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元王女様は、世界を滅亡へと陥れたい。  作者: 九漆
第四章 西ニトロア編
18/26

閑話.全てはたった一人の、家族のため。


 どこにだって、裏の仕事が存在する。


 殺しや裏取引、諜報、闇市など、裏に存在する仕事は様々だが、どれも表のように安全な仕事ではない。命を狙われることだってよくあることだ。

 俺も裏で働く者の一人。

 

 俺の名はプラム。

 父は不明。母は四歳になった頃に亡くなり、双子の妹のサクラと貧しいながらも今も何とか二人で生き延びていた。

 そんな俺は妹のサクラに良いものを食べさせようと思い、仕事を探していると、たまたま出会ったおじさんに子供の俺でも働かせてくれる仕事を紹介してもらった。

 

 それは東帝国の暗部での仕事で、最初は掃除等を任されていたが、間を見て専門の人に訓練をつけてもらった。そして今では実力を認められ、様々な仕事を任されるようになった。

 主な仕事は暗殺だが、時々諜報任務を伝えられることもある。また、裏の仕事は忙しく、休みが不定期な為、よくサクラに迷惑をかけていた。

 金もある程度普通に生きていける程稼ぐ事はできたので、サクラも今は良い者を食べることができている。

 ただ、俺の収入だけでは将来良い暮らしが出来るとは限らないので、サクラも働くことになった。

 

 サクラは俺と違って表社会で仕事を始めた。

 近所にある料理屋で働いていて、主に接客係として日々張り切っている。サクラの容姿は良い方なので、それを生かしているようだ。時々店長にサクラの様子を聞いてみると、よく働いてくれると、ニコニコしながらそう言っていた。

 

 そう言うわけで俺達が16になる頃には、安定した生活が送れるようになった。

 

 今年で俺達は19になる。

 安定した生活ができるようになって約三年目だ。

 

 俺の仕事もこのくらい安定してくれれば良いのだが、生憎と裏の仕事は安定という言葉を知らない。

 

 今日は久しぶりの長期任務を任されるようで、上司に呼び出された。

 

 「よく来た、柘榴(ザクロ)

 

 柘榴というのは俺のコードネームである。

 

 「知っての通り、今日は君に長期任務を行ってもらおうと思ってな。柘榴、『リヴァロ』は知っているか?」

 「……いえ」

 「まだ一般には出回っていない情報だからな。知らなくても可笑しくはない。……先日、ヴォルメ王国がモンスターテンペストにより滅亡した事は知っているな?」

 「はい」

 「それを引き起こした犯人がいるそうだ。それが『リヴァロ』のNo.6、ティミッドと言う者らしい」

 

 その言葉を聞いて、俺は驚いた。

 ティミッドと言う人物がどのような者かは分からないが、たった一人でモンスターテンペストを引き起こすなど、俺には考えられない。

 

 「一国を滅ぼせる程の力を持つ『リヴァロ』と言う組織が危険な事は、君にも分かったな?もしかしたらメンバーの一人が我が国東帝国に来るかもしれない」

 

 いや、待て。その流れは非常によくない。

 俺は身の危険を感じた。

 

 「そう言うわけで、君に『リヴァロ』の調査を任せる。できれば組織に潜入して戦力を知りたいところだが、まぁ出来る範囲で構わない。かなり時間がかかるかもしれないが、よろしく頼む」

 

 やはりそう来たか。

 正直そんな危険な所に自ら進んで行きたくない。

 

 だが──

 

 「そんな危険な任務を言うくらいなんです。給料は勿論上がりますよね?」

 「あぁ、勿論。いつもの倍は出すよ」

 

 『いつもの倍』!?

 それは普段以上に張り切らなければ。

 

 「了解しました。では自分は任務の準備がありますので、失礼します」

 

 そう言って、俺は早足で家に帰った。

 家には丁度仕事が終わったのか、サクラが本を読んでいた。

 

 「あ、お帰りプラム。今日は早いのね」

 「あぁ、ただいま。サクラ、すまないが、暫く家に帰れなさそうだ」

 「はぁ?暫くって何時までよ?」

 「………一週間くらいか?」

 「そんなに!?ちょっと、今回は一体何の仕事でそんなに家を離れるような事が起こるの!?」

 

 妹、サクラには、俺が裏の仕事をしている事を知らない。

 大体いつもは、冒険者紛いの事をしていると誤魔化している。

 そうやって誤魔化せば、怪我をして帰ってきても魔物を討伐する際に怪我を負ったと言う方が自然になる。

 

 「……北部の方に居るデュラハン討伐だ」

 「はぁ!?なんで北部まで行くのよ!?馬鹿じゃないの!?」

 

 ちなみにここは東帝国の南側だ。

 東帝国は広いうえに、ここからだと逆方向でそれなりに遠い。

 

 「北部の人員が足りないらしい。それで俺が行く事になった」

 「っ、一週間!一週間たっても帰って来なかったら、アタシ口聞かないから!」

 「どうせ一日もたたずに話しかけて来るのはお前の方だろ?」

 「ぅ、うっさい!」

 

 そう言ってサクラは障子を勢いよく閉め、自室へと戻っていった……かと思いきや、また勢いよく障子を開け、

 

 「きょ、今日の夕食、台所に置いといたから!勝手に食べておきなさいよね!」

 

 と言って、拗ねたようにこの部屋から離れていった。

 

 何時からだろうか。サクラがあんな風になってしまったのは。

 昔は俺によく引っ付き纏い、駄々を捏ねる事が多かった。しかし気が付いた頃にはあの時のサクラは居なくなり、今では俺に突っかかって来たり、急に優しくなったりとなかなか忙しい奴だ。

 

