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元王女様は、世界を滅亡へと陥れたい。  作者: 九漆
第一章 ネーフェス王国編
2/26

2.証拠は一切、残さずに。

 時刻は午前三時。

 まだ誰も起きていないような時間。

 

 私は部屋を出て、まっすぐ城へ向かった。見張りなんて造作もなく、魔術を駆使すれば簡単に通り抜けられる。

 案の定、バレることなく城へ入り込めた。

 今更だけど、王女が城に潜入なんておかしな話。王族が城に入るなんて、不自然なところはないのに。

 

 この時間なら、まだ王妃と寝ているはず。早く行って殺さないと。


 そう思って、王の自室へと向かった。

 

 ◇

 

 部屋の前まで行き、扉の隙間からその部屋を覗く。

 私の狙い通り、二人はそこで眠っていた。

 

 今なら、いける。

 

 私はそっと中へ入り、防音結界を張った。要らないだろうけど、一応ね。

 

 十年前からずっと私の手元にあった『破滅杖(カタストロフィ)』を握り、一瞬で殺れるように短剣の形にする。

 

 二人の近くまで来てみたが、気づく様子はなかった。

 

 よし……!

 

 私はその短剣を降り下ろそうとした──その瞬間、誰かが私の手を掴む。

 後ろを振り向いて顔を除くと、それはレイシアだった。

 

「シュリア様は、その選択をするのですか?」

 

 そう言うレイシアは、いつになく真剣な表情だった。

 

 気付かなかった。分からなかった。何時からこの部屋に居た……?

 

「邪魔しないで」

 

 私はレイシアを睨み付けた。

 

「……殺すのですか?」

「そうだけど、何」

「…………はい、そうですか。シュリア様はその選択をすると言うのですね。はい、いいです。いいですよ。私には、まだ希望はありますから。それではシュリア様、また会う日まで」

 

 意味不明な言葉を残し、その手を離して消え去った。

 

 レイシアのことはよく分からない。だけど今は、とにかく、二人を殺したくて仕方がない。

 

 眠ってて、命を媚びる声が聞こえないのは残念だけど。殺せるだけ今の状況はかなり良い。

 王族擬きのあの二人も殺れたらよかったなぁ。でも居ないものはしょうがないかな。

 

 私はドレンドルの首元に、『破滅杖(カタストロフィ)』を突きつけた。

 

 ───その時、何かがプツリと切れる音がした気がする。

 

「ふふ。ふふふふ。あははははは!!」

 

 あまりにも無惨な死に様で、思わず笑みがこぼれる。王妃も、流れで殺した。『破滅杖(カタストロフィ)』を抜いたときの血しぶきが綺麗だった。

 

「あははは!!今まで散々私を貶めて、最後は私に殺されるってどんな気持ちかなぁ!ざまぁみろ!あははは」

 

 思いっきりそう叫んだ。誰も聞こえてすらいないが、そう叫ばずにはいられなかった。

 

 ふと、ドレンドルが微かに動いたのが目に留まる。

 

 ……まさか………死んでない?

 

「……うっかり指すところ間違えちゃったのかな。あ、もしかして、もう一回殺してほしいんだね。ふふ。私が叶えてあげる。君の願い」

 

 そう言って、ドレンドルの首筋目掛けてもう一度指す──が、首筋ではなくドレンドルの手に刺さった。

 

「──っく。まさか洗脳が解けるとはな……!」

「…………早く死んでよ」

「ふっ。私はそう簡単には死なぬよ。なんせ『忠誠具現』というスキルがあるのだからな!!」

 

 『忠誠具現』……?どっかで………。

 

「あー。あれって君のスキルだったの。誰から『吸収』したんだろうって思ってたけど、まさか君のスキルだったんだ。あれって結構なゴミスキルだよね」


 『忠誠具現』

 それは、自分に対して忠誠を誓った者の力の半分を共有し、自身が死ぬと、代わりに忠誠を誓っている者が死ぬ、というスキル。

 

「は……?お前、自分がスキル持ちだと言いたいのか?」

「そうだよ」

「バカな! お前は一級鑑定士にもスキル無しと言われた者だぞ! 不死という体質しか持たないお前にスキルがあるわけないであろう!」

「……そんなに言うなら、見せてあげる」

 

 私は、自身のスキルを曝け出す。

 

