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元王女様は、世界を滅亡へと陥れたい。  作者: 九漆
第六章 リスバワ公国編
27/27

25.現在、祭り最中のリスバワ公国にて。


 リスバワ王国。

 その国を一言で説明するならば、妖精と人間、その両方が住む変わった国である。リスバワ王国は島国のため、船を使って移動しなければならない。

 

 そういうわけで、私たちは港までやってきた。

 どうやらタイミングが良かったらしく、リスバワ王国行きの船はあと数時間もあれば出港するらしい。ちなみにこれを逃すと2週間は待たなければならなかったようで、運が良くて何よりである。

 そうして数時間、フィミィをいじったり魔術を研究したりと適当に過ごしていればあっという間に時は経ち、気づけば出港する時間になった。

 私がすぐさま船に乗り込むと、しばらくして船は出航した。これから約5日間の船旅生活になる。

 

「ふぃ〜やっと落ち着けるというものじゃな〜」


 部屋に入るなり白黒がまるで自分の部屋のようにダラダラとくつろぎ始めた。それだけ疲れたということなのだろうか。

 いや、普通に考えてあれだけ待ち時間があったというのにそれで疲れるはちょっと違う気がする。まぁ別にいいんだけどさ。

 そうして今回の船旅は特に何か問題が起こることはなく、何事もないまま無事リスバワ王国に到着した。


 リスバワ王国に着き、私は早速入国しようと門を通る。

 ――のだが。


「お帰りください」

「は?」


 速攻で帰されてしまった。


「なんで?」

「さっき言いましたよね?現在、この国は我が国出身の者と商人、または我が国民が認めた者以外は通さない決まりなんです」

「……冒険者はダメなの?」

「ダメです」


「どうぞお帰りください」と、入国捜査官はさっさと私たちを追い出そうとしてきた。


 意味がわからない。こんなんじゃ納得いかない。

 私は一旦その場を引くことにした。少し離れたところで、私は1度知り合いがいると言ったナジュムを問い詰める。


「ナジュム、説明」

『あ〜?そうは言ってもオレ様もそんな詳しくねぇぞ〜?戦争明けからこの国はずっとピリピリしてるって言うくらいでよぉ〜』


 だからって冒険者まで入国させないのはちょっと厳しすぎではないか。

 困ったな。こればかりは魔術やスキルでどうにかなるものじゃないし。

 あの場で嘘は通じない。そういった魔術がかけられているからだ。特に人間に対しての警戒心が強いとなると、かなり強力な魔術がかけられているはず。もしかしたら嘘を見抜くスキル持ちの審査官がいるかもしれない。

 最悪の場合、ほんとに入国できない可能性すらある。


「諦めて違う国行く?」

「うむ。入れないものは仕方なかろうし、わりとアリな選択肢じゃな」

『お〜い〜?それだけは絶対やめろよな〜?』

「でも入れないよ?」

『う〜ん、オレ様が元の姿に戻れれば1番いいんだけどな〜。う〜ん』


 私としてはここにスノは居ないようだし、別の国に行ってもいいんだけど。ナジュムが不満そうだったから、一応考えてはみよう。

 一先ず入国するにはその国を知る。これが大事だと思う。

 なので私は門をじっと観察することにした。


 ◇

 

 しばらく観察していてわかったことがある。

 確かに観察していて入国していくのは商人が多い。だが入国していく者の3割は手帳のようなものを見せて入国して行っていた。

 つまり、つまりである。

 私もあの手帳があれば入国できる、という訳なのだ。

 手帳の概要は恐らくリスバワ王国で発行されたもの。個人番号などが乗っていてもおかしくはないだろう。そうなると、私のスキル『創造』でもあの手帳を再現するのは非常に難しい。

 

