21.新たな仲間、しかし人にあらず。
早朝の訓練を怠らない性格らしい戦闘狂は、場所が変わってもその習慣は変わらないようだ。
戦闘狂はこの家から少し離れた森で自身の愛剣を振り回していた。私達はその戦闘狂の元へ向かう。
「のぅ、リネア」
「何」
「先程から道の端々に赤い何かが見えるようじゃが……なんじゃろうなぁ、これは」
白黒は恐る恐るといった様子で、足元に置いてあるモノを気にして訪ねてくる。
「血?」
「はっきり言うでないお主!鳥肌がたつではないか!」
「え?今まで何回も血とか見てきた癖に今更そんなこと言うの?」
「血はいつ見てもヒヤッとするのじゃ!」
ホントによく分からないけどそういうことにしておこう。
でも、確かに戦闘狂に近づくに連れて、なんだかよくないものが転がっているのが見えた。それに遠くから何らかの悲鳴が聞こえる。本当に何をしているのだろうか戦闘狂は。
まぁ、確認しないことには何をしているか分からないが。
さて見てやろうじゃないか、とそんな気持ちで、戦闘狂の居る場所を覗く。
そこには、まさに私のあだ名にふさわしき者が居た。
戦闘狂の足元には魔物の死体が数体。数は少なくともあるが、その魔物の体格からして上位の存在だと予想がつく。戦闘狂自身は一匹の魔物の相手をしている。その表情は嬉々としており、戦闘狂の持つ血のような赤い目はギラついていた。
見ていて思ったが動きに隙がない。それに速い。
相手している魔物は大きい体格のオークで、見た目はあまり好ましくない。
オークはデバフを掛けられているのか、動きづらそうに戦闘狂の相手をしており、戦闘狂がそんな状態のオークを自身の大剣で切りつけると、直ぐにパタリと倒れてしまった。
戦闘狂の圧勝である。
「ふぅ。やっぱりこの辺の魔物じゃァ弱すぎるなァ。……お、リネアじゃねェか。昨日の夜中は見あたンなかったが、どこに行ってたンだ?」
「ちょっと買い物してた」
スキルで時間進めてましたとは言えないので、適当にはぐらかしておく。
『時間操作』をすると、進めた本人は進めた分の間は居なくなってるからね。
「戦闘狂は何してたの?」
「ア"?コレか?特訓ついでに今日のメシにしようと思ってなァ。ちょっと狩ってたぜェ」
その口振りは料理ができると言っているようなモノである。
「料理できるの?」
偏見だけど具材ぐちゃぐちゃにしてそう。
「ア"ァ"?舐めてンのかァ?オレは料理、超得意だぜェ。こう見えて『リヴァロ』の料理担当はオレなンだ」
「ほぅ。意外じゃのぅ。分量とか間違えてそうなイメージなのじゃ」
「へェ?じゃテメェには激辛のモン混ぜてやるよ」
「はい!リネアも『具材ぐちゃぐちゃにしてそう』って言ってたのじゃ!」
辛いの嫌いなんだ……って、何で私まで巻き込もうとしてるの?
「ア"?」
「言ってない」
思ってはいた。
もしかして白黒、私の心読んだりしてるの?ひどい。
「ま、安心しな。今日は生憎と辛い調味料は持ってきてねェンだ。ラッキーだと思っとけ」
それを聞いて白黒は、ほっと息をついて胸をなで下ろす。
私が『創造』でそういったモノも作れないことはないけど、私にまで辛い料理が回ってきたらイヤなのでやめておく事にした。
「オイ、リネア。オレの料理を食うって言うなら、食材運ぶの手伝え」
魔物の死体を肩に担ぐ戦闘狂は、切りつけた魔物達を持ち運び易いように加工したモノを、私に運ぶのを手伝うように言う。
私は頷いて、地面に置いてあるモノを、私の愛用武器が入っている亜空間に入れ込む。
手で持って行くのは汚れるし面倒だからね。使えるモノは使っておいた方がいい。
「はァ?何やったンだテメェ」
「便利でしょ」
「………テメェがまだ何か隠してやがる事はよォーく分かったぜェ」
確かに秘密は多い方だけど、そんな睨まれる程じゃないと思う。
◇
仮拠点に戻り、私が亜空間から食材を取り出すと、戦闘狂はそれをキレイに捌き、使える部分を持ってテキパキと調理の準備を始めた。
私はそんな様子の戦闘狂を、調理場の近くでじっと見ていた。
戦闘狂の手の動きはなかなか新鮮で、料理をする人はみんなこんなに器用な事をするんだなと、初めて分かった。
