3.やっぱり探偵って儲からないヨネ。
ウェンテル学園。
全世界の優秀な人材が集まる、世界的に有名なエリート学園。
貴族は勿論、貴族以外の平民も入学可能だが、平民の場合は超難解な試験を通さないと入れない為、平民はほぼ数人程度。
教師からの推薦枠も一応ある。
僕は推薦枠で入ったんダヨネ。
マァ、僕は平民枠な訳デ、周りは貴族だらケ。そんなわけで、貴族特有の差別意識が回りデそりゃぁヒドイ。話しかけてくるのはよっぽどお人好しな貴族ダケ。
デ、そんなお人好しな貴族サマが今僕の目の前で頭を下げているこのセンパイ。
「お願いだ、フィン!君の師匠に頼めないか!」
サフィエル・ネーフェス。
金髪金目の超モテてる三年生。ネーフェス王国の王太子で、最近国王が死んだ為、今週中に学園を中退して国王になるらしい。
そんな身分の高い王族サマが、平民の僕に……正確には師匠に何を頼んできたのかと言うと……
「僕の師匠に、ドレンドル国王とシベリナ王妃、それと、第二王女シュリア様の殺害事件の調査依頼……デスカ」
僕の師匠は、探偵をしている。その名も名探偵(自称)ナツメ。僕はその人の弟子だ。
時々ポンコツになったり、探偵のスイッチがオンになったりと忙しいアホ女。
一応探偵業界ではそこそこ有名で、実際師匠が学園長の依頼を達成したからこそ、僕がこの学園に入れたまであるのだけど、僕はそんなに師匠が好きではない。
弟子をやってるノにも理由があるんだヨネ。理由ガ。
マァ、師匠のせいで僕も結構有名人になっちゃったんだヨネ~。ほんと、たま~にサフィエルセンパイみたいなのガ来るから面倒。
「君の師匠の力が必要なんだ!」
「いいですヨ~。どうせ師匠はオッケーくれマスし、イツにしまス?」
有名であっても金の支出量はえげつない。借金もしてたこともあって、ある意味無一文な師匠は依頼が来たら即受けると思っている。
「ほ、本当かい?」
「ハイ」
「ありがとう!本当にありがとう!フィン!日付は何時でもかまわない。だけど早めに来てくれると助かる。来るときだけ連絡をしてくれれば大丈夫だから」
「ハイハ~イ。日時が決まり次第連絡しますネ~」
「分かった。あっ、まずい。カルメラとの約束の時間があったんだ!それじゃあまた!」
と言いながら、サフィエルセンパイは去っていった。
ア~ア。なんで受けちゃったんダロ。マ、目上の人には逆らえないし、仕方ないカ。
ハァ。師匠に連絡しないとナ~。めんどくさ……。
◇
三日後。
その後師匠は予想通り即OKをし、ネーフェス王国へ行く時間も含めて三日後となった。
サフィエルセンパイもちょうど同じ船に乗っていたようだ。
現在港にて。
僕の師匠は、
「三人のネーフェス王家殺人事件……。……ふっふっふ。この名探偵ナツメちゃんの出番じゃないですか~! いやぁ、いい仕事持ってきてくれるじゃないのー!フィン君はー!あっはっはっはーっ!」
などと言って調子に乗っていた。
最近依頼少なかったもんネ~。このアホ女。
「今日はよろしくお願いします。ナツメさん」
やめてサフィエルセンパイ。そんなアホに敬語はよくないって。
「あああ敬語はやめて下さいって!私の方が気を使っちゃいますよ~!」
そーダそーダ!というか、珍しく良いこと言うジャン。
「いえ、仮にも僕の依頼を受けて下さった方ですので、敬語は外せません」
「えっ!う~ん……まぁ、サフィエル様がそう言うなら、構いませんけど」
エェ……。センパイも堅いナ~。
僕は師匠の周りを見て、何時も隣にいる助手が居ないことに気がついた。
「……ネェ、師匠。エドウィンパイセンは?」
「あーエド君?エド君は好きな作家さんのサイン会で来られないらしいよ」
「へェー」
エドウィン。
僕のセンパイ的な立場の師匠の助手。偉そうだけど、意外と優しい。そんな一面のある憎めない人間だ。師匠との付き合いも長い為、一緒に居ないのは珍しい。
フーン。エドウィンパイセンって、そんなにその作家が好きなンダ。