 そうと分かればこちらのもの。


「なんとしてでも手帳を奪う……!」

『おう!オレ様が取ってくるぜ〜!』

「おい!それはさすがに捕まってしまうじゃろ!どうしたリネア!バカすぎぬか!?というかナジュムもノリ気でとってこようとするな!」

「でも中に入るにはこうするしかない」

『そうだぜ〜!スジアンはかったいな〜』

「む。確かにそうじゃな……。じゃがいくらなんでもそれは――」

「ちょっとそこの人!」


 白黒とそうやって話し合いをしていると、突然私の背後から女性特有の高い声がした。

 後ろを振り向くと、そこには青い髪と赤い目を持ち、いかにも旅をしていますという格好をした女性がいた。

 この容姿……どこかで見たような…。

 初対面なはずなのに、見た目に既視感を感じる。

 おかしいな。記憶力はいいばずなんだけど。


「今入国出来なくて困ってますよね?」

「え、あー……」

「困ってるよね!?」


 何故か急に必死になって声を張ってきた。


「う、うん」

「よ、よしっ!実は私、この国出身の人間でして!よかったら私の知り合いってことで入国しませんか?」

「いいの?」


 そんなほぼ無条件で私にメリットしかない内容すぎて逆に怖い。


「はい!でっ、でも!ちょっとお願いがありまして!いや、かなり図々しい申し出なんですけどっ……!」

「何?私にできる範囲ならいいけど」

「お」

「お?」

「お、お金を恵んでください!!!」


 そう言って、その人は土下座をした。

 ここはリスバワ王国の門の端。他の国よりも通る人は少ないと言えど、目立つものは目立つ。

 私は人の視線はあまり気にしない。でもさすがにこれは視線が痛い。

  

「ねぇ」

「はい!なんでしょう!?」

「頭上げて」


 そう言うと、その人の頭がばっと勢いよく振り上がる。


「とりあえず中に入れて欲しい。お金はその後でいい?」

「わかりました!!ありがとうございます!!はぁー助かった〜!」


 まだお金も渡していないのにもう貰った気でいる。なんだか騒がしい人だな。


「あっ、申し遅れました!ワタシ、ジェミィと申します!短い間ですが、よろしくお願いしますね!」

「リネア。よろしくね」


 やっぱりどこかで見た姿。

 どことなく似ているようで、少し違う………うーん。まぁいいか。

 どうせすぐわかる。ただ、知るのは今じゃなくてもいいってだけ。


 早速門へと向かうと、さっきの入国審査官とまた再会する。

 その人はチラッと私のことを見たあと、己の仕事をこなすべく、身分の確認を要求した。


「……身分を示せるものの提示をお願いします」

「はい、おねがおしまーす」


 そう言って、他の人と同じように手帳を取り出した。

 よくよく考えればジェミィの手帳を奪えばお金も減ること無かったかもしれない。

 そう考えていると、審査官の人が手を震わせながら手帳とジェミィを交互に見ていた。その表情は半分ほど驚きが含まれいるような。


『なんじゃコヤツ。先程からチラチラチラチラと。気になってしょうがないじゃろうが』


 白黒も気になっているようだし、心当たりがないか本人に聞いていみる。


「さ、さぁ?急にどうしちゃったんですかねー?あのー?大丈夫ですか?」


 ジェミィが審査官の顔を覗き込むと、急にばっと勢いよく顔を上げる。


「し、失礼しましたッ!あの、貴方様が勇者というのは本当ですか!?」

「……え?」


 ……勇、者?


「あっははー!そっかそっかー!そりゃあびっくりしちゃいますよねー!うん、本当だよ。ワタシは勇者ジェミィ。いつかこの世に訪れる魔王を退治するために生まれてきた存在、それがワタシ!」


 そう、自信満々に言ってきた。


 勇者。

 確かに勇者は、魔王を倒すために生まれてきた存在と伝承には語られている。勇者は凡人とは比べ物にならないほど全てのスペックが高く、ありとあらゆる分野で活躍している。それは戦闘することだけに留まらず、過去には芸術センスに特化した勇者や、料理や家事、経済などに特化した勇者など、かなり幅広く世界で活躍していた。

