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元王女様は、世界を滅亡へと陥れたい。  作者: 九漆
第五章 南ニトロア編
19/26

17.現在、情報集いしサーベント王国にて。


 パラン王国を去り、サーベント王国に向けて移動を始め、気がつけば二ヶ月もたっていた。

 移動の途中でブラウ帝国を通ったが、以前来た時よりも荒れていて、ラン王国やパラン王国と同じように絶望的な景色だった。

 その時の長身の表情がとても悲しそうで、ちょっぴり悪いことをしたような気分になったのはここだけの話。

 

 そんなこんなで馬車を使ったり野宿したりして二ヶ月がたった頃、ようやくサーベント王国にたどり着いた。

 季節は夏。海を楽しむには絶好の季節だ。

 サーベント王国は、ラン王国やパラン王国みたいに国が崩壊はしておらず、ちゃんと国は安定していた。

 国の中へ入り、一先ずお金がないとのことで、私たちはギルドへ向かった。

 

 「なぁ、ちょっと回りの視線、気にならへんか?」

 

 長身は国民に見られていることが気になったのか、コソコソと小さめの声で私にそう聞いてきた。

 

 「ここ情報国家だけど」

 

 情報国家の国民が、他所から来た旅人のことを気にならないはずがない。

 探られるのは、この国に入国するならば必然と言えることだろう。

 

 「それはそうやけど……なんかこそばゆいっちゅうかなー」

 

 とにかく見られているのが嫌らしい。

 

 「気にしない」

 「……善処するわ」

 

 そう話しているうちに目的地であるギルドに着き、私たちは中へ入り受付に並ぶ。

 そこそこ行列になっており、時間がかかりそうだなんて思っていると、大人しそうな見た目の青年に声をかけられた。

 

 「よォ、あんたら見ねェ顔だなァ?」

 

 訂正。どうやら口が悪いただのチンピラらしい。

 

 「さっきここに来たからな。俺ら旅してんねん」

 「……へェ?ンじゃお前らは旅人ってわけか。こっちのチビはテメェのガキか?ガキ連れての旅は大変そうだなァ」

 「……ガキじゃない」


 聞き捨てならない言葉が聞こえた。

 

 「ア"?どっからどうみてもガキだろ」

 「ガキじゃないし長身のガキでもない」

 「長身?このヒョロガリ男の事かァ?まぁ、ンな事はどうだっていいンだよ。お前ら国外から来たンだろ?ちょっとテメェらに聞きてェ事があってなァ。時間、いいか?」

 

 チンピラ男は私達に聞きたいことがあるからと、列から外れるように促す。

 私としてはいち早くお金が欲しいので列に並んで居たい。だが、条件次第じゃ外れてあげてもいいかもしれない。

 

 「一時間金貨20枚」

 「ちょ、お前、それは高すぎなんちゃうか?」

 「そンなのでいいのかァ?安いもんだぜェ」

 「え!?」

 

 いいのか。

 正直「無理」とか言うのかと思ってたけど、この男は案外金持ちなのかもしれない。

 

 「じゃあ向こうのテーブルで」

 

 私はそう言って、列から外れて少し離れたところのテーブルのイスに座る。長身は隣に、チンピラ男は前に座った。

 

 「ンじゃ先に金は渡しとくぜ」

 

 チンピラ男はそう言って袋から金貨を20枚分数えて取りだし、私達に渡した。

 あの袋、見た感じかなり入ってそう。チンピラなわりに腕もたつのか。意外。

 

 「で、聞きたいことっちゅうのは?」

 「あァ、『ホリエン』って知ってるか?」

 「『ホリエン』……?初耳や」

 

 『ホリエン』……正直、私も今日始めて聞いた。

 

 「私も知らない」

 「ア"?マジかよ。聞いて損したじゃねェか。ンじゃあアレは?『リヴァロ』くらい聞きかじった程度に聞いたことあるんじゃねェの?」

 「あ、そんなら俺らこの前、『リヴァロ』No.3のアールツト、とか言うヤツに遭遇したで!」

 

 長身がそういうと、チンピラ男は目を大きく開いて食いついてきた。

 

 「本当か!?詳しく教えてくれ」

 「ええよ。あれはなぁ──」

 