そんなことを二人で話していると、サフィエルセンパイがニコニコと微笑みながら、案内をするので着いてくるように言った。
「えぇっと、お二方。とりあえず、僕に着いてきてもらって」
「ハーイ」
「了解です!」
◇
まず連れてこられたのは現場その一。王と王妃の部屋だった。
大きなベッドが置いてあり、そのベッドで王妃が血だらけで亡くなっていて、王は床に俯せになるようにして亡くなっていた。
師匠は早速調査を開始する。手始めに、被害者を観察していた。
「ほうほう。二人とも首をガッツリ斬られてますなー。刺殺かなこれ。あと微かにだけど魔力の痕跡があるね。フィン君特定出来るー?」
「ムリ。魔力が繊細過ぎて分析デキナイ」
「そーかい。……ん?王様の首、王妃に比べて斬れ方変……。サフィエル様、二人が死んだのはいつ?」
師匠はそう言って、端で調査の様子を見ていたセンパイに声をかけた。
「えっと、詳しくは分かりませんが、亡くなっているのを発見したのは十日前の午前五時だそうです。王を越しに来たメイドが第一発見者です」
「じゃあ、二人は何時に寝ましたか?」
「専属のメイドの話によると、深夜0時だそうです」
となると、犯行時間は十日前の深夜0時から午前五時。
「それと、父は何時も首にペンダントを掛けているのですが、それが無くなっていたんです」
「ほお。それはどんな価値があるんですか?」
ペンダント……。
「水色の宝石が嵌め込まれていて、父曰く、王家が継いでいく物……らしいのです」
……盗んで殺害。じゃあ目的はそのペンダント?でも、別室にいた第二王女が死んだことも考えると、やっぱり王家の滅亡が目的なのかナァ?
「……ン~。師匠これ、普通に暗殺者が殺したンじゃないノ?」
「だとしたらその雇い人を探さないとじゃん。うわぁー。それだけはほんとに勘弁して……。というか、犯人の動機が王家の始末だとしたら、サフィエル様も狙われてておかしくないんだよねー。まぁ、ペンダントの話聞いて、それが動機の可能性はあるんだけど」
「えぇ!?ぼ、僕ですか!?」
アレ、コソコソ話のつもりが聞こえてたっポイ。
でもまぁ確かに。殺されてるのは貴族じゃなくて王家だとしたら、そう考えるのが妥当だ。
「うーん。他に情報はありますか?サフィエル様」
師匠がそう問うと、センパイは少し困ったような表情をした。
「あの、あるにはあるんですが……その……」
「……!大丈夫です。誰にも言いませんので。ね、フィン君」
僕はコクリと頷いておいた。
「……ありがとうございます。ですがその前に、もう一つ伝えておかなければならない事があります。僕に着いてきてください」
何時もより真剣な表情をして、センパイはそう言った。
◇
何段も下へ続く螺旋階段。薄暗く、明かりも少ない。
何処まで行くんだよこの階段はサァ~。師匠もなんか疲れてナイ?
そう思っていると、ようやく地面が見えてきた。
「……はぁぁ!一生分の階段を降りた気分なんですけどぉぉぉ!」
「はは。すみませんね。僕の伝えたいこととは、これです」
センパイはその奥にどんどん進み、大きな扉な前で何かを操作している。
……専用の解除魔術か。
すると、ズズズズとその辺りが揺れ始め、扉が開いた。
センパイが着いてきてください、と言ったので、僕たちはセンパイの後ろを歩く。
「ここは禁書庫です。重要な書物が置いてあるのですが、一番重要な書物が無くなっていたのです」
「三人が殺害された日にですか?」
「そうです。見張りの兵がその日は全員眠らされていて、犯人に気づかなかったらしいのです」
「……ふーん?」
エェ?犯人は殺人のプロだけじゃなくて、窃盗もプロな訳?
「ナーンカ、暗殺者もそこまでやらなソー」
「そうなんだよねー。盗んだ人物が同じ人とは限らない訳だけど、同じ日に同時に起こるってことは、犯人は一緒のはず。どっちも目的だったのかも知れないね」
暗殺者路線は僕達の中で外れる。
じゃあ、犯人は王家に恨みを持っている貴族?或いは平民?