 勇者の半数は国で王をやっていたり、国を築いたりとかなり身分は高めである。一般人がそうそう会えることは無い。

 どう考えても自由人そうなこの人が勇者とは思えなかった。

 人は見かけによらない、ってことね。


「おお、やはり勇者様でしたか。しかも我が国出身とは」

「で、入国できそうですか?」

「はい、問題ありません。お連れの方もどうぞ」

「!」

「ありがとー!じゃまたねー!」


 ジェミィは気さくに入国審査官に手を振りながら入国して行き、私もその後に着いて行く。

 こんな簡単に入国できてしまった。今までの時間はなんだったんだろうか。

 ちょっとだけ悔しかった。


 門を開けてもらい、リスバワ王国の中に入ると、国の中はお祭りの雰囲気だった。左右を見ても様々な種類の屋台があり、建物も装飾され、全体的に華やかな雰囲気だった。


「なんかのお祭り?」

「はい!今は国の独立記念日なんです」


 独立……あぁ、なるほど。


「うちの国は少し前まで旧フレッド大帝国の属国になってまして。2年前にフレッド大帝国は荒れに荒れて滅亡し、その時に属国だった国は開放されたって訳です。なので今日はその記念日。ワタシたちが開放された日なんです。だから思う存分、リネアさんも祭りを楽しんでくださいね!ワタシもこれでもかってくらい楽しむので!って訳で報酬のお金をください!!」


 最後の一言で全てが台無しになった気がする。

 まぁ約束も破るわけにはいかないし、しっかり渡すけどさ。とりあえず金貨1枚でいいか。


「1でいい?」

「え、10くらいは」

「じゃあ3」

「10!」

「5は」

「うーん、10!」

「じゃあ7ね。10もあげらんないから」


 そう言って私は袋から金貨7枚を取り出し、ジェミィに渡す。

 

「おお、ありがとうございます!って、金貨!?銀貨じゃなくて金貨!?も、もらいすぎでは!?あ!だから1枚とかだったんですか!?」

「……減らす?」

「いえいえいえ!ありがたくいただきますね!……で、でも、流石に割に合わないような気がしますし……あ!せっかくこの国に来てもらったので、ワタシが案内します!いろいろ分からないことも多いと思うので!」

「うーん……じゃあよろしく?」


 正直祭りも気になってたし、一石二鳥かな。


『お〜い、オレ様の件は忘れてねぇよなぁ〜?』

『わかってる。ちょっと遊ぶだけ』


 今はどうなのかは知らないが、リスバワ王国は"妖精の粉"というのが有名で、その粉は振りかけるだけで様々な効果があるという。


 食べ物にかければ誰もが美味しいと感じる絶品料理に。

 服や防具にかければ破れることのない頑丈な代物に。

 壊れた物にかければ新品のように元通りになる。


 とにかく振り掛けるだけで様々な強力な効果を得るだけあって、今では入手困難な程に人気な物である。

 そう思うとリスバワ王国にあるかどうかすら疑問に思えてくる。まぁ、あったらでいいんだけどね。


 そういった目的を持ちつつ、私はジェミィについて行き、祭り兼観光を楽しむことにした。


「じゃあさっそく!ジェミィオススメ、リスバワ観光スポットを巡りまーす!」


 ◇


 ジェミィは歩きながらこの国について説明してくれた。


「この国が妖精と人間の混じる国ってことは知ってますよね?」

「ん。妖精が認めた唯一の国でしょ」

「その通りです!それでですね、我が国にはこんなお話があります」


 昔々、竜王様がこのリスバワの大地に降りたち、この貧相な大地を賑やかにして欲しいと、竜王様はリスバワに住む人間に力を貸しました。

 竜王様が満足したのかどこかへ去り、人間が竜王様の力を借りて国を起こし始めた頃。太陽の妖精がこのリスバワ王国に目をつけました。

 太陽の妖精はリスバワ王国を自分のモノにしようと、リスバワ王国の民を襲いました。

 人間たちは国を必死に守りました。太陽の妖精の攻撃はとてもたちが悪く、その年の作物の収穫は過去最低記録になりました。

 妖精は人間と違い、息をするように厄介な魔術を簡単に操ります。さらに太陽の妖精は自然の操作に長けていて、気候を操って人間を襲いました。人間がそう簡単に倒せる相手ではありません。

 そんな時、とある妖精達が現れました。その妖精達はリスバワ王国を襲う太陽の妖精を罰するためにやってきた、妖精王からの使者でした。人間たちは使者の妖精達と協力し、太陽の妖精と戦いました。