しばらくすると酒場でよく香る肉の焼ける臭いがしてきた。どうやら料理が得意というのは嘘じゃなさそうである。
半刻もすれば、テーブルに魔物の肉を丸焼きにした料理が並んだ。
どれも焼きたてで美味しそうだった。白黒なんか目をキラキラとさせて戦闘狂の作った料理を心待ちとしている。
「完成だ」
「おおおー!なかなか美味そうじゃのぅ。では、いただくのじゃ」
白黒はそう言って、魔物の肉にかぶりつく。
私も戦闘狂の料理に手を付ける。
「む!……んぐ、こ、これ、すごくうまいのじゃ!」
「ッハ。そうだろォ?なンせソイツはミノタウロスの変異種の肉だからなァ。変異種は他のミノタウロスと違って筋力がスゴくてよォ、見つけて狩ンのは一発なンだが、探すのが面倒でなァ。基本的に単独で行動しやがるし、命の危機を感じると直ぐに逃げンだ。料理人のオレから言えば、見つけたら直ぐに狩りてェ魔物の一つだぜェ。ここに居たのは運が良かったなァ」
そんなのが居るんだ。一つの種族にまた別の種類が居るとかあまり聞いたことがない。
「ふーん。じゃあコレも?」
「リネアのはオークの肉だ。あのオークは上位種だったからなァ。普通の肉よりも質は良いし、何より食う部分が多くて食べがいがある。森で遭難してもコイツを見つけりゃ5日間くらいはもつと思うぜェ。人によっちゃあ、一週間あっても食べ切れねェぐれェだ。旨さで言えばミノタウロスの変異種の方がオレは脂がのってて旨いと思うンだが、そもそもミノタウロス自体が独特な味だからなァ。オークの方が良いって言うモンも少なくはねェ。リネアはミノタウロスは好まなそうな気ィしてな。勝手にオークの方にしといたぜェ」
「詳しいね」
「まァな。狩った魔物の処理をどうして良いか悩ンでた時に、食えば良いことに気づいてなァ。だが普通に生のまま食うと舌がこさえちまってよ。工夫して調理すれば旨くなることに気付いて、料理するようになったンだ」
変異種まで把握してるくらい詳しいってことは、何年も料理を続けてそうな気がする。
「ンじゃ、オレも食うか」
あらかた説明し終えてなんだか満足気な戦闘狂は、調理場からいくつかの皿を持ってきた。それだけでは足りず、何回か調理場を往復していると、テーブルが肉料理で一杯になっていた。
量で言えば私達の四倍くらい。
圧倒された白黒が、ようやく椅子に座った戦闘狂に訪ねる。
「そ、それ、全部食べる気なのか?」
「アァ。オレはテメェらと違って多食でなァ。一日一食でも大丈夫な体質なンだが、その分沢山食わねェと足りなくてよォ」
「それでも食べ過ぎではないかの!?」
「肉はどれだけ食っても飽きねェンだぜェ」
そう言うと戦闘狂は黙々と自分で作った料理を食べ始めた。
多分さっきのオークの話、自分だったらこのオーク一匹だけで、一食を済ませられるからよく狩ってるってことだったのかな。すごいとか通り越してむしろ怖い。
戦闘狂は太っている訳ではないし、むしろ痩せている。私は、どこにその量が入っているのか疑問だった。
数分もすれば、戦闘狂は皿に乗っていた全ての料理を食べ尽くしていた。
まさか十分も経たずに食べ終わるとは思わなかった。
戦闘狂は皿をテキパキと洗い流し、部屋にある自分の荷物を整理し始めた。
そろそろミュネラの毒がこの首都に回ってくる頃だ。何なら首都の門付近で流行り始めている。
戦いが始まる頃だと戦闘狂も感じたのだろう。もうこの家に戻ってくるつもりはなさそうで、全ての荷物を鞄に詰め込んでいた。
……うん。一足先に、私は観戦でもしようかな。
「お主、ノルアを置いていく気かのぅ?」
「?一緒に行くと思ってたの?」
「違うのか?」
「戦闘狂は戦闘狂で勝手に行動するよ」
そう言って私は、『転移』でサーベント王国の城に向かった。
◆
城の中は一見落ち着いているように見えるが、会議室の中は大慌てだった。
それもそのはず。
昨日、サーベント王国の中心地アルヴ町の住民が何者かに襲われ、そこに住むほぼ全ての人間が亡くなったという報告を受け、また、その情報提供者もそれを知らせた後に一時間もせずに亡くなったという。
