23.再会、それを喜び合う様子ではなく。
戦闘狂が出ていったのを見送ったあと、私たちは外にでて観戦をしようという話になった。
出て行く時にカルニィが、
「扉の恨みは晴れてないからね?なんなら僕ってけっこう根に持つタイプだからさ?僕まだ怒ってるからね?」
などとうるさかった為、特別に扉を直してあげた。あくまでも扉の強度だけである。魔術の方はカルニィに丸投げしておいたけど、カルニィはけっこう満足そうだったのでまぁ大丈夫だろう。勝手にそう判断をしておく。
そうして世界樹を出て城の地下から出ると、バタバタと兵士達が行き交う様子を眺める戦闘狂がいたのを発見し、一緒に戦いを見ていこうという流れに。
私たちは堂々と地下への入り口に立っているけど、慌てすぎて侵入者の様子にすら気づかないらしい。
念の為『隠蔽』で気配は消しておく。
「ア"……?ンだアレ……」
戦闘狂がそう言って城の外を見る。
私もその方向を見ると、赤い火の球が此方に向かって飛んできていた。
「な、なんじゃアレは!?あんなの食らったら全身が溶けるのではないかの!?えっ、もしかして我死ぬ?我はまだ死にたくないのだが!!」
「うるさい……」
「『絶対防御』」
そう言って戦闘狂は自身のスキル『絶対防御』を発動させ、マグマのようなおどろおどろしい火の球からの攻撃を防ぐ。ちょうど私達の部分まで範囲に入れてくれているのでありがたく守られておく。
「……どーも」
「か、感謝するぞ!」
「気ィすンな」
『はっは~!すっげ~魔術だったな~』
「あァ。あれは多分ミュネラだろうな。いつもなら毒の球作って無造作に暴れ散らかすンだが……っは。火を使うなンざ珍しい事もあるもンだな」
確かに中心部でも毒霧を使っていた。毒好きそうなのは何となく分かる。
しかしまぁ、よくミュネラが打ったと確信づけられるな、コイツ。
「ミュネラじゃないかもよ?」
「ンなこたァねェな。アレは間違いなくミュネラの魔力だ。付き合いは長い方だからその辺は詳しいンだ」
妙な自身あり気なその言葉に、私は何も言えなかった。
ともかく、それを含めての確認のために、私達は外へ出て様子を見る事にした。
城を抜けていく最中、私達は誰にも遭遇する事はなかった。何やら不穏な雰囲気である。城は暗いものの状態はほぼ綺麗なままで、まだここまで攻撃は迫ってきていない事が分かる。所々焼け跡が残っているのは、先程のような火が飛び火していたのだろう。
ようやく外が見えてきた頃、せっかくなので自身に〈浮遊〉の魔術を掛け、空へと飛ぶ。
「オイ、どこ行くンだよ」
「状況を見るなら、高い位置の方がいいでしょ」
「……へェ?確かにそうだなァ」
戦闘狂もそう言って、自身に〈浮遊〉の魔術を掛けて空へと浮く。
城の一番上へと到達すると、首都の様子が全体的に見やすくなった。
首都全体はまだパラン王国のように廃れてはいないものの、いくつかの建物は半壊し、大魔術が使われた痕跡が多々見当たる。ミュネラとプラムはかなり暴れているらしい。毒霧で苦しんでいる人達までよく見える。
そんなことを考えていると、ふと、気になるものが見えた。
「ねぇ、あれ……」
気になって『千里眼』での視界を目の前に映し、見やすく拡大する。
戦闘狂も持参してきた望遠鏡で見るのを止め、此方の映像を見ている。
「ン……?は?オイオイマジかよ」
そこには、会ってはいけない二人が出会っているのが映っていた。
「どーすンだよコレ。攻略不可能じゃね?」
「は?えっ、えっ!?コレってマズいヤツではないかの!?」
『おぉ~。感動の再会ってやつか~?良かったな~アイツら〜!こういうのオレ様は好きだぜ~!何時見ても感動するからな~』
「状況が状況すぎてそういうのじゃねェ気ィすンだけど」
ミュネラとシュン。およそ八年振りの再会である。
◆
時は遡りリネア達が王城の地下に入る前。
シュンとサクラはギルドで情報を知り、戦いに参加する事にした。
国は城をランクの高い冒険者に守ってもらいたいらしく、Aランク以上の冒険者は城に、Bランクより下のランクは町全体を警戒する事になった。