 今回ばかりは一週間以上かかりそうで、妹には非常に申し訳なく思う。

 


 ───翌日。

 

 俺はサクラが寝ている間に任務の支度を終えると、伝言を残して家を出た。起きていると非常に面倒なので、これが一番最適だ。

 

 ひとまず俺は、暗部の方で受け取った資料にある、『リヴァロ』の拠点予想場所に向かう事にした。

 

 ◇

 

 ワールヲ大陸からニトロア大陸に移り、北へ点々とうろつくこと一週間。

 現在俺は、何故か黒髪赤目の男と戦っている。


 どうしてこうなったのか、正直俺もよく分からない。偶々開けた場所でこの男に道を訪ねていたら、突然大剣を手に持ち襲ってきたのだ。

 

 男は大剣を使って俺を切り殺そうとするので、訳もわからず咄嗟にその攻撃を避けた。

 振り替えって自分が元居た場所を見ると、地面が少し割れかかっていた。

 強い。そう確信した。

 

 「へェ。やるじゃねェか」

 

 そう挑発染みた言葉を口にし、ニヤリと不気味な笑みを浮かべてこちらをじっと見る。

 少しの間休憩していると、男はまた剣を降り下ろし、俺を殺しにかかってくる。

 

 「っ、!」

 

 俺はその攻撃を本能で避ける。

 その隙に、地面の影の中に入り込み、その男から逃げる。

 

 「!……へェ」

 

 しかし俺の逃げ場はまるで意味をなしていないようで、どういうわけか男が大剣を地面に勢いよく突き刺すと、一瞬で地上に戻された。

 

 その一瞬の間に男に隙が生まれ、懐からナイフを取りだし首を狙う。だがしかし、後ちょっとのところで男に刃物をとられ、逆に男がナイフを俺の首にあてられてしまった。

 

 「……お前、結構やるな?」

 「いきなり何だ。何がしたい」

 「ちょっとイライラしててなァ……まァ、気晴らしだ」

 「は?」

 

 そんな下らない理由で俺は死にかけてたのか。

 ふざけないでほしい。

 

 「ハッ!殺してやろうかと思ったが、気ィ変わったぜ。ちょっとついてこい」

 「嫌だと言ったら?」

 

 男は俺の言葉を聞いて、俺から奪ったナイフを俺に向かって投げつけ、ピタリと足を止める。

 

 「ンなこと聞かなくたって分かるだろォ?」

 

 そして、目付きを鋭くさせてそう言い、後ろを振り向いて歩き始めた。

 

 脅しか。何をされるか分からないが、殺されるのは困るし、付いていくか。

 

 俺は男の後に付いていった。

 

 暫く歩いていると、気を張っていないと男を見失ってしまうほどの、道に迷いやすい森の中へ入っていた。

 ドロフの森……だろうか。

 俺は、今どこに居るのかを考えながら男の後を付いていく。

 

 「……この辺でいいか。オイ、ちょっとこっち来い」

 

 俺は男の言う通りに、男の元へと近寄る。

 

 俺が近くに居る事を確認すると、男は懐の中から術式が書かれたメモを取りだし、魔力でそれを見ながら描いていく。

 そして、それが完成すると、辺りが白く光り、俺は咄嗟に目を瞑る。不思議と何故か、体がふわふわと浮いていくような感覚になる。浮いていくような感覚がなくなってきたので、俺はゆっくりと目を開けた。

 

 そこは何処かの家の中だった。

 俺達が居た場所は、先程といた森ではなくなっていたのだ。

 

 辺りを見回せば、目の前に先程まで居なかった黒髪黒目の男と、俺に付いてこいと脅した男がいた。

 

 「おい、何故帰ってくる。それに、そっちのはなんだ」

 「つえーから拾った」

 「拾うな捨ててこい。と言うか何故連れてきた」

 「見込みがあったからな」

 「……要は仲間に加えろと」

 「そう言うことだ」

 

 黒髪黒目の男がそう言うと、脅してきた男は満足そうに腕を組んで、首を縦に振る。

 仲間に加える?冗談じゃない。どこぞの変な組織に勝手に仲間に加えられえたまるか。

 

 「おい、待て。俺は脅されてお前に付いてきただけだ。もっと詳しく、お前が何なのか、ここが何処なのか教えろ」

 「お前、自己紹介もしていないのか?」

 「あー……そういや何も言ってねェな」

 「……」

 

 黒髪黒目の男は、脅してきた男をジトリと呆れたような目で見る。

 

 「悪ィな。俺はアヴィド。『リヴァロ』のNo.7、アヴィドだ」

 

 俺はそれを聞いて、一瞬それが幻聴かと思ってしまった。

 任務の為に探していた『リヴァロ』が、こうもあっさりと見つかってしまうとは行幸だ。

 

 「『リヴァロ』?なんだそれは」

 

 俺は『リヴァロ』がなんなのか分からないフリをした。

 

 「ふむ。我々もまだまだなようだな。知名度はそれほど上がってないようだ」

 「ッハ!そりゃそうだろ。なんせビビり女しか動いてねェからな」

 「違いない」

 

 そう言って黒髪黒目の男は、俺の顔をじっと見て近づいてきた。

 

 「コイツがすまなかったな。戸惑っただろう」

 「あぁ。突然襲いかかってきて驚いた」

 「お陰で良い拾いモンしただろォ?」

 「……まぁな。さて、入るも何も、ここに来た時点で死ぬか入るかの選択肢しかないが、一応我らの目的を話そうか」

 

 あぁ、ここからが本番だ。

 とにかく、組織に入ることは出来た。本当に偶然でしか無かったが、こういった形でも入ってしまえば此方のものだ。

 ……さて。情報を上手く探りだし、尻尾を出さないように注意せねば。

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