 長身は、ラン王国に来た時からの話から、パラン王国で起こった出来事までの話をチンピラ男に語った。

 所々盛っている部分もあったように感じたけど、まぁ些細なことである。

 

 「──で、最後にアールツトは、国王様のスキルで死んでもうたんや。俺が知ってる事はこれくらいやで」

 「ヘェ、死ンだと。そっちの嬢ちゃんは他にも知ってることあるかァ?」

 

 私は迷った。

 ここでルンのことを話すべきかと。

 

 ルンも一応『リヴァロ』の一人だ。

 正体を隠しているようだし、ここで話さない方がルンの為にもなる。

 がしかし、どうにも私にはこのチンピラ男にルンの詳細を伝えた方が面白くなるという勘が働いている。

 うん、言うしかない。

 

 「ヴォルメ王国でね、『リヴァロ』のNo.6のティミッドって子に会った」

 「…………ほォう?」

 「え、お前俺と会う前にそんな子と会ってたん!?」

 「ん。ティミッドはコードネームっぽくって、多分、本当の名前は『ルン』」

 「……何でンな事が言えンだ?」

 

 そうして私はルンとの出会いを簡単に語った。 

 語っていた時、チンピラ男は腕を組んで私をジロジロと見回した後、何故かため息をついていたのが少し疑問。

 

 「なるほどなァ。そういえばテメェら名前は何て言うンだ?」

 「俺はシュンや」

 「リネア」

 「………シュンにリネアか。オレはノルア。二人とも情報提供感謝するぜ。ついでに『ホリエン』の情報を教えてやる」

 

 それは有り難い。

 私としても情報はたくさん知っている方がいいし、簡単に手に入れることが難しいモノだから、得られるだけ得ておくのがお得なのである。

 

 「『ホリエン』は『リヴァロ』の敵対組織だ。最近エルレウム教国の教皇だかなんだかが設立したらしいぜェ。何でも入会は大歓迎なンだとよ。それじゃあな」

 「え、まだ一時間もたってへんで!?」

 「ア?ンなこと気にすんなよ。ま、強いて言うならリネアと戦って見てェが、今日は用があるからな。またな」

 

 黒髪赤目のチンピラ男―――ノルアは、そう言って席を立ってギルドを出た。

 何で私と戦いたいのかがかなり疑問すぎる。面倒なことにはならないでほしい。切実に。


 「ホンマに行ってもうたな……」

 「情報収集ってより、聞き込みみたいな感じだったね」

 

 あのノルアとか言うチンピラ男、正直怪しすぎるのでギルドを去る前にチラッと“見た”。

 すると、これまた面白いことになりそうな肩書きを持っていることを知った。

 そう言うことね。

 

 そう得体の知れない奴の正体に納得した、その時だった。

 

 「はぁ!?ふざけんじゃないわよ!!」

 

 私達が居たテーブルから少し離れた受け付けのカウンターの前で、荒ぶる女性の叫び声が聞こえた。

 

 「どうして見つからないわけ!?」

 「どうしてもなにも、手がかりが何も無いというか……」

 「ここは世界一情報が集まりやすい国だと聞いたわ!それなのになんで!」

 「サクラさん、後ろが控えておりますので、用がなければ……」

 「あーもうハイハイ!!帰ればいいんでしょ!?分かったわよ!」

 

 そう言って、サクラと呼ばれた女性は、イラついた様子でギルドの外へ出ていった。

 

 『何を揉めておったのじゃ?』

 『私には関係ない』

 

 列も丁度空いてきたので、私は長身にそろそろ並ぼうと声をかけようとしたが、何故か長身はギルドの扉を見ていた。

 

 「……リネア、あの子んこと気にならへん?」

 「…は?」

 

 いつもの糸目が薄く見開かれて扉を見て言うから、一瞬何事かと思った。

 どうでもよすぎる。

 

 「俺、ちょっと話してくるわ」

 「えぇ……」

 「人探ししてるようやったし、なんか辛そうやん。話聞くだけでも心が安らぐと思うねん」

 

 「せやから行ってくるわ!金のことは任せたで!」等と人任せな事を言ってさっさとギルドを出ていった。

 酷すぎる。

 人助けって言う名目で金稼ぎ任されるのはおかしいと思う。


 「……うざぁ」

 