「そう言えばアナタのランク、聞いてなかったわね。アタシはAランクよ。王城の警備に回る事になるわね」
「マジか。俺はBランクや。別れてしもたな…」
「ま、少しの間だけよ。死んでなければまた会えるわ。精々生き残れていることを祈っておくわよ」
「おん、命大事にな!」
そう言って二人は別れた。
サクラはAランクの冒険者達と共に城へ向かい、シュンは単独で町を見回る。
騒ぎが起こったのはそれから一時間程。
まず首都の中央付近で大魔術が放たれた。
火属性で相当威力高い魔術だったようで元の形は一かけらもなく、そこに居た人達は即死だった。
幸いにもシュンはその場所から遠い所にいた為、無事命を引き留めた。
しばらくすると、騎士を連れた聖女がその場所に現れ、敵を探す。
「どこにいるのですか?隠れてないで出てきてください」
聖女は芯のある声で堂々と声を発する。
「ふふふ。バレてしもたか」
そう言って出てきたのは一人の女性。
橙色の髪と黄色と緑のオッドアイが特徴的で、東帝国の服を纏う妖しげな雰囲気のある女性──『リヴァロ』のNo.4ヴォラールことミュネラだった。
「No.4のヴォラール……ですか」
「へぇ?ウチのこと知っとったん?」
「えぇ。『リヴァロ』の中でも魔術を扱うのは貴女だけと聞きましたから」
ヴォラールは素直に驚いた。
自分たちの情報をそこまで把握されていることに。
「うーん。確かにリールは洗脳厨、ルットは薬品厨で、ティミーはスキル頼りやし、アヴィは力任せで、パルウスもスキル極めとったしなぁ……。そう考えると、確かに魔術師はウチだけやんね」
「聞いたことの無い名前がいくつかあるのですけれど」
「おっと!アヴィとパルウスはまだ動いてへんのやったわ。すまんなぁ二人とも。居らへんけど。あ、ちなみにルットはアールツトの略や。なかなか愛着が沸くやろ?」
「情報提供ありがとうございます。貴女のお陰で『リヴァロ』に六人の構成員が居ることがわかりました」
「ふふ。それはどうやろなぁ?」
「……では、そろそろ無駄話も終わりにしましょう」
聖女のその言葉を仕切りに、お互いの雰囲気は変わる。
最初に動いたのはヴォラールだった。
小手調べに〈火球〉で攻撃を仕掛ける。
すると聖女は、目をつむって神に祈るように手を組む。
「“消えろ”」
聖女のその一言でヴォラールが放った〈火球〉は消える。
その動作に術式の欠片も見えなかったミュネラは、目の前にいる女性が聖女という事を悟る。
「ほーん。……アンタ、さては聖女やな?」
「そうですが」
「はは…ウソやろ。魔法とか初めて見たわ。こりゃ、一筋縄ではいかんそうやんなぁ」
それからしばらく、二人は攻防を続けた。
ヴォラールは徐々に複雑な魔術を打ち始めるも、聖女にとって意味を成すことはないようで、全てが“消えろ”の一言でいなされてしまう。
そのうえ、聖女は水を操った攻撃までしてきており、火で攻撃していたヴォラールにとって厄介極まりなかった。
これが魔法。
ヴォラールは魔術との圧倒的な差に打ちのめされていた。
(チッ。これじゃ一方的にウチが消耗されてくだけやん!ってかコイツ毒効いてへんのか!?何やねん聖女!こんなレベチなんて聞いてへんわ!!)
ヴォラールは焦っていた。
どう見ても聖女が優勢なままで、このままでは本当に死んでしまうと命の危機さえ感じていた。
「……この程度なのでしょうか」
「ウチが初めから全力を出しとったと思うとるんか?まだ半分も出してへんよ」
そう言って心の中では嵐を巻き起こしつつも平静を装う。
(マズいわ。多分これ初の計画失敗になりかねん。どうせなあかんのこれ。もしかしてアレか?アレ使わなあかんの?はぁ……あんまり使いたくはなかったんやけど、やむを得へんなぁ)
ヴォラールは持っていた杖をカランと地面に落とし、足で折る。
「な、何をしているのですか……?」
杖は魔術師にとって、安定して魔術を発動させる為に欠かせないモノである。
ゆえに魔術師の命と言っても過言ではない。
聖女は彼女の行動に理解が追いつかなかった。
(杖を折った……?なぜ?まさか、彼女は魔術師ではなかった……?)
