ!!
というかそんなものまで見れちゃうリネアさんって何者?ただ鑑定スキルがすごいだけの人じゃないよね?
絶対何かあるよねぇ!?
「……り、リネアさんって、な、何者なの……?」
思わず溢れたその一言。
小声で言ったつもりが、リネアさんにはちゃんと聞こえたようで、答えまで返してくれた。
「ただの旅人。とある人を探してるの」
「え、た、旅人?こ、ここの冒険者じゃなかったんですか?」
「冒険者はただの金稼ぎ。もうそろそろやめてもいいかなって思ってるけどね」
「そうなんだ……」
それでもあの強さとあの鑑定系スキル……やっぱり、私じゃ比べ物にならない。
この人と今後遭遇したらいろいろと都合が悪いし、関係はここで終わらせた方がいいよね……。
「あの、ありがとうございました!いろいろと!」
「ん?どうしたの?」
「私も、元々旅をしていたんです。そ、そろそろ、この国も離れようかなって、思ってるんです。なので、ここで一旦お別れかなって、………思いまして……」
あらかじめ作っていた設定を口にしていく。
もちろん嘘だ。
「……そっか。じゃルンも頑張って。またね」
リネアさんは案外あっさりしていた。
言い終えるとさっさと後ろを向いて門とは逆方向へと向かう。
「え、えぇぇぇぇ!?なんでこんなにヌルッと終わるのぉ!?もうちょっと引き留めたっていいじゃないですかぁぁ!」
そう言って少しでも引き留めようとするが、リネアさんは後ろを振り向かず、前を向きながら右手で手を降る。
「じゃ、頑張ってー」
雑な言葉を添えて。
こんなのでいいの……?
私は少し自信がなかった。
◆
ルン……か。
妙に印象に残る人だった。
最初はもっとつまらない人だと思ってたけど、案外面白かったかな。
性格はAランク以上は確定だね。
『いいのか?シュ、リネアよ』
「今は戻しても大丈夫。で、何が?」
「お主が『千里眼』で見たものをほのめかしたことじゃ。そこまで首を突っ込むとは思っておらんかったぞ」
「私はそういう存在だよ?知らなかった?」
「お主のことを見誤っておったのかもしれん」
”ティミッド”
この言葉はきっと、これからもっと聞くことになる。
ルンにわざと揺さぶってみたけど、想像以上に焦っていて面白かった。
ふと、白黒の言葉から違和感を覚える。
「ねぇ、なんで白黒が私のスキル知ってるの?教えた覚えないけど?」
「ふふん。我はお主専用の精霊じゃぞ?お主のことならなんでも知っておるのじゃ!」
「………ふーん………じゃあテスト。私のスキルは全部で何個あるでしょうか」
そう言うと白黒はムッとしたような表情になり、暫くの沈黙が続いた。やがて数え終えたように答えを口にする。
「六つじゃ!」
「……嘘じゃん」
「なっ!合っているはずじゃ!」
「答え合わせしようか」
私は『千里眼』のスキルを応用して、スキルを白黒に見せる。
『吸収』(固有スキル)
見たものを吸収して覚える。殺したものが持っている技術も吸収する。吸収したものは自分で使える。物理的にも、吸収が可能。
『不老不死』(固有スキル)
ある一定の頃になると年を取らなくなる。また、死ななくなる。
『創造』(固有スキル)
なんでも作れる。
『千里眼』(固有スキル)
なんでも見通す。スキルや魔法の性能や人が付いた嘘、また見た物の過去など。
『天邪鬼』
事実とは反対の事を呟くと本当になる。
『状態異常無効』
状態異常は何でも無効。
「正解は不明。“吸収”したスキルとかあるし、答える方が間違いなんだよ」
そもそも明確に数えることはできないので、数えるということこそが無駄な行為なのだ。
「っ、あーーそうきたのじゃな……確かに不明じゃのぅ」
白黒は大人しく引き下がった。
「しかし、いつ見てもぶっ飛んでおる」
「……まぁ」
「普通は一人一つなのじゃぞ?スキルというのは」
「白黒が言うかな」
さっきの言動にムカついたので、白黒のスキルも晒した。
『時間操作』
時を戻すことや未来へ跳むことや、時を止めることができる。
『時空支配』
時の空間を操作できる。
全く。人のこと言えないくせに。
「我のスキルは”時を操る”こと自体を徹底的に禁制した名残じゃ!」
「だからと言って精霊がスキルを持ってるのがおかしい」
精霊は普通、スキルを持たない。持っていたとしても、精霊王くらいである。例外があるとすれば、精霊自身が強く願ってスキルが手に入るケースだけ。ルンのようなね。
「我にもスキルがあることは分からぬが、何事にも例外はあるじゃろう」
「……確かに」
私がそのいい例すぎて、名にも反論できない。
「……それより早く帰ろう?多分明日にはこの辺り、騒ぎになってるだろうし、早めに休んでおかないと」
「そうじゃな」
私は白黒と一緒に、自身の泊まるあの宿へと戻ることにした。
ルン、それは偶然出会っただけの少女。
二人は後に、あの時もっとお互いのことを知っておけばよかったのだと、後悔することになる。
それくらい、重要な出会いだったのだ。