王はその報告を聞いて、先日聖女に言われたあの一言が脳に浮かぶ。
──『この国は『リヴァロ』によって滅ぼされます』
王はあの言葉が決して冗談やまやかしではなく、真実なのだと悟る。
これはサーベント王国の運命を争う事態である、と。
王は今居る国の臣下達を集め、さっそく会議を開いた。
臣下達は、王が現状を伝えていくうちにどんどんと顔を青ざめている。
それ故会議は荒れに荒れ、そして長引いた。
そんな時だった。
「会議中のところ失礼します!!」
「何事だ!」
王直属の近衛兵が、慌てたように息を切らして入室してきた。
「先日アルヴ町で起きた現象が、数名の王都の住民にも症状が現れたそうです!」
「何!?」
その報告を聞いて、会議室に居た者は更に慌てふためく。
その時、また別の人物が現れた。
「落ち着いてください」
『!!』
その声は先日王に危険を知らせた聖女だった。
「いいですか。あれは〈毒〉です。どんな回復魔術でも薬でも治らないタチの悪い毒です。正直に言いますと、対処する方法はありません」
「そんな……!」
「しかし──わたくしの力であれば、そのような毒でも治す事は出来ます」
聖女は真剣な顔でそう告げる。
「なんと……!では、聖女殿が毒を対処してくれると言うのか」
「ええ。ですが、わたくしからお願いがあります」
「申せよ」
王からしてみれば、問題を解決してくれるかもしれない存在である聖女からの頼みには、何でも叶える気でいた。
「その毒を世に放った首謀者を倒してほしいのです」
「……『リヴァロ』を、か」
聖女の忠告が正しければ、倒すのは世界で今騒がれている凶悪な組織の一人を倒すということだった。
「はい。ですが、倒しきらなくても構いません。『リヴァロ』はそれくらい凶悪なので」
「……それを倒さなければ、この国は滅亡してしまうのだろう?」
「はい」
「その案、飲もう」
「陛下!?」
王の返答が意外だったのか、臣下達は更に慌てている。
(自分の命がかわいいだけだろうに……)
「ありがとうございます。では早速動いてもらうとしましょうか。あぁ、安心してください。わたくしも出来るだけ協力しますよ」
聖女はにっこりと微笑みを浮かべ、すぐに真剣な表情で臣下達に指示を出していた。
◆
私達は今、城の中を歩いて回っていた。
不法侵入?警備が甘いこの城にそんな事は関係ない。
それに『隠蔽』で姿を消しているからバレる事はないのである。
『あ!見よ、リネア。聖女がおるのじゃ!』
白黒が指した方向を向くと、聖女がこちらを真っ直ぐに見てきた。
あれ、気づかれてる?
そう思ったけど、そういう訳では無かったらしい。私の後ろに居る人物を見ていたらしい。
「来ていたのですね、クラフティさん」
クラフティ?誰だろうか。
『アヤツはこの国のギルドマスターらしいぞ。前にギルドに来たときに聖女と話しておったのじゃ』
へぇ。ギルドマスター……ね。無駄に背は高いし若そう。
色男って類いの人間かなこれ。
「ええ。陛下への報告を」
「ヴァイス殿なら執務室に居たと思います」
「ありがとうございます。それではまた」
クラフティはそう言って、国王の元へ歩いていった。
というか『ヴァイス殿』?聖女ってそんなに偉いの?他国の王様を名前呼びってなんかすごい。
『我もびっくりしておる……。リネアと同じくらい態度のでかい奴が居るとは……』
『馬鹿にしてる?』
『気のせいじゃないかのぅ?』
まぁ流しておこう。
そんな会話をしていた直後、外で轟音がした。いよいよ始めたのだろう。
「何事ですか!?」
「どうやら、外で敵が暴れているようですね。行きましょう」
聖女は後ろの部下と思われる人達とそう会話した後、スタスタと早足で戦場へと向かった。
……さぁて、地下探索にでも行こうかな。
『む?見に行くのではないのか?』
『ミュネラに戦力を割いて、警備が薄くなってる今がチャンス』
元々地下には目を付けていたし、タイミングを見つけて行くつもりではあった。
あそこには気になるモノがあるし、確認しておきたいモノもある。
そういうわけで、私は地下へと続く階段に向かった。