 しかし、太陽の妖精は使者の妖精と比べてとても強く、束になって戦おうが関係ないようで、人間たちと使者の妖精達はあっけなくやられてしまいました。

 すると突然、リスバワ王国にまた妖精がやって来ました。その妖精は太陽の妖精と戦い、それまで苦戦していたのが嘘のように容易く太陽の妖精を追い出してくれました。

 国民は喜び、その妖精に感謝を述べようとしましたが、そこに太陽の妖精を追い出した妖精はおらず、代わりに昼の妖精と、昼の妖精に手を引かれる月の妖精がいました。

 リスバワ王国の民はせめてものの償いとして、2人の妖精を歓迎しました。昼の妖精は王国が気に入ったようで、国王と結婚し、その力を代々受け継いでいきました。後にリスバワ王国の王族は、姓にザヒーラと付けられることになりました。

 一方月の妖精は、太陽の妖精の呪いの影響で、精神が幼いままとなってしまいました。そこで、使者の妖精である夜の妖精がリスバワ王国で保護をすることにしました。

 そうしてリスバワ王国は平和な日々を取り戻しましたとさ。


「というお話です!」


 ふーん。さすがにリスバワ王国が妖精と人間が共存する国として誕生した話は初めて聞いた。聞いてる限りだと太陽の妖精は随分と激しい性格をしている。会いたくないな。

 

「救ってくれた妖精はなんの妖精なの?」

「確か話に出てくる月の妖精によると、教えられないって、言われたらしいです。だからなんの妖精なのかは不明なんです」


 不明……か。正体不明の妖精もだけど、昼の妖精と月の妖精がなぜその場にいたのかすごく気になる。


「って、わけで!ここがそのお話に出てきた"終戦の地"です!」


 そう言ってジェミィは手を大きく広げて笑顔で紹介する。

 そこは特に何かがある訳でもなかった。強いて言うなら地面に隕石でも降ってきたようなくぼみがある程度。ほとんど殺風景な景色で面白みもなかった。


「ここで太陽の妖精と救ってくれた妖精との戦いがあったみたいです。そして昼の妖精と月の妖精が見つかった場所もなんとここ!」


 結構歴史のある場所らしい。ここまで殺風景になるほどすごい戦いがあったと思わせられる光景がいいのだろうか。私にはイマイチよく分からない。


「うーん、懐かしいなぁ、ここ」


 唐突にジェミィがしんみりしたような雰囲気でつぶやく。

 

「小さい頃、よくここで魔術の訓練されてたなぁ……。全然できなくって、夜までやってたっけ……」


 思ったより雑に扱われてるなここ。

 なるほど。国民にとってそこまで重要な場所では無いのか。今度モノから記憶を読み取る魔術でも作ろうかな。いやそんな出鱈目、スキルじゃないとできなさそう。まぁ、最悪『創造』で作ればいいや。


「うん、次行こうか」


 私は頷いて同意を示した。


 ◇


「リスバワ公国と言えば島国!…ってことで、次は海岸に行きます!」


 そう言って、機嫌が良さそうにルンルンと歩いていくジェミィ。勇者ってみんなこういう感じなんだろうか。今日初めて会ったはずなのにあまりにもテンションが高すぎてビビる。

 というか、今しれっと聞こえたけど"公国"?王国じゃないの?


「ねぇ、"公国"って……」

「あれ、知らないんですか?今この国の名称は"リスバワ公国'ですよ」

「王国じゃないの?」

「はい。実は、旧フレッド大帝国との戦争の時にこの国の王族全員が亡くなっちゃったんです。でも、全員亡くなったって訳じゃないんです。姫は誘拐されて、王子は行方不明。今は前王の秘書だったシャニー様が国を治めています」


 なるほど。確かに前回の戦争で王族が亡くなっていてもあまり不思議では無い。

 でも一つだけ。

 

「なんで秘書?公爵とかの貴族はどうしたの?」

「それがですね、この国の王には昔から色んなルールが定められているんです。例えば、王は必ず妖精の血が混じっていなければならない、とか」


 なるほど。妖精の用心深さと人間への警戒心が抜けてない故にルールもそれなりに厳しくなっているようだ。

 しかしまぁ、ここに来てから思ったよりも妖精を見ない。リスバワ公国内を自由に歩き回ってはいるものの、下級の妖精すら見かけない。本当に共存しているのか不思議に思える。