犯人像を思い浮かべるも、なかなかいい筋の仮設が思い浮かばない。その時、センパイが言いづらそうに、そして決心を決めたかのように、こう言い出した。
「それと、もう一つお話しておかなければならない事があるんです。父の……スキルについて」
センパイはそう言って、王のスキルについて話だした。
曰く、王のスキルは『忠誠具現』というスキルで、このスキル所持者に忠誠を誓った者の力を共有し、自身が死ぬと、代わりに忠誠を誓っている者が死ぬ、というスキルらしい。
「つまり、父が死んでいると言うことは、父に忠誠を誓っている者も死ぬという事なんです。ですが、今回の被害者は妹を抜いた僕の家族だけなんです」
へぇ。犯人も意外と強そうダネ~。
「ふーむ。犯人は相手のスキルを消せるスキル、或いは魔術が使える……と。強敵ですな~」
僕の言いたいことを纏めてくれた。
なるほド。犯人像が段々分かってきたナ~。
「うん。じゃあ第二王女様の方も行ってみますか!」
「はい」とセンパイは言って、僕たちを案内してくれた。
◇
現場その二は、第二王女が通う学園の寮だった。
部屋には人一人が寝られそうなベッドが一つ。机と椅子が置いてあり、そこで勉強をしていたと予想できる。棚には本や参考書が幾つか。クローゼットの中身は学園の制服や私服、ドレス等が少々。
そんな部屋の中、第二王女はベッドの上で亡くなっていた。丸焦げになっており、元の姿が分からない程に赤黒く焦げている。
「第二王女は焼かれて死亡……?さっきの二人は刃物だったのに……なんで魔術で?」
師匠は第二王女の死亡状況を考えて混乱中。
確かに殺しスタイルを変えてるのは謎ダネ~。
にしても、
「王女様にしては部屋が質素ダネ~。普通もっと広いもんデショ~」
思わず口に出してしまったのが聞こえたのか、センパイがピクリと反応した。
オ~なんか闇深ソ~。
「確かに質素!よく気づいたね」
「いやこんな所、ウェンテル学園の寮には何処にもないからネ?僕の部屋でさえこんなボロくないヨ?」
「え、そうなの?サフィエル様、どういうことなんですか?」
うわぁ。流石師匠。相手の地雷になりそうな話題でもグイグイ行くネ~。
「いや、えっと、そのー……」
ホラー!なんか嫌がってるじゃン!
「事件の調査の為です!どんな事情であれ、私にだけは教えてくださいませんか!調査の為ですから!」
圧、圧、圧。
センパイ嫌がってるからやめてあげなよ、師匠。
心のなかでそう言訴える。
「じ、実は、妹……シュリアは、家族皆に嫌われてまして……ああいやっ、僕は嫌いじゃないんです!誤解しないでくださいね。僕以外の家族が、という話です。それで、父はそんなシュリアに使用人も付けず、食事も与えませんでした。学園も、本当は僕達と同じ学園に行くはずだったのですが、父は自国の学園に行かせたんです。部屋もあまりいい部屋を与えなかった為、このような部屋に……なったのです」
……重い。重いナー。これ。センパイちょっと気分良くないヨネ~。こんな話。
「……なるほど。えっと、何かすみません」
「いえ、調査が進むにつれ、いずれは話す事でしたから」
センパイは笑っていたが、その笑顔がぎこちなかった。
「ちなみに、第二王女様が嫌われていた理由ってなんですか?」
「……それは…………僕にも、よくわかりません」
これ隠してるネ。そんなに言えない事ナンダ。
「……フーン。どう思ウ?師匠は」
「……見て、フィン君」
師匠はそう言って、棚に置いてあった本を取る。
それは第二王女様の日記だった。
いや僕の質問は?
「………最後のページ、読んでみて」
「……ハーイ」
僕は一番最後のページだけ読むことにした。
『×月×日
今日も何時も通り。相変わらず父は冷たい。でももう気にしていない。何時もだから。それと、また、あの夢を見た。よく分からないけど、妙に印象に残った。あれは、夢……なの?もしかしたら、私の記憶なのかもしれない。
×月◆日
今日はレイシアと一緒に過ごした。私の唯一の友達。……多分。何で一緒に居るのか分からないけど、レイシアの勝手だから別にいい。
×月◇日
あのーはーーにーーーーだった。私のー憶ーーーだった。何でーーーーーーーかーーーない。だけど、あの人にーーたい。アイツーーーたい。ーーをアイツはーしーーら。
別にこーー記にーーをーーー要はーーーど、ーー、ーー人が此所に来たーーーーーのーートと思ーーーーーだけ。ただ、それだけ。それと、“アルネミー”……覚えてる?』
ーーっ、これって……!
「どう思う?フィン君。これって第二王女様の日記だよね?一番最後がどうにも変なんだよねー。所々血で汚れて読めないし、最後の文面なんか謎なんよ」
………。………師匠には言えないけど、これって、……第二王女の『あの人』って……。いや、まさかね……?うん、偶然?
どちらにせよ、これは持ち帰る必要がアルネ……。
「アッ、師匠何?」
「えっ、聞いてなかったの!?」
「ウン」
「はぁぁぁぁ……この日記どう思うって話!!」
あーそんな事か。
「意味深……カナ。普通の日記に見えたけど、全然普通じゃない日記だった……って感ジ」
思ったまま言ってみた。
「えー。なんかうっすいねぇーそれ」
「師匠もさ、僕の質問答えてなくなイ?」
「え?質問?」
お前も忘れてるのカヨッ!