 おいてけぼりにされた私は諦めて受け付けの最後尾に並ぶ。

 嫌がらせに稼いだ金の九割貰ってしまおう。うん、それがいい。

 

 もちろん長身が行った後に決めたことなので、長身が知るはずもない。

 

 

 数分後。

 

 

 並んでいれば順当に私の番に回ってきて、適当に持っていた物を換金した。

 

 実を言うと、ヴォルメ王国までは手持ちに金貨一千枚以上持っていたのだ。

 しかし、それが旅費やら食事代やら調子のって贅沢しすぎたせいで、今ではさっき換金したのを合わせて金貨百枚にまで減っている。まぁ、白金貨が一枚残ってはいるが、あれはいざという時のモノなのであまり使いたくはない。

 そういうわけで、今の所持金は約金貨百枚程度なのである。

 金貨百枚でも充分に生活はしていけるが、何かあった時のためにも貯金しておいた方が絶対いい。

 

 そういうわけで、依頼板を眺めていた………が、何故か全ての依頼がソロで受け付けないもので、今私が受けられるものが一つもなかった。


 ふざけてる。

 最低でも二人以上いないと受注すら受け付けない依頼ばかりで、長身のいない今の私は依頼を受けることすらできない。

 

 「……どうしよう」

 「もしかして、お困りです?」

 

 そう呟くと、丁度隣で私と同じように依頼板を見ていた人が声をかけてきた。

 

 「実は僕も依頼を受けたいのですが、如何せん今日は一人でして」

 

 その人は一枚の依頼の紙を指差す。

 

 「どうです?僕と一緒にこの悪魔討伐の依頼、受けません?」

 

 紙の内容は、森に表れた悪魔四体の討伐。

 報酬金貨四十枚。難易度はS。

 

 報酬額は少ない気もするが、狩った悪魔をバラして売ればおそらく金貨六十枚はいく……

 うん、悪くない。

 

 「いいよ」

 「えっ、本当です?」

 「本当」

 「わぁ、嬉しいです。僕はモロと言います。ランクはAですので、あまり強くはないですが、足を引っ張らない程度に頑張ります。よろしくです」

 「リネア。ランクはS。よろしく」

 

 そう言って私は手を出し、モロと握手をした。

 

 「え、Sランク………です?えっ、え?えぇ??」

 「……人を見た目で判断しちゃいけないよ」

 

 どうして背が低いだけでこんなに下に見られるのだろうか。

 

 ◆

 

 一方サクラと呼ばれた女性を追いかけたシュンは、なんとかその女性を引き留めることに成功し、近くにある椅子に座って話を聞くことになった。

 

 「えっと、とりあえず自己紹介から始めよか。俺はシュン・トミダ。人探しをしとる異世界人や」

 「人探し……そう、貴方もなの……ですね。アタシはサクラ、……サクラです。サーベント王国は世界一情報が集まる国だと聞いて、ここに来たんです。もしかして貴方も?」

 

 一応初対面だからか、先程ギルドの受付で話していたような口調や雰囲気ではなかったことにシュンは違和感を抱いたが、気にしないようにした。

 

 「あぁいや、ここにはリネアが行きたいっちゅうから来ただけやねん。って、俺のことはどうでもええ。俺はアンタのことが知りたいんや。不安そうな顔しとったし、ちょっとでも話せれば気持ち的にも楽になるはずやと思うんや」

 

 シュンのその言葉を聞いたサクラは、少し目を彷徨かせ、ぐっと覚悟を決めたように口を開いた。

 

 曰く、サクラには双子の兄がおり、ある日突然その兄がサクラの前から姿を消した。不安に思ったサクラはその兄を探すためにこの国へ情報収集に来たらしい。

 

 「小さい頃から二人で支え合ってきたから、どこか行っちゃうって思うと不安なの……」

 「な、なるほど……」

 

 (なかなか重い過去がありそうな雰囲気やな)

 

 シュンは心の中ではそんな事を思いつつ、サクラを元気付ける言葉を考えていた。

 

 「俺もな、弟子がおんねん」

 

 悩んだ末に、シュンは自分の過去を話すことにした。

 