「妖精が少ないって、思ってますよね?」

「うん」


 エスパーかなにかだろうか。私の今思ってることを当てている。嘘ではないから素直に答えるが、そのカラクリが不明すぎる。そう思って怪訝にジェミィを見ていたら、苦笑された。

 

「顔に出てたんです。意外とわかりやすいですよ、君」

「……ふーん」

「ふふ。我が国の妖精は大体が向こう側に見える森に住んでいまして、時々首都にもやってきますが、基本的にはまとまって暮らしているんです」


 なるほど、妖精側も完全に人間を信用しているわけではないのか。


「あ、ちょっとまっててねー」


 急にジェミィがそう言うと、ジェミィは走って門の兵に声をかけていた。

 しばらくすれば、走ってこちら側に戻ってくる。


「おまたせ〜!いや〜ここから海岸に行くにはちょっと許可とらなきゃいけなくてですねー」

「へぇ」

「安心してください!無事許可はとってきました!」


 ジェミィはvサインをして、自信満々にそう言った。

 気分がいいのか、調子の良さそうに前へとジェミィは進み、私はその後をついて行く。

 門をくぐると、視界いっぱいに海が見えた。


「じゃん!とーちゃく〜!思う存分、この絶景を堪能してくださいね〜!」


 想像よりも広すぎる海だった。今日は幸運なことに空は快晴で、もうすぐ夜も近く夕暮れ時。赤い太陽が海辺に反射して映るその風景は、まさに絶景と言っても過言ではないほどである。

 これは来てよかったかもしれない、と思わせられるくらい綺麗だった。

 近くまで来てみると、今にも沈みかける太陽がより近く感じられた。

 ふと、足元の砂浜に立ってみて気がついた。


「これ……妖精の粉?」

「そうです!よく気づきましたね!」


 そう多くはないが、海辺にある何の変哲もない砂の所々に違う性質を持っている砂があったので、『千里眼』でみてみれば"妖精の粉"と出てきた。


「妖精が住んでる影響でこの辺りの海には妖精の力がこもってまして。その海を砂が長く染み込んでいるとできるのが、妖精の粉ってわけです!かなり貴重なモノだから、30グラムで相場は銀貨100枚はくだらないですね」

「貰っていいの?」

「まぁ、採取自体は自由になってますが、大体は普通の砂と混ざっちゃうんでねー。そうなると効果もだいぶ無くなっちゃうんです。だから採れるもんなら採ってみろー!という意向の元、ある種取り放題のような状態になってます」

「なるほど。じゃあ採れるだけ採ろうかな」


 そう思い、私は『千里眼』をフル機能で活用し、風の魔術を使って"妖精の粉"と砂を分けて回収した。


『お主ならではのスキル運用の仕方じゃのう。ずるじゃな』

『採っていいんだからいいの』


 しばらくそうやって集めていると、妖精の粉の量は袋に詰めれば800グラム程度には集まった。

 十分かなと思い、私はそれを亜空間にしまってジェミィの所へ戻ると呆れられた顔をしていた。


「君、お金あるんだからそこまでする必要ありませんよね……」

「必要ある」


 こんなレアなもの、買った量だけじゃ足りないし、なんなら実験に使ってみたいじゃん。

 気がつけば空は真っ暗になっていた。今宵の月は満月らしい。

 

 夜の海は危険だそうで、ジェミィは足早に海岸から出ていくことを催促する。

 やりたいことも終わったし、そろそろナジュムの目的も果たしてやりたいところではあったので、私たちは海岸から出ていった。

 首都に戻れば屋台はまだ開いているようで、ジェミィは適当に食べ物を購入した。


「いや〜お腹すいちゃいまして〜!我慢の限界というかね?祭りも夜遅くまでやってるんで、リネアさんもいっぱい食べましょう!」

「あーうん。じゃ、今日はありがとね」

「あれっ、もう帰っちゃうんですか?まぁ、大体見て欲しいところには案内できましたが、まだまだあるんですよ!もし良かったら明日も案内しましょうか?」

「遠慮する。自分の足で行ってみたいからさ」


 観光の次はナジュムの要件をなんとかしないとだからね。

 