もし別の魔術師がこの場に居たのなら、彼女のしている行為はキレられても可笑しくないだろう。
だが、ヴォラールにとってこの行為は別の意味を差す。
「こいや、『運命杖』」
ヴォラールがそう呟くと、足元に散らばった杖の残骸が元の形に戻ろうと動き出す。
やがて、ヴォラールの手元には先ほど持っていた物とは別の杖があった。
「『運命杖』……なるほど。貴女が所有者でしたか」
『運命杖』
それは七つある伝説級武器の一つで、名の通り運命を操る事が出来る。
『運命杖』は数百年前に見かけたと文献にあったが、その後の行方は辿れぬままだった武器である。
強力すぎる武器故に、使用者は一定以上の使用をすると不運になるというデメリットがあるというのは有名な話。不運になるというリスクを負ってまで、ミュネラはこの武器を使わざるを得ない状況に追いやられていた。
「せやねぇ。悪いけど、こっからは本気やで?」
「そうですか。では、わたくしも全力を出させて頂きますよ」
「ふふ。そうこなくっちゃやな」
ヴォラールはニコリと笑みを浮かべつつ、魔術を展開させることに集中する。
聖女は魔術を展開するヴォラールに拘束の魔法を掛けるが、何らかの魔術で防がれる。
「なっ!」
「邪魔は、させへんよ」
魔法が防御系統の魔術に防がれることはほぼ有り得ない。避けるか相殺させるかでしか対処のしようがない。
だがヴォラールは別の魔術の展開をしている最中にも関わらず、魔法を防いで見せた。
現状、その原因に思い当たるのはただ一つ。
彼女が持つ武器だ。
(厄介ですね……『運命杖』!!)
聖女は他の魔法も試す。
睡眠、魔力吸収、凍結、毒、石化……あらゆる魔法も全てその杖の力でねじ曲げられる。
今の彼女に攻撃を通すことは出来ない。
「ふふふ。ありがとうね、『運命杖』。準備バッチリや」
ヴォラールは余裕の笑みを浮かべ、持っていた杖を上空に上げる。
「〈火山噴火〉」
瞬間、ヴォラールの真上に巨大な赤い球が現れた。
それは太陽のように赤く、遠い場所にあるはずなのに熱気がよく伝わるほど禍々しい。
聖女はすぐに魔法でそれを消そうとした。しかし───
「っ!」
「うふふ。消せへんかったやろ?そりゃそうやんなぁ。『運命杖』やもんなぁ!」
ヴォラールはあの魔術に“消される事はない”、という運命を設けた。
これによってあの炎の塊のようなモノが消滅することは無い。
いや、可能なモノだとすれば、スキルくらいだろうか。
アレは魔術やら魔法とやらとは別の概念。もしかしたらこの魔術が消されるスキルもあるかもしれない。
(まぁ、少なくとも聖女は持ってなさそうやね)
心配する事は恐らく無い。
そう思ったヴォラールは、杖を振って〈火山噴火〉の魔術を発動させる。
「さぁて、聖女様はこの魔術を防げるんかなぁ?当たれば火傷じゃ済まへんで」
すると、ヴォラールの上空にあった赤い球が弾け飛び、マグマの球が街へと飛び散っていく。
マグマの球が地面へと落ちると、その周囲は赤黒く染まっていった。
「な、なんて事をッ!!」
「ほなまたね~」
ヴォラールはその場から逃げるように消え去った。
幸いにも放たれたマグマの球は数は多いが魔法が効く。
そのことを知った聖女は一刻も早く被害が広がらないようにと街へ向かって走った。
聖女とヴォラールの勝負はこうして幕を閉じた。
◇
「な、なんやアレ……!」
一方その頃、町の警備をしていたシュンは遅れながらも襲撃があった場所に向かった。
シュンが来たところで現状がどうにかなる事はなく、ヴォラールの放ったマグマの球は四方八方へと落ちていく。
ヴォラールは落とす場所を定めている訳ではなく、運悪くシュンの所にもそれは落ちる。
「うわ、あっぶな!当たるとこやったわ……」
間一髪で回避し、安全そうな場所に逃げ込む。
その時、シュンは今にもマグマ球に当たりそうになっている少女を見かけた。
少女は自分の元に落ちようとしてくるマグマ球に気づいていない。
「お嬢ちゃん、危ない!!」
「いや、……えっ、」
シュンは全力で走り、少女を抱えてその場から離れた。
背後で轟音が鳴り響き、辺りに煙や熱気が広がる。
(良かったわ、ほんまに。無事に嬢ちゃんも助けられて…………え?)
