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星環のアエテルニタス  作者: こもり
2/8

第一話「軍人」

永遠はいつしか英雄を 英雄を呼ぶ

 英雄はいつしか永遠を 永遠を呼ぶ

 魂を燃やす剣と鎧は 全てを捨てる


 星は星々は 道を照らす

 遥かならせんを 目指して

 赤い星と共に 光り輝く


 奈落は異質な物ばかり 鍵は手がかり

 落ちた星は 星の束

 打ち倒すは 獅子の英雄


 ひとひらの光が獅子を 駆り立てる

 落ちた星は 星の束

 打ち倒したのは 獅子の英雄


 ──レオソル賛歌 一節



 ◇



「全団、最敬礼ッ!」


 雄々しい声と共に、勇ましい軍人達の制服が擦れる音が響く。

 帝国の国旗が掲揚され、国歌を奏でるラッパ達が穏やかに通過する。晴れやかな空は祝福の声を上げ、海燕達が群れを成して私達の上を舞っていた