「そっか。わかった。じゃ、気をつけてね!」


 そう言って、ジェミィと別れた。

 私の姿が見えなくなるまでジェミィは手を振り続けており、正直疲れないのかな、なんて思いながら首都を離れていった。


 ◇


 ジェミィと別れ、とりあえず人気がない所へと移動した。


「で、ナジュム。場所は分かるの?」

『もちろんバッチリだぜ〜!今アイツが何をしてるのかまでこの国に来た瞬間にビンビン感じるぜ〜!』


 一体何をしたらそこまで感じ取れるのだろうかとも感じるが、妖精の感覚なんて私が分かる訳でもないので、考えるだけ無駄である。

 まぁ居場所が分かっているようで何よりだ。


「遠い?」

『あ〜まぁまぁな。さっきの女が言ってた妖精が多い森なんだけどよ〜行けそうか〜?』

「……飛んだ方が早いね」


 ジェミィの言っていた森は、ざっと見て歩いて行けるような距離ではない。まぁ、今日中につかないほどでは無いが。

 私は見られてたら困るので、一応『隠蔽』の魔術を自身に掛けておき、空へと飛んだ。


「じゃ、案内よろしくね」

『お〜う!任せとけ〜!』


 ◇


 空の旅から約10分。目的地と思われる場所へと辿り着いた。

 

「……ここ?」

『そ〜だな〜!そこからもうちょっと奥にいるっぽいぜ〜』


 辿り着いた場所は妖精の多い村規模の集落だった。妖精は『隠蔽』をかけている私に気が付かないのか、特に騒ぎになることもなく生活していた。妖精と言っても、案外人間とあまり変わらないような暮らしをしているらしい。


『おい〜?早く行こうぜ〜!』

「ん、いこう」


『こっちだぜ〜!』とナジュムは私に感覚で伝えてくるので、それを頼りに進んでいく。


 ふと、これから会うナジュムの知り合いが、いったいどんな人なんだろうかと気になったので、移動の際の暇つぶしにナジュムに聞いてみることにした。


『ん~?これから会うオレ様の知り合いがどんな奴か~?そ~だな~、あ~おまえは平気だと思うけどな~とにかくいろんな奴をタラシ込む奴だぜ~』

「人タラシとかそういう?」

『そ~そ~!とにかくいろんな奴タラシ込んでほんと恐ろしい奴だぜ~!』

「ふーん」


 とりえず、騙されないようにしようと思った。

 

 ナジュムの案内でどんどんと建物のある場所から離れていき、やがて森しか見えなくなった。感覚で言えば5分近くだろうか。そのくらいの時間歩いていれば、やがて一際目立つ、屋敷のような建物が見えた。

 その屋敷は門が閉じており、綺麗に整備されているようだった。

 

『ここだぜ〜!』


 どうやらナジュムのナビもこれで終了のようだ。

 門の辺りをよく見てみると、そこには金髪の幼女がこちらを覗いていた。ずっとこちらを観察するように見ているので、見られている側としては少し気になってしまう。

 声をかけようと思い近づいてみると、少女は屋敷の中に逃げ込んでしまった。


『あ〜!アイツだよあいつ〜!』

「え?」

『オレ様の知り合いだぜ〜!』


 なるほど。どうやらあの幼女がナジュムの知り合い……ということは妖精なのか。私たち、逃げられているが大丈夫なのだろうか。

 そう思っていると、逃げたと思っていた幼女が青髪の青年に抱き上げられながら戻ってきた。


「ん、オクトル、あれ!」

「ほぅ?……あんた、ここになんの用だぁ?」

「そこの、金髪の子に用がある」

「そぉか、死ね」


 そう言って青年は、突然私の魂ごと攻撃した。


 普通の魔術だけなら防ぐことは出来るが、魂への攻撃となると防ぐことは不可能に近い。どういったカラクリなんだろうかと考えたいところだが、それよりも私は命の危機を強く感じていた。

 やばいかもなんて思った時には既に遅く、私は意識を失った。

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