◇
地下へ降りると、まず最初に武器庫が見えた。
武器は破滅杖があるから特に必要は無いけれど、防具の面では無防備と言っても過言じゃない。
何かいい掘り出し物はないかな、なんて思いながら、私は地下の武器庫を漁る。
「………あ」
すると、ある帽子を見つけた。
──その帽子は呪われていた。
装備しようとすると、あっという間に生命力を削られてしまうのだ。その代わりに、付けている間は何かしらの効果が付くのだとか。しかし生命力が削られてしまっては、その帽子の効力も意味をなさない。
まるで、その帽子自身が認めた者しか装備させないとでも言うように、帽子は呪われているのだ。
「……面白いね」
私は『不老不死』というスキルを持っている。故に不死身。生命力などあるようで無いようなもの。
果たして私はこの帽子の呪いに耐えうるのだろうか。
そういった興味本位で、私は帽子を被る。
「……ん?」
何故だろうか。生命力が削られる感覚が一切しない。
『ギャハハハハ!それはオレ様がオマエの事を気に入ったからだ~!』
……はぁ。……うん、うん、なるほど。そっち系のアレだったのか。
『なんだあ~?オレ様の凄さにビビッときちまったかぁ~?』
うーん……私、そういう類は分かんないハズなんだけどなぁ。
『オイオイ、オレ様を幽霊かなんかと勘違いしてねぇかぁ~?断じて違うぞ?』
ん?そうなの?
『あったりめぇだろ~!何でそんなもんと勘違いしやがったんだよ』
喋る帽子とか初めてみたからつい。
『あ~?オレ様は今はこんなナリとはいえ、元は超超凄い妖精だったんだぜ~?そりゃ喋れるわ!』
「は、妖精……?」
「なんじゃお主ら。さっきから二人で喋りおって」
いつの間にか、良い防具探しを手伝ってくれていた白黒が戻って来ていた。
『お~?オマエ、オレ様の声が聞こえんのか~?』
まるで持ち主にしか声が聞こえないかのような口振りに聞こえる。
「勿論じゃ。リネアの被っておる帽子じゃろう、お主。我も少しばかりじゃが、呪いの気配を感じるぞ。誰かに恨まれておるのか?」
『おっ、当たりだぜ~!よく分かったな~』
呪いといえば、ルンの持っていたスキルもそんな名前だった気がするが、今回は関係なさそうである。
確かに誰かに恨まれることによって、その人に呪いが生じる。
それは肩が重いだとか、最近不幸の連鎖が起きすぎてるとか、そういった事が起こるくらいなのだが、この帽子のような、姿が変わるまで呪われるのは初めてみた。
「流石に恨まれすぎじゃない?姿が変わるとか」
『オマエもそう思うかぁ~?オレ様もそう思うぜ~!知り合いの妖精にちょっかい出しに行ったらよ~すっげぇマジギレされてさぁ~。気が付いたらこの姿になってたってわけなんだよぉ~』
どこか曖昧でふわふわとした回答のように聞こえる。
この帽子自身が、帽子になる前の記憶が曖昧なのだろう。
『でも姿が変わるまで呪われてる奴は結構いるぜ~』
「そうなのか?我はお主が初めてじゃが」
『おう!ここ数百年は見ねぇが、一時期は国を跨ぐ毎に一体は呪われてたりしたぜ~!』
「そんなに居たのか!?」
かなり長生きなんだな、この妖精。
『最後に見たのはカラスになってた奴だな。元は魔人だったらしいが、呪われると寿命も縮まるらしくてよ~、しばらくしたら死んじまったんだぜ~!』
「そんなあっさり!?……お主はコヤツと同じ感性を持っているようじゃのう」
多分“しばらく”って、数十分とかじゃなくて数年くらいあるでしょこれ。
年寄りは感覚が狂っててちょっと怖いな。
「そういえば、帽子を付けた時にある効果って、」
『そりゃあるに決まってんだろ~!オレ様は防具とはいえ装備品だからよ~。オレ様が帽子になった時に付いたみたいだぜ~』
ちなみに本人曰わく、攻撃力上昇、防御力上昇、回復力上昇、速度上昇、魔力回復力上昇、幸運値上昇、攻撃速度上昇、ダメージ削減の八つの力を有しているらしい。
なかなか優秀だなこの帽子。
「じゃあ、装備したら体力が削れるとかって、君の仕業?」
