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人類とエルフの亀裂

「振り落とされぬようしっかり捕まっておるのだぞ?」

王女を背に乗せ、景色を楽しみながら大空を羽ばたくエンシェントドラゴン。その王女も雄大なる空の旅を堪能しているようだ。


「テト様!見てください!大きな木です!」


「ぬ?大きな木だと?」


セイヘムが指した方向を見てみると確かに一際大きい大樹が森から顔を出していた。


「フン、どうやら魔力を帯びているようだ、行ってみるとするか」


寄り道も旅行の醍醐味だろう。進路を少し左にずらし、その大樹に向かって飛び始めた。


「近くで見るとさらに大きいですね!」


周囲に人間の気配は無い、隠蔽を解き地に降り立っても問題ないだろう。そう判断しテトは大木の近くに降り立った。木々に止まっていた鳥たちが一斉に飛び去っていくのを見るに着地の衝撃は地震と勘違いする程であっただろう。


「フン、どうやらこの木はエルフの里に繋がっているようだ。」


「エルフですか?確かエルフと言えば人類を目の仇にしている暗殺種族、ですよね?」


「人間から見ればその認識で差異はない。だが、歴史を辿ってみればエルフが人類を敵死する理由も見えてくる。我はエルフが、人類を殺害し続けるのは当然の権利として思えてしまう。」


「一体、何があったのですか?」


テトは過去の話をし始めた。


「あれは数千年前の事だ。」


──────────

「エルフは人類との共存を望んでいた。エルフからしてみれば()()()()()している種族が人類しか無かったからだ。人類にも魔物にも分類されない第三陣営であるエルフ族には、災厄、つまり我ら竜種に対抗する手段を持ち合わせていなかったのだ。しかし人類は違った。様々な魔法体型を確立しいつしか肩を並べていたはずのエルフ族を置き去るように力をつけて行った。エルフ族はそんな人類に目をつけ交渉を申し出たのだ。」


「交渉ですか?あれほど警戒心の強いエルフがなぜそんな危ない橋を?」


「それは先程も言った通りだ、力が足りなかったからだ。我ら竜種に対抗するには人類の力が必要だったのだ。エルフ族の申し出を受け人類とエルフは交渉に臨んだはずであった。エルフ側は最大限の敬意の表しとして当時のエルフ族の長であった〝ベイリディル 〟とその配下が交渉の席に座り、人類は当時の南の王国(シャルリック)の王〝 シャルリック·フォン·バナディオ〟とその王国の騎士や重鎮が参列したのだ。」


「エルフ族に比べて遥かに多いですね、果たして交渉になるのでしょうか、」


セイヘムも王女だ、政治関連は幼い頃から知見を得ているだろう。


「元々エルフに不利な交渉ではあったのだが、その時から異様な雰囲気は感じていたのだろう、いつでも逃げ出せるよう体制を()()()()()()()()。」


『いたそうだ?』


「案の定交渉は決裂.....なんて生易しい言葉で済ませて良い事ではなかった、ベイリディルの配下は背中から刺されベイリディルが生け捕りにあった。そこから人類とエルフ族の間に埋まることのない亀裂が生まれたのだ。」


「そんなことが、そのベイリディルさんはどうなったのですか?」


「エルフ族の魔法使いが総出で大規模な魔法陣を組み上げ《座標指定転移魔法》を発動させたことによって何とか救出に成功したのだ。」


「不幸中の幸いというやつですね、そういえば会話の中で()()()()()って仰っていましだが、知り合いでも居たのですか?」


テトは神妙な面持ちになり質問に答えた。


「ベイリディルは我の友であった。エルフの里にはベイリディル繋がりで暇な時によく遊びに行ってたのだ。我としても友を傷つけられて黙って入られなかったのだが、」


「テト様が罰を与えたところでエルフと人間の間の亀裂は埋まらない、ということですか?」


「その通りだ、我が出張ったところで何も変わらん。」


セイヘムも聡明な人間だ、テトが出張ったあとの世界線も容易に予想が着くだろう。


災厄(竜種)に備えてとの事でしたが、テト様の知り合いであればそもそも災厄なんぞに曝されずに済んだのでは無いですか?」


「我はエンシェントドラゴンであって竜神ではない。我を信仰する竜種は止められたとしてもすべての竜種の制御など叶わん。1匹でも災厄は災厄なのだから。」


少し悲しそうな顔をしたテトであった。


「テト様、」


「だが、もう数千年前に過ぎた事だ。ベイリディルは老衰したと聞いている。我にとってベイリディルが居ない今人類を敵視する意味が無い、だからこうして貴様らと仲良くすることにしているのだ。人類が全て悪でないことなど遠に知っている。」


「では作り上げましょう!テト様の力で!全種族の平和を!」


夢物語だ。だが、


「それも、悪くないかもしれんな」


夢はあるのと無いのとじゃ生きる意味も質も違ってくる。自分のすべき事に向かっている時、人間は強くなれる。そこに種族など関係ない。


「もう少し休憩してから行くとするか。旅はまだまだ始まったばかりなのだから。」


──────────


『な、何?あの魔物······』


大樹の隆起した木の根に隠れている杖を持った少女、歳は18前後の若い女性で魔法使い特有の円錐の先端が折れ曲がっている帽子を被っている。顔を少しだけだし巨大な魔物の事を観察したり隠れたりとあまり落ち着かない様子だった。


魔力を完全に消せる者など存在しない........例外を除いて。


『私が()()()()じゃ無ければ見つかってた.....』


───異世界人

こことは別の世界《異世界》からやって来た者。基本的に王国が約100年に1度召喚の儀を行い異世界人を召喚する。異世界人は勇者と呼ばれ魔王を倒すべく冒険の旅に出る。異世界人の多くは《異能》という特異体質であり様々な固有の能力を保持している。


『私の異能《世界の一部(ワルドナーク)》のお陰で何とかバレてないけど、これが切れれば私は.........』


「そこで何をしておるのだ、人間。」


『終わった·········』


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