 「捨てられてたところを拾って、そのまま育てとって気づいたら弟子にしてほしいって言われてな。俺も嬉しかったから許可してなぁ」


 あの頃は可愛かったと、シュンは懐かしむように過去を振り返る。

 

 「それから十年経って、弟子も成長して、俺の生活も安定して、まぁ、いろいろあった。で俺、弟子と一緒に東帝国に住み始める前は旅をしとってな。弟子も成長したし、そろそろ再開したいと思って、弟子に内緒でこっそり家を出たんや」

 「っ!」

 「ほんである日、いろいろまわって弟子の様子でも見に行こうと思ってな。家に帰ったんや。そしたらな、『馬鹿師匠』って書いとった置き手紙残して出ていってしもた。今は俺が探してる状況なんや」

 

 シュンが話終えても、サクラの表情はあまり明るくならなかった。

 

 「……まだ悩みは晴れんか?」

 「……」

 「良かったら、俺らと旅せぇへん?」

 「えっ?」

 「一緒に旅すれば、アンタのお兄さんも見つかるかもしれへんし」

 「でもアタシ、弱い……ですよ?」

 「弱くてもええ。まぁ、この国にいる間だけでもええからとりあえず、俺らの仲間になってくれるだけでもええし、お試しと思って、な?どうや?」

 「で、でも、迷惑なんじゃ」

 「というか入ってくれへん?俺、リネアと一緒に居ると、ロリコンって思われてそうで気にしてんねん」

 「えっ、え?」

 「頼むわ。なぁ、ええよな?な?な??」

 「し、しつこいわよ!わ、わかった、なる。なるわよ!」

 

 シュンの熱烈な言葉に圧倒され、結局サクラはシュンの旅仲間になることにした。

 

 ◆

 

 受付を済ませて準備を終え、早速依頼された森へ悪魔討伐に向けて出発した。

 サーベント王国内の森だから、そこまで苦労することなく辿り着くことができた。

 徒歩三十分くらいかな。

 

 そこから私が悪魔の位置をざっと探っていると、そう遠くない場所で誰かが戦っているのが分かった。

 何時もなら誰かが戦ってるー、程度に流していたところだが、今回ばかりは気になってしょうがない奴が戦っている。これは見ないわけにはいかない。

 

 「向こう探してくる」

 「じゃあ僕は前の方を探します」

 

 モロにそう伝えて私は例の戦っているところに向かう。


 そこには──さっき見えた通りに、冒険者ギルドで情報提供を求められたノルアがいた。

 

 ノルアはどこかへ向かっているようで、さっき戦っていたのは大方襲われて返り討ちにされたからだろうか。

 

 私は気づかれないように『隠蔽』のスキルを使って気配を消す。

 ノルアは暫く歩いたあと、突然歩みを止めた。

 そこはこれといって特徴がある場所でもなく、なんなら何もない。だけど私には“見えている”。恐らくノルアもそれがわかっていた。


 「オイ、さっさと開けろ」

 

 ノルアは、その回りに居なければ聞こえないくらいの声量でそう言った。

 すると、魔術で隠されていた小屋が表れた。

 

 「ったく。面倒なことしやがってよォ」

 

 ノルアはそう愚痴を溢しながらその中へ入っていった。

 

 ──アレは、かなり精度の高い魔術だった。“見た”だけだけどよくわかる。

 

 直感的にそう感じた。

 

 侵入していきたいところだけど、ここは分身を入れるだけで妥協しよう。

 依頼を放棄するわけにはいかいないし。

 

 そう思い、私は即席で分身を作り、気配を消す魔術を施して侵入させようとした。その時だった。

 

 「ミュイ!」

 

 パラン王国で拾い、ずっと鞄の中に忍ばせておいた真っ白なミーフが、突然鞄から顔を出した。

 ミーフは何時もの愛らしい瞳をしておらず、いつになくどこかやる気満々な様子だった。

 まるで今私が分身にしようとしたことを自分にやらせてほしい、そう言っているように感じた。

 

 「……やる?出来るの?」

 「ミュー、ミュイ!」

 

 ミーフのやる気もあるようだし、中の様子を見るのは別に分身じゃなくても誰かの記憶を見ればいいし、折角ならやらせてみよう。

 そう思い、ミーフに気配を消す魔術を掛けた。

 