『吸収』

 見たものを吸収して覚える。殺したものが持っている技術も吸収する。吸収したものは自分で使える。物理的にも、何でも吸収が可能。

『不老不死』

 ある一定の頃になると年を取らなくなる。また、死ななくなる。

『創造』

 創造することが出来る。

『千里眼』

 全てを見通す。スキル、魔法、魔術の性能、人が付いた嘘、その人の過去、心の声など。

『天邪鬼』

 事実とは反対の事を呟くと本当になる。

『状態異常無効』

 状態異常が無効になる。

 

「私の『千里眼』がその人の鑑定系スキルより強力だったんだろうね。まぁ、流石に『吸収』したスキルと創ったスキルは多すぎるから見せないけど」

「ば、バカな……! 不死までもがスキルだったと言うのか……!?そ、それに、そのスキルの量はなんなんだ……!?とても人間だとは思えん!!」

 

 ドレンドルの絶望したような顔は、妙に高揚する気分になれた。

 

「それじゃあ、バイバイ」

「ま、待て!!忘れたのか?私はこの国の全ての国民が有る限り死なぬのだぞ?はっ。残念だったーー!?」

 

 言い訳のように聞こえるその言葉を、私は聞きもせずに『破滅杖(カタストロフィ)』を突き刺した。ドレンドルは、その場で崩れ落ちるように倒れた。大量の血を流して。

 

「私の『破滅杖(カタストロフィ)』で壊したんだけど。気付かなかったんだ」

 

 『破滅杖(カタストロフィ)』の性質は破滅と気絶。

 先程刺したときに、破滅の効果を付けた。その時にスキルも破滅したと思う。

 

「ふぅ……早く逃げないと」

 

 私は、『破滅杖(カタストロフィ)』の血の汚れを落として、その部屋を出ようとした……が、何かに服の裾を引っ張られる感覚がした。

 

 そこに目をやると、私の手に収まりそうなくらいの精霊が居た。

 

「んぐぐぐっ、待て、待つのじゃぁぁ!」

 

 その精霊は、白と黒のオッドアイに、白黒のしましまのような短い髪で、斜めの白と黒のしましまのような前髪をしていた。とにかく全体的に白黒な、そんな精霊。

 私はソイツを摘まむ。

 

「やっと気づいたのぅ」

「……虫?虫か」

 

 そう思い、それを近くの窓から捨てる。

 ここは三階。よほどしぶとい虫じゃなければ、戻っては来れない高さである。つまりあの虫は死んだ。はい、平和。

 

 一応確認の為、下を見てみると……虫は勢いよく此方に向かって上昇してきていた。

 

「おい、やめい!虫などではあるまいわ!」

「害虫」

 

 また掴んで投げ捨てる。

 そして速攻で戻ってきた。

 

「捨てるでない!話くらい聞くのじゃ!」

「はいはい」

 

 いい加減可愛そうになってきたので、投げることをやめた。

 

「全く……。じゃ、先ずは自己紹介かの。我はスジアン。ネーフェス王家に仕える、時の精霊じゃ」

 

 時の精霊。

 それは、存在することすら不明の精霊で、世界で扱える者が少ない、魔術の属性。

 

 七大精霊が七大属性に連なって生まれるのは最も有名な話。

 

 火の精霊が存在するからこそ、火属性の魔術が使える。

 水の精霊が存在するからこそ、水属性の魔術が使える……というように、精霊の存在は世界にとっても重宝される程であった。

 

 七大属性と七大精霊は、主にこの七つ。

 

 火属性 サラマンダー

 水属性 ウンディーネ

 風属性 シルフィード

 土属性 ノーム

 光属性 ルーチェ

 闇属性 不明

 時属性 不明 

 

 火、水、風、土、光の精霊は、この世界の何処かに今も健在。ちなみに、氷、毒などは、これらの属性が主体となって派生した属性だ。ほかにも例外的な属性や精霊は存在していたりするが、有名どころはやはり七大属性だ。

 

 こうしてみると、闇と時だけは不明となっているが、闇属性は最近消滅したという噂がある為、闇の精霊は何者かに消された可能性がある。実際、闇系統の精霊の姿が見当たらない上、使えない者が多くなっているので、居なくなったのはほとんど確定したようなモノだろう。

 

 一方時属性はというと、現状、魔力量の多い者や限られたものしか使えていない。闇属性よりも使える可能性のある属性だが、精霊も姿を現さない為、後に五大属性、五大精霊になるのも時間の問題だという文献をちらほらと見たことがある。

 