シュンは助けた少女の顔を見て肝を抜かす。
少女の顔は、かつてシュンが育てた弟子にそっくりで、なんなら本人そのものと言っていいほど似ていた。
「……ミュ、ネラ?」
シュンがそう言うと、怒ったようでどこか悲しそうな目つきで顔を歪ませる。
「せやで。せやけど……何でこんなとこにおんの、師匠」
シュンが助けた少女は、少女に『変身』した自身の弟子そのものだったのである。
シュンは驚きを隠せず目を見開き、固まる。
なんせ四年前から探していた弟子がこうもあっさりと見つかってしまうのだから、呆けてしまうのも仕方がない。
ミュネラはなんとも言えぬこの空気をどうにか抜け出せないかと必死に考える。
(チッ!今ここで師匠には会いとうなかったわ。コレが代償やんな……!やっぱ使わへん方が良かったわ。杖も一本消費するし、不運になるしで散々やわ)
ミュネラはこうなってしまった反省をしつつ、思い切ってシュンに話しかける事にした。
「ねぇ、師匠。なんでこんなとこにおんの」
「お、俺か?お前探して旅しとったら、この国に着いたんや。ミュネラも、こんなとこで、それに、今まで何して」
「そか。ウチはなぁ、今『リヴァロ』っちゅう組織におんねん」
「は?」
仮にもシュンはミュネラの親代わり。育ててくれた恩人に嘘は付きたくなかった。
「『リヴァロ』って、あの……?」
「師匠には悪いイメージの『リヴァロ』があるんやと思う。けど、ウチにとっては家みたいな場所やねん」
「なんで、や?なんでそんなとこにおんねん。俺のせいなんか?俺が旅に出てもうたからか?」
「……ウチには『リヴァロ』が合っとるってだけや。師匠は関係あらへん」
「けど、危ないことしとるんやろ…‥。“人”だって、たくさん殺したんやろ!!」
──人。……ヒト。
「そんなの、ちぃちゃい頃から変わってへんで?」
「っ、ぁ、あかん!あかんことなんや!!命は重い!軽く扱っちゃあかんもんなんや!!」
「そんなこと言うても、ウチはもう戻れへんで?それに、上手く誤魔化せとるようやけど、師匠も同じやろ?何時やったかな。確かウチが初めて誘拐された時───」
「やめろ!!」
珍しく怒鳴るシュンに、ミュネラは思わず紡がせる言葉を忘れた。
ミュネラは知っている。シュンが怒鳴るときは、いつだってこの話をする時だけということを。
「………。言っとくけど、ウチに優しさや知識を教えてくれたのは師匠やけど、あの快楽を教えてくれたのも、師匠なんやからね。……じゃあね師匠。もう二度と顔も見とうないわ」
「このウジ虫が」とシュンに告げ、ミュネラはそこから逃げていく───その時だった。
嫌な予感がして、ミュネラは反射的に身を後ろへと引く。
今までの経験からの勘だろうか。
その行動は間一髪だったようで、前を見ると小柄な青年が短剣を持ってミュネラを切り裂こうとしていた。
「ありゃ。避けられてしまいました。コレでも僕、短剣の扱いはピカイチなんですよ?」
「何モンや!!」
「『リヴァロ』に名のる名はないです」
見られていた。今のやり取りを。
ミュネラは顔には出さないものの、かなり焦っていた。
先程の攻撃、ミュネラは完全に避けきれていたわけではなく、頬にかすり傷を負っていた。
ミュネラは元盗賊である。俊敏な動きにはそれなりに自信があった。
それなのに頬に傷を負った。
(マズい。魔術が主軸とはいえ、さっきアレ打ったばっかりやし、コレは、ちょっと……)
……勝てる気がしない。
そう悟ったミュネラは、今にも逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
襲ってきた青年は目つきを鋭くし、逃がすまいと睨みつける。
「次は外さないです」
青年はミュネラをしとめる勢いで動き出した。
ミュネラはその攻撃を魔術で回避力を上げながら己の勘で避けていく。
「っあ」
しまった、とミュネラは次の攻撃を避けきれないことを悟る。
「隙ありです!」
青年がミュネラの首を切ろうと短剣を動かす───がしかし、それは何者かに止められた。
突然割り込んできた者は大剣を使って青年を吹き飛ばし、一気に青年との距離をとった。
「あ、アヴィ……!?」
「よォ。危ねェとこだったじゃねェか」
それはノルアことアヴィドだった。
リネアの元で観戦していた時、流石に危ないと感じ参戦してきたのである。
「……見とるだけやなかったん?」
「ア"?見捨てるわけねェだろォが。戦力は多い方が良いって言うしよォ」
「そか。理由は何であれ、助かったわ。……あんがとな」
吹き飛ばされた青年は傷を負いながらも立ち上がり、自身の邪魔をしたものを睨みつける。