『まっ、そうだな~。一応こうやって切る事も出来るんだぜ~?ただ、元の姿に戻る為には、体力───まぁ正確には生命力なんだがよ、それが大量にいるんでな~。しょ~がないと思わねぇか~?』
「物騒な帽子じゃのぅ」
『オレ様が復活するためだ。仕方のねぇ事なんだぜっ!』
帽子は一つも罪悪感を抱いていない様子。でも、そんなに元の姿に戻りたいのなら、少しおかしい気がする。
「……何で、私の生命力は吸収しないの?」
『そうそう、オマエ。ちょっと頼みてぇ事があってよ~』
「リネア」
「我はスジアンじゃ」
『へぇ~。そんな名前だったんだな。んじゃリネア、さっきも言ったが、オレ様はオマエのことが気に入ったんだ。とんでもなく強い気配を感じたからな。だから生命力を吸収しない方が英断な気がしてな~。っつ~わけで、これからもオレ様のこと装備してくれねぇか?ついでに呪いを解く方法も探してくれると助かるぜ〜!』
とんでもなく唐突で横暴な物言いである。
イヤだと言いたいところだが、まぁ妥協して被ってあげてもいいかもしれない。
「……君の能力を自由に使って良いなら、装備してもいいよ」
『ホントか!?』
「ついでに生命力を吸われる感覚が知りたい」
『はあ?オマエ、自殺志願者なのか~?』
「誤解じゃ。こやつはただ探求心が強いだけなんじゃ」
本来私はこの帽子、生命力が削れるらしいという情報で被ろうとしたのだ。
それなのにこの帽子はそれを勝手に切るから、『不老不死』がどのくらい有用なのかが試せなかった。
『ま~、リネアが死なねぇんなら、やってやるけどよぉ~』
「大丈夫」
『そんじゃま、よろしくな~!あ、ちなみにオレ様はナジュム。星に宿る妖精ナジュムだ。覚えてくれるとオレ様としても嬉しいぜ~』
そう言ってナジュムは帽子にギザギザとした口を見せ、ニヤリと笑った。
『そういやぁ、オマエ魔術師だろ~!それっぽく形も変えてやるぜ~!』
「え?」
突然そう声をかけられ頭上を見ると、黒のハット帽がグニャグニャと形を変え、数秒たつと魔術師がよく身につけている帽子に変わっていた。
『どうだ~?気に入ったか~?』
「……形、変えられるんだ」
『そうだぜ~。どんな形も自由自在!それが、オールアーマーのオレ様何だからよぉ~』
オールアーマー?
ナジュムがそう言うが、私は『千里眼』で見た覚えがなくて再度確認する。
名前:****
種類:オールアーマー
効果:『生命力吸収』『八つの支援』
備考:装備すると生命力を削るが、八つの内の一つを使える呪われた帽子。
書いてあった。
備考に目が行き過ぎて気が付かなかったのかも。
にしても妖精が武器になると、伝説級武器みたいに効果が付くらしい。初めて知った。
名前が入ってないは呪われているせいなのかもしれないね。
ちなみに本来のナジュムの情報も見れるには見れる。
名前:ナジュム
スキル:『八つの支援』
種族:妖精
出身:不明
備考:星の妖精。太陽の妖精に呪われている。
とまぁ、本人が覚えている限りのモノなら見えるけど、それ以外はグチャグチャしたような感じで、見えないモノばかりである。時間をかければ見れないことは無いけど、流石に面倒。
また今度にしよう。いつか分かればそれでいい。
「あ、帽子の形変えられるならベレー帽が良いな。大きいと邪魔だし」
『えぇ~?注文が多いなぁ~』
その後、私のリクエスト通りベレー帽に変えてくれた模様。
ぶつくさと文句を言う割に、意外と優しいんだなと認識を改めた。
『で、どうだ?』
「……ん?」
突然ナジュムがなにか聞いてきたが、一体なんのことなのか分からず反応が少し遅れた。
急になんだろう。素直に思い当たる節がない。
『今生命力吸ってるんだがよぉ〜、その反応だと全然減ってねぇな〜?』
「吸ってるの?」
言われてみればちょっとくすぐったいような気がしなくもない。自分の体を調べてみれば、確かに生命力は吸われているようだが、『不老不死』のスキルが優秀すぎるのか、私が生命力を吸われすぎて死ぬことはなさそうだった。
なんだ、効かないのか。
少し残念だった。
「ん、ありがとナジュム。よく分かった」
『お〜、ほんとに平気なんだな〜』
多分だがナジュムは引いている。