 つまり、そうした世界の見解にもある通り、ここに時の精霊と自称するモノは怪しさ極まりない。

 

 私はその精霊を、怪訝するような目で見た。

 

「……本当…?」

「そりゃそうじゃよな。まぁ、一つ一つ説明してやるわい」

 

 長話が始まりそうな予感がしたので、その続きを遮る。

 話をするにしても場所が悪い。

 

「後にして。……朝になったら困る」

「む。それもそうじゃな。では、シュリアよ。そこのドレンドルの首に掛けてあるペンダントを取ってくれぬか?」

「なんで名前……」

 

 私は一文字も、こいつに名前を教えていない。

 

「後じゃ後。朝になったら面倒なんじゃろう?お主のやっていた事には目を瞑るから、さっさとやるのじゃ」

 

 命令口調でムカつくけど、私はドレンドルの付けていたペンダントを取った。

 そのペンダントは、綺麗な水色の宝石が嵌め込まれていた。

 

 ……私の目と同じだ。

 

 妙に印象に残るそのペンダントを、私は服のポケットにしまった。


「うむ、では次。地下の禁書庫まで行くのじゃ」

 

 面倒な気しかしない。

 

 ◇

 

 禁書庫ーー

 

 地下の警備は上の警備と比べ物にならない量だった。

 私はその人数を全て眠らせてきたが、これがなかなかに疲れる。できれば休憩したいところだが、うかうかしていると朝になってしまいかねない。私は目的地まで足早に足を進める。

 

 そうしてしばらく歩いていると、如何にも重要そうな部屋の中までやって来た。

 

「流石じゃな。警備は硬かったじゃろう?」

「……まぁ。それで?」

 

 「せっかちな奴じゃ……」と、精霊は肩を落とした。

 

「……早くしないと朝になる。白黒」

「し、白黒!?それってまさか我の事なのか!?」

「………他に誰が?」

「違うのじゃ!我はスジアン。ス・ジ・ア・ン・じゃ!ちゃんと覚えるのじゃ!」

 

 そう言いながら、白黒は私の目の前まで飛んできた。

 ちっか………。

 

「………はいはい。で?欲しいものは何処なの?」

「ずーっと奥まで進めば分かりやすく本が一冊置いてある。呪いかかっておるから注意じゃ……って、シュリアは状態異常無効のスキルを持っとったの。心配せんでも大丈夫そうじゃな」

「ふーん………」

 

 私は白黒の指示通りに、回りが本だらけのその部屋を真っ直ぐに進んだ。真っ直ぐ進むと、白黒の言う通り、本が置いてあった。

 ………タイトルは……『ネーフェス王国』(閲覧禁止)………?なにこれ。

 

 とりあえず、その本……と、ついでに同じようなタイトルでもう一冊置いてあった本を持って、白黒と共に部屋を出た。

 

「白黒、他は?」

「スジアンじゃ!」

「白黒」

「だからスジアンじゃって……はぁ、キリがないのぅ……。まぁええじゃろう。他はもうない。さっさと出るのじゃ」

 

 もう無し……か。……あ、そうだ。

 

「ちょっと寄り道する」

「?うむ。了解じゃ」

 

 ◇

 

 私は、その場所から自分の寮へと戻っていき、ある事をしておいた。

 

「ほう。なかなか賢いの。じゃが、それをするとお主の姿も変えねばならんぞ?」

「あー……大丈夫でしょ。………結んだり切ったりすれば案外バレなさそうだし」

 

 その後、さっさとネーフェス王国を出て、私たちは隣国を目指す事にした。

 

 ◇

 

 ネーフェス王国から充分に離れた森で、私は白黒の話を聞くことにした。

 

「じゃ、……話、聞くけど」

「うむ。やっとじゃな」

 

 ふぅ、と白黒は一息吐き、ゆっくりと話始めた。

 

「まず始めに言っておく。我はお主の先祖、初代ネーフェス王国国王の契約精霊なのじゃ」

 

 ヘぇ……意外。契約してた様には見えなかった。

 

 精霊と人間の契約は、悪魔との契約と似たようなものだ。

 悪魔の契約と違うところがあるとすれば、契約方法くらいだろう。

 

「経緯から説明すると、召喚された世間知らずな我はその召喚主、初代国王の契約精霊になることにしたのじゃ。初代国王は優しくてな。何も知らない我に、世界中を一緒に旅してくれたのじゃ。設立したばかりの自国をおいてでも、アイツは我と世界を旅してくれたんじゃよ。あの頃は思ったよりも楽しめたものじゃ。懐かしいのぅ」