「誰です?あとちょっとで殺せそうだったのです。万死に値するですよ」
「ア"?オレだけど文句あンのかァ?」
「お前はっ!」
シュンは大剣を持つ男に見覚えがあった。
──それは、一番最初にこの国に訪れたとき。
「ア"ァ"?……ン?テメェあンときの長身か!」
「長身……?」
「やっぱり……!」
「……ふむ?何か関わりがあるようなのは分かったのですが、結局のところ貴方は何者なんです?」
回復魔術であっとういう間に傷を癒し短剣を扱う青年は、顎に手を当て疑問に思っていた。
「名乗るならテメェの方からだろォ?」
「僕は『ホリエン』の司祭、モロです。貴方は敵ですか?味方ですか?」
「ヘェ。『ホリエン』の奴に会えるなんざオレは運が良いなァ。オレはアヴィド。『リヴァロ』No.8のアヴィドだ」
大剣を扱う青年──アヴィドがそう言うと、シュンとモロは警戒する。
「オイオイ、止めといた方が良いぜェ?オレは『リヴァロ』の中でも別格なんでよォ」
アヴィドは目をギラギラとさせながら声を強ばらせ、モロに対して威圧をかける。
モロはアヴィドにそう言われずとも強いという事は感じていた。それに“勝てない”という事実も。
「…何故、助けるのです?お前らにとって、仲間というのは互いに利用し合うだけの存在では無いのです?」
『ホリエン』は『リヴァロ』がそれぞれ個人で活動していることに、統率が取れないという仮説を立てている。
故に同じ『リヴァロ』のメンバーを仲間と思っていない。
目指す志は同じものの、それぞれが互いを利用し合っている。
という組織だと、モロは認識していた。
「はっ。仲間……な。それはァ、オレ達が二、三番目くらいに大事にしてるもンだ。ボスから口酸っぱくいわれててよォ。『仲間を見捨てるな』ってな」
アヴィドがそんなことを言っている中、ミュネラは心の中で(それノルくんが仲間は自分を高ぶらせてくれる道具っちゅー思考を改変するための暗示の一つなんよなー)と、自身のボスへの苦労を労る。
「ってちょい待てぇ!おま、長身て、アイツが言うとったヤツやん!!」
「おー気づきやがったかァ?コイツの師匠さんよォ」
「は?おまえ知っとったん?」
「事前に聞いてたからそりゃあなァ」
「ふざけとるんか?」
「まァそんなこと置いといてよ、今はここ切り抜ける方が大事だろォ?」
そう言ってアヴィドは口を斜めにあげ、目を細める。
ミュネラは悟った。戦う気やな、と。
モロもただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、冷や汗をかいている。愛用の短剣を持っていつでも戦えるように警戒は怠らないように気を張る。
アヴィドは重そうな大剣を持ちながらも、俊敏な動きでモロに近づき大剣を振り回す。
間一髪でその攻撃を避けるも、風圧でモロは体ごと吹き飛ばされる。すぐに体勢を整え、アヴィドの隙を狙って攻撃をした。
大剣使いは一撃一撃は強力であるが、次の攻撃を当てるまでに時間がかかる。モロはアヴィドにもその法則が通じると考え、一撃喰らったところですぐに攻撃をした。
モロのその判断は正しい。等しく模範的と言えるだろう。
しかし――
「惜しいな」
「!!」
アヴィドにそんなデメリットはない。
アヴィドがリヴァロの中でも別格と称されるのは、その強力すぎるスキルに関係する。
中でも『絶対防御』のスキルはありとあらゆる攻撃が一切効かない。
「甘ェんだよ」
そう言って、さらに『絶対切断』のスキルでモロに切りかかる。
モロは流石に終わったと感じながらも、最後の手段として残しておいた切り札を使う。
カバンから紙切れを取り出し、それを破る。その瞬間、その場所はピカっと眩しいくらいの光が広がった。
その閃光はアヴィドにとって大した目眩しになるはずもなかったようで、大剣を迷うことなく切りつける――――はずだった。
「よく耐えましたね、モロ」
突然4人の前に現れた聖女は、風を巻き起こして一気にアヴィドとの距離をとる。
「聖女様!本当に来てくださったのですね!」
「えぇ。緊急招集の紙を使ったのですね。いい判断です」
聖女とモロが話し込んでいる最中、アヴィドは内心歓喜していた。
もっと強いヤツと戦える――と。しかし今優先すべきはミュネラの命。アヴィドはその欲を押し殺した。
「帰るかァ」
「せやな。今ならまだバレへんやろ」
そう言って、2人は聖女達に気づかれぬよう、コソコソと撤退していった。
「では、……あ、あれ?」
いつの間にかいなくなっていた二人に聖女達が気づいたのは、およそ数十分後の話。