 「ちょ、リネア!?我の可愛い可愛いミーフになんてことさせようとしとるのじゃ!」

 「簡単なお仕事だよ」

 

 異論はない。本人がやりたいからやらせるだけである。

 

 「うぅあー、心配じゃああー!よし、リネア!我もついていくからミーフにかけておる魔術を我にもかけてくれ!」

 「分かった」

 

 私は不安そうな表情を浮かべる白黒にも、気配を消す魔術を掛ける。

 魔術をかけ終えると、白黒はミーフを抱え、「行ってくるのじゃ」と言って、ノルアの後を着いていった。

 

 ノルアとそれを追った白黒とミーフが入ると、その家はすぅーっと何もなかったかのように消えていく。

 やっぱりすごいな。

 改めてあの魔術のすごさを再認識させられた気がする。

 

 白黒達を見送った後、私は依頼達成のため『転移』を使ってモロの元へ戻った。

 モロは丁度悪魔の近くまで探索していたようで、非常に都合が良かった。

 

 「うわっ!そっ、そんなことまで出来るんです?」

 「シー。居るよ」

 「!!」

 

 私はそう言って悪魔が居る場所を指すと、モロはすぐに自分の口を抑えて黙った。

 

 悪魔は依頼内容通り四体いた。

 珍しいことに全員理性があるようで、そこに座って談笑していた。

 

 まずは様子見。

 私達は身を潜め、悪魔達の会話の内容に耳を傾ける。

 

 「…………ハハハ!にしても全員現世にこれて良かったぜ!」

 「ほんそれ!」

 「ハハハ!正直俺だけかもなって思ってたぜ!」

 「いやそこはオレだっての」

 「ハ?俺だし」

 「ハハハ!そんなこたぁどうだっていいだろ。現に全員来れたわけだしな。というかおれぁ、全員で現世に来れただけ嬉しかったんだぜ?」

 「ほんそれ!」

 「だけどよ、現世に来たからにしちゃあ、もの足りねぇ気がしねぇか?」

 「ほんそれ!」

 「……確かに、負の感情(エネルギー)も足りねぇもんな」

 「つーわけでお前ら………あそこに居る人間、早速狩るとすっか!!」

 

 リーダーらしき悪魔は、そう声を昂らせて私たちの居場所を指差した。

 気づかれていたようである。

 

 「リネアさん、どうします?」

 

 一先ず飛び出そうとする意思はないようで安心である。

 

 「モロは何が出来る?」

 「僕は基本的に短剣で戦います。その他にもいろいろと出来ますが、とにかく短剣を扱うことだけは一流と言っても良いくらい自信はあります」

 

 まぁ、『短剣(Lv.12)』なんてスキルを持ってるくらいだからそうだろうとは思ったけど。

 

 スキルには、レベルを上げることの出来るものがある。

 レベルのあるスキルはよく見る量産型だが、Lv.12なんて始めてみた。大抵はLv.5とかで止まってる人ばっかりだし、それだけ鍛えているという証拠である。

 自信があるなら任せておいてもいいかもしれない。

 

 「じゃあモロは左側の二体ね」

 「え?」

 「私は右側の二体をやる」

 「え、ちょ、そこは一緒に戦うのでは──」

 「よろしく」

 

 そう言って私は破滅杖(カタストロフィ)を取りだし、剣に変えて悪魔に向かって走り出す。

 

 悪魔の一体がなにやらブツブツと呟くと、私の回りに風が巻き起こり、砂が混じりながら嵐になった。

 私は破滅杖(カタストロフィ)でそれを斬る。破滅杖(カタストロフィ)の効果は破壊と気絶。これに触れれば魔術だって壊れるのだ。

 

 というか魔術で詠唱してしてる奴久々に見たかもしれない。

 

 「何っ!?俺の魔術を斬ったていうのか!?」

 

 驚いて動かないところを私は躊躇なく斬る。

 一斬りするだけで、そいつはボロボロと体が崩れ落ちてきた。丁度横に呆然としていた悪魔がいたのでそいつも斬る。油断してくれているようで非常にありがたい。

 これで私の分は終了である。

 

 モロの方を見てみると、何とか一体悪魔を倒し終えたところのようで、今は二体目と戦闘中である。

 