 

 白黒はそう言い、何処か遠い目をする。

 

 ………いや続けてよ……。

 

 とりあえずビンタする。

 するとバシンッ、と音がなった。

 

 ……いい音した。

 

「いッ!?……すまぬ。感傷に浸ってる場合じゃないのぅ」

「………」

 

 そう言いつつも、白黒はまた同じような状態になっている。

 私は白黒に向けて思いっきり睨むと、その目を見た白黒が焦り出す。

 

「す、進めるのじゃ!進めるのじゃからそんな睨まないでほしいのじゃ!!」

「……続けて」

 

 私が睨むことを止めると、白黒は心なしか安心したような表情をした。

 

「うむ。初代国王には五人ほど子供がいての。女が二人、男三人。そのうちの一番最初の息子、つまり第一王子は、珍しい事に真っ白な髪色だったのじゃ。髪色や瞳の色は、だいたい親から遺伝するもの。しかし、第一王子の髪色は、どちらも違ったんじゃ。瞳の色は国王そっくりではあったんじゃが、髪色だけは父親母親どちらも違った。初代国王は恐らく我と契約した影響だと、そう言っておった。家族故に契約がより濃い形で現れたのだと、そう考えた」

「ん……?とすると、私の髪もその影響?」

「まぁ、そうなんじゃが……さっき見てわかったが、お主は特殊な存在のようじゃ」

「……?」

「まあ聞け。……初代国王が死んだとき、我は始め、我も死ぬのかと思っていた。運悪く、我は契約解消をしてもらってなかったからの」

 

 悪魔と精霊の契約は似たような造りとなっている。

 契約した主人と精霊、あるいは悪魔は一心同体。主人が死ねば、精霊、あるいは悪魔も死ぬ。それが寿命であっても、悪魔や精霊は死ぬ定義になっている。

 

 その為、主人は自身が死ぬ前に契約を解消するのが暗黙の了解となっていた。勿論、一緒に死にたいと言う精霊も居るには居るらしいが。うわさによると、その場合はかなり面倒な手順を踏む必要があるらしい。

 

「しかし、我は死ななかったのじゃ。その代わりに、主人が第一王子となっておった。我は主人と同族以外に姿を見せられない体質での。今まで見えるのが初代国王だけであったが、初代国王が死んでから、第一王子が我の事を見えるようになったのじゃ。これはの、第一王子が亡くなった後も永遠と続き、ついさっきまで我はドレンドルに付いておった。姿は見えておらぬようじゃったが」

 

 つまり、王太子、あるいは王太子妃は、親が死ぬ度に白黒の事が見えるようになったと。

 

「ちなみに、我の姿を見れた者は全員髪色が真っ白じゃった。しかしの、何百年と我が遣えたある年、第一子の髪色は真っ黒だったのじゃ。謎じゃろう?そして数年後。真っ黒な髪色の第一王子は、なんと父親である国王を殺し、恐怖政治を始めたのじゃ。逆らったものは全員処刑だっ……って言っての。この出来事で分かったのじゃが、我の髪色は白と黒、両方が平等に混ざっておるであろう?」

「うん」

 

 目がちかちかするくらい白黒。

 

「つまり、代々ネーフェス王家の第一子は、内面の心の性格で髪色が変わるのじゃ。清らかな心であれば白。歪んだ心であれば黒。我はそう思ったのじゃ」

「へぇ。じゃあ私の心って清らかなんだ」

 

 何となく棒読みで言ってみた。

 

「違うのじゃ!お主だけは例外中の例外!さっきドレンドルを殺してた時、髪色が真っ黒じゃったのじゃぞ!!しかも目も真っ赤な紅色!初めて見たのじゃ!」

 

 あ。やっぱり。

 清らかな心、って言った時点で疑問に思っていた。だって私は、そんな他人に優しくしたりするような性格じゃないから。どちらかと言うと、黒髪の方が私の性格とあっているような気がする。

 あと、目……か。

 

「……目の色も変わる事って、今まで無かったの?」

「勿論じゃ。さっきも言ったように、変わるのは髪の色だけなんじゃよ。それと我の勝手な考察じゃが、お主のその髪色と目は、いつも通りであれば白髪に水色の目になり、人を殺したり、血を見たりすると、性格が変わって黒髪に赤い瞳になる……というのが条件だと思っておる」