「第二王女様が嫌われてたっていうヤツ~」
「あーーーー!ごめんごめん。私が遮ってたね~!あはは」
「デ?」
「うわぁ。でたぁー。フィン君の良くない所~」
「何?」
「はいっ、理由だよね?うーん……。何で……うーん。……理由はさ、第二王女様の性格によるかもね。意地悪で誰かをいじめてたり、性格が悪かったら嫌われてる理由にも繋がるし、納得がいく。けど、優しくて、誰もが慕う性格をしていれば、納得いかない。でもね、この日記を見た限り、第二王女様は悪い人じゃないと思うよ」
「なるほド。というか僕も同じ意見~」
まぁ、僕は第二王女様の日記で誰が犯人かってことも分かったけどネ。僕からは犯人の事はあんまり言えないシ、あとは師匠が気づくかどうカ。はたまた犯人の策に引っ掛かるのかって所カナ~。
師匠はいまだに悩み続けており、センパイに第二王女様のプロフィールを聞いていた。
頭が良く、成績も優秀。友好関係はそれほどなく、基本的におとなしい。
という印象がセンパイにはあるそう。
「んー……私聞き込みしてくる!」
「え、ちょ」
そう言って、師匠はその部屋を抜け出し、学園の生徒に聞き込みを始めた。
僕はその後を追う。
◇
現在時刻は夕方。寮に向かう人がほとんどだ。
師匠は学園の校門にて、寮に帰る生徒を捕まえては聞き込みをしていた。
「シュリア様……ですか?……うーん。王女様な割りには地味なイメージですかね」
「あー。何事にも無頓着、というか」
「悪い人ではないと思いますよ!ただ、シュリア様のご家族が執拗に嫌ってるので、仲良くすると家柄的にも危ないから皆は仲良くしないんですよー!」
というようは返答を、師匠は一つ残らずメモしていく。
だが、師匠はまだ足りない様子。
「うーん。やっぱり嫌われてる理由が分かんないんだよねー。あっ、そこの君ー!」
通りかかる貴族の令嬢に師匠は声をかけ、また聞き取りをしていく。
「レイシアに聞いてみればいいんじゃないんですの?」
「レイシア……って、誰の事ですか?」
「シュリア様にいっつもくっついてる公爵家の次女でしてよ」
あー日記にあった子か~。
「なるほど。ちょっと会ってみます!」
と言って、ダッシュで学生寮に向かった。
速すぎー……また置いてかれた。
◇
レイシアという令嬢には、すぐに出会えた。
レイシアは自分の部屋で、優雅に紅茶を飲んでいた。
「それで?なんのようですか?」
「えっと、シュリア様の事について知りたくてですね、レイシアさんが仲が良いって聞いたので、聞き取りに来ました!」
師匠がそれを言ったとたん、レイシアの顔は少し沈んでいた。
「シュリア様……。です、か。……可愛い方ですわよ。何時も無表情で、何を考えているのか分からない方で、でもそこが良くて、第一王女のリーネル様に小言を言われても、それを素直に受け入れていて、強くて、勉強もできて、剣術も魔術も完璧で……っ!私の、わたくしの一番大好きな方なのですわ!なのに、なのに死んでしまうなんて……!」
段々話していくうちに、レイシアは泣きだした。
シュリア様過激派ダ~コレ~。
レイシアさんには悪いことした気分だけど、師匠、これで分かったんじゃナイ?
「ありがとうございます、レイシアさん」
「いいのですわ。犯人、捕まえられるといいですわね」
「……?」
「はい!必ず捕まえてみせます!」
まるで、他人事みたいな言い方だったな。
レイシアサンも犯人分かってるカンジカナ?
マァ、後は師匠の推理ショーでも聞けば、僕はオシゴト終了ダカラネ~。
◇
師匠は、第二王女様の部屋に集まるよう言った。
そこに、サフィエルセンパイと僕、師匠の三人が集まった。
ちなみに、死体は推理が終わったら埋葬するとセンパイは言っていた。なので第二王女様の死体はそのままである。
「えーっと、まぁー私は単純なのが好きだから、先に犯人を言っておきます。犯人は、恐らく第二王女のシュリア様」
ウン。僕と一緒ダネ~。
「恐らくというのは……?」
「あのねー、証拠って言うものが無いんだわー」
ン?あれ?
「エ?死体が証拠じゃないノ?」
「いやまーそうなんだけど、王様と王妃様が亡くなった彼処の部屋、暗殺者がやっててもおかしくない程何もなかったでしょ?だから確証が持てないの。サフィエル様。それでも聞いておきますか?」
なるほど。確かに証拠って呼べるものが何もなかったナ~。
「はい。聞かせて下さい」
おー。即答ジャン。
「まず、シュリア様は何らかの動機があって、王様と王妃様を殺した。多分、あの部屋の魔力の痕跡は防音結界を張る時の為かと。そして、自身をも殺したことにし、他国へ逃走した。コレが一番可能性がある話なんです。動機は大体想像出来ますよね?」
──恐らく、第二王女様が今まで酷い仕打ちをされてきて、我慢の限界だったのだろう。だとしても、
「日記には、そんな風には書いてなかったケド」
『今日も何時も通り。相変わらず父は冷たい。でももう気にしていない。何時もだから』
日記の一部には、そういう風に書いてあるシ。
「だから確証が持てないんだって!日記があることによって私の推理は最初から矛盾してるのー!」
マァ、そうだネ~。やーっぱ怪しいのは日記なんだよネ~。
「……そうなんですね。となると、ペンダントや重要な書物は全てシュリアが?」
「そうなりますよね。その動機が全く分からないんですよ。何が目的なのかが全く分からず仕舞いでして。以上が私の推理になりますー!結果的に犯人はあやふやで捕まえられず申し訳ないです」
師匠は肩を落とし、気落ちしていた。
めっちゃ落ち込んでるし悔しソー。
「いえいえ。お二人ともありがとうございました。僕は事件の詳細が分かっただけで満足ですよ。報酬はこれでいいですよね?」
サフィエルセンパイは、初めから用意していたであろう報酬の金を、師匠に渡した。
それを見たとたん、師匠は元気を取り戻した。
「えっ、えっ、えっ!?いいんですか!?こんなに!?」
金貨を眺めてはセンパイの顔をチラチラし、心底嬉しそうな顔をした。
貧乏人ってことが透け透けだヨ、師匠。半分は旅費で吸われるから、結局は金貨百枚残ってればいい方だと思うネ。僕は。
「はい、どうぞもらっていって下さい」
「うわぁー!ありがとうございます!また事件があったらこのナツメちゃん、頑張っちゃいますよー!」
「センパイ。今日はありがとうございましタ~。内政頑張ってくださいネ~」
「うん、フィンもありがとう!また来てね!」
こうして僕たちは別れを告げ、それぞれ別れていった。
◇
フィン達を見送った後、僕は王城へと戻る。
ナツメさんのあの推理は間違っていない。確かに犯人はシュリアだ。
二人を殺したのもシュリア。
動機も分かっていた。ただ、ナツメさんの推理を聞いて確信を持てた。
やっぱりシュリアは、思い出したんだ。
あの時の事を。あの悲惨で悲しい戦いの時のことを。
父の魔術は何時かは破れるとは思っていた。
だって、あのシュリアだから。天才で魔術が大得意で、強くてスキルも複数持ち。
効果が切れるのは時間の問題だったようなものだった。
それに、僕たちには殺されてもおかしくない理由がある。
むしろ、死んだ方がいいのは僕らの方だ。
大事な家族を殺したのも、裏切らせたのも僕らがやったこと。
あの時の事を思い出したなら、何時か僕も殺されるかも知れない。
ははは。まぁ、それはそれでいいかもな。
せめて、シュリアが国外で幸せになれてるといいな。
シュリアがいくら家族に嫌われようと、僕は君を嫌いになんてなれない。
だって君は、僕の初恋だから。
◆
「ハァァァー。分身って、よく面倒な仕事持ってくるヨネ~。ほんとメイワク行為だと思うヨ~」
と、僕は目の前に居る彼に愚痴を溢す。
「それがお前の利点だろう?それで、今日は何を持ち込んできたんだ?」
彼は、何時も通りの風格を崩さない。僕は彼に、ある本を渡した。
「コレの持ち主、君の知り合い?」
彼はそれをペラペラと捲る。段々読んでいくうちに、彼の表情はより険しいものとなっていった。
読み終わる頃には、彼の表情は真剣な表情へと変貌していた。
「これはどこで?」
「探偵の分身カラ~。ネーフェス王国の事件調査のお土産だってサ~。死んだらしいよ。ネーフェス王国の王様と王妃様と第二王女様ガ」
僕の情報に、彼はピクリと反応を示す。
「死んだ……?」
「ウン」
「……まさか、な。フィン、皆を呼べ」
「ハ~イ。了解、ボス」