 悪魔は魔術を次々と放ち、それをモロは素早く避け、少しづつ悪魔に近づきダメージを与えている。

 体を柔軟に動かし、攻撃は一切当たらない。

 特に魔術で体を強化しているわけでもなく、ただ純粋な身体能力に正直驚いた。

 Aランクとか言ってたけど嘘っぽい気がする。

 そう確信した。

 

 時間がたつにつれダメージも深くなり、悪魔は倒れた。すかさずモロは止めを刺す。

 

 「うん、お見事」

 「!リネアさん、もう終わってたんですね……!さ、流石です」

 

 モロは息を切らしながらそう言った。

 私はモロの倒した悪魔も丁寧にバラして売れそうな部分だけ袋に詰める。

 

 「じゃ、帰ろうか」

 「はい、そうしましょう」

 

 私たちは真っ直ぐ冒険者ギルドへ帰ることにした。

 

 

 

 「ところで、あのびゅんって移動した魔術は使わないんです?」

 「一日一回」

 「えぇー?」

 

 記憶力のいい奴め。

 

 ◆

 

 一方ノルアの後を付ける二人は、怪しげな雰囲気のある部屋にいた三人の会話をこっそりと聞いていた。

 

 「よォ」

 「何しに来たんや」

 「寄り道だ」

 「はよ自分の仕事しぃや。お前だけ余裕ぶっとるのは知っとるで?」

 「うるせェ魔術馬鹿」

 

 そこにはノルアと、シュンと同じ訛りを使う若い女と、二人の様子を黙って聞く男がいた。

 

 「で?用件あるんやろ?」

 「ン?オレはアイツの様子見に来ただけだぜェ?」

 

 そう言ってノルアは、黙って様子を見ていた男を指した。

 

 「はぁ?俺に…?」

 「それだけか?プラムくんはウチが面倒見たるから、ノルくんはさっさとどっか行ってくれへん?」

 「ア"?なんだァ、オレが拾った犬の成長を見に来てわりィか」

 「……はぁ。……ま、ええわ。お前口軽いとこあるから気ぃつけてもらえればええ」

 「っは。言われるまでもねェよ」

 

 そんな会話をする様子を、スジアンとミーフは、怪しみながら見ていた。

 

 (なんなのじゃコヤツら。一体何者なのじゃ?リネアは何の目的で探ろうとしたのじゃ?)

 

 リネアが好きそうな連中に思えないスジアンは、この三人に危害の無さそうな人間という認識に改める。

 

 「にしてもここは客人に茶も出せねェのかァ?礼儀がなってねェなァ」

 「やかましいねん。何が客や。お前はただ勝手に入ってきた侵入者やろ?」

 「酷い言い様じゃねェか」

 「……流石に言い過ぎだと思うが」

 「ホラ、プラムもそう言ってるぜェ?言い過ぎだぞミュネラ」

 「いいや、連絡も無しに来るノルアもおかしい。警戒心無さすぎだろ。それに仕事をサボるお前もお前だ。慢心してるといつか痛い目見るぞ?」

 「……」

 「ふふふ。流石プラムくんやなぁ」

 

 と、暫く彼らの雑談が続いた。

 

 「でもまァ、流石に─────の──のはダメか」

 「当たり前だ」

 「今更何言うてんねん!」

 

 ふとノルアが言った一言に、とんでもない爆弾発言じゃー!!とスジアンは、声に出したい気持ちを抑えて心のなかで叫んだ。

 

 (そりゃリネアが気になるわけじゃーー!!)

 

 ノルアのその一言だけでも、十分にリネアが興味を持つ理由を理解したのか、スジアンは三人を危険な奴らと認識を改め、警戒心を強めた。

 

 「じゃ、オレは北に行ってくるぜ。お前らのショーを見た後にな!」

 「……はぁ?」

 「はよ行かんか」

 「これでもオレは躾を頼まれてる立場だぜェ?文句は言わせねェよ。ま、安心しろ。─────くらい、オレにかかれば、容易いことだ」

 

 その発言は、スジアンをヒヤッとさせるには十分すぎた。

 

 ちなみに、会話の内容を理解できていなかったミーフは、ぎゅっと自分を抱き締める力が強くなったことを不思議に思っていた。

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