「ふーん」

「一応話しておくと、我もこの世界に来る前は、白と黒のオッドアイでなくて、水色と赤色のオッドアイの瞳じゃったぞ」

 

 ……へぇ。

 そうなると、色々分かってくる事がある。

 

「……たまたま?」

「うーむ……今のところ分からぬのぅ。まぁ、保留でいいんじゃないかの。これからはお主と一緒に居る機会は増えるであろうし」

「……そっか」

 

 ……なるほど。

 つまり、白黒は分からない。分かってない。

 

 私の中で確信した。

 白黒──時の精霊スジアンは、本来初代国王ではなく、私と契約すべき精霊であることを。

 

 この件はもう解決かな。あとは──

 

「それで、この本とペンダントは何?」

 

 私は、ドレンドルから盗み出したペンダントと、わざわざ城の地下まで行って盗んできた本を取り出した。

 

「ペンダントは我の核じゃ。超超超大事な物での。亡くすと我が消えるまで起こりかねぬ。本の方は……あーなんというかの」

 

 ……?

 妙に渋ってくる。

 

「捨てようか?」

「……ほう。なるほど。その手があったのじゃ! うむ。それでいいかもしれぬ! そうじゃよ。捨ててしまえばいいのじゃ!」

 

 なんかテンション変わった。

 嫌がるかと思ってやったのに……。

 

 私は無言で本のページを捲る。

 

「あ"!!見るでない!!やめろ!やめるのじゃあぁぁ!」

 

『○月×日。

 我は、これまでの出来事をこの本に記録することにした。今日は記念すべき一日目。何時も通りネーフェの国を回っておった。相変わらずいい国じゃな。

 ⋮

 ⋮

 ⋮

 △月□日。

 今月は中央ニトロアを回った。自然豊かな国が多く、空気がおいしい。一番発展している地域かもしれぬな。ネーフェの国も見習ってほしいものじゃ。

 ⋮

 ⋮

 ⋮

 ◇月◇日。

 最近ネーフェが相手をしてくれぬ。暇過ぎて辛いのじゃ。というか、隣国の国王が連れて来た契約精霊がほんとにムカついた。なんじゃあの態度!主人の方に乗って足組むってどんな度胸しておるのじゃ!?しかも終始我を見てニヤニヤしておった。煽りにしか見えんのぅ。やっぱり許せんな。てか精霊には我の姿が見えるんじゃな。初めて知ったわい。

 ⋮

 ⋮

 ⋮

 ■月□日

 ヤバイヤバイヤバイヤバイ。我死んじゃうのじゃ!!ネーフェ、何故契約解消してくれぬのじゃ!?我まで消滅してしまうのじゃ!?ほんとなんで解消してくれぬのじゃ!?我はまだ消えたくないのじゃああぁ!!

 ⋮

 ⋮

 ⋮』

 

 というような内容の、白黒の日記だった。もう一冊はこの本の続きが書かれていて、ドレンドルの件までびっしり書かれていた。

 

「……思ったよりも真面目……」

「あぁぁぁぁ……誰にも見られないように封印させたのにぃぃ……」

 

 なるほど。確かに隠したくもなる。

 

「……燃やせばよかったのに」

「出来なかったんじゃ!!耐火性の本だとは思って無かったんじゃよ!!早く捨ててくれなのじゃ!」

 

 私はその本を、捨てるふりをして『破滅杖(カタストロフィ)』等が入っている亜空間に入れた。その様子を見た白黒は、うむ、と言ってた事から、どうやらバレてない様子。

 

 うん、これで見放題。

 私は心のなかで細く笑った。

 

 ……よし。時間もいい感じだし、さっさと行かないと。

 

「じゃあその話終わりで。さっさと隣国のヴォルメ王国行くよ」

「……シュリアよ。一応聞くが、その旅の目的は逃亡する為なのか?」

 

 白黒は何を疑問に思ったのか、そう聞いてきた。

 

「………まぁそれもあるけど、探してる人がいるから、逃亡をしつつ、探すのが目的……みたいな」

 

 もちろんスノの事である。

 スノとの契約はまだ続いている。まだ不安定だけど、居るってことは分かっていた。

 

「なるほどの。ま、我はお主に着いていくだけじゃが」

「……行くよ。まずは隣国の首都目指す」

 

 移動手段は徒歩。転移という方法もあるが、行ったことのない場所には行けない為、徒歩になる。

 そうして私達は、隣国の方角へと向かって歩き始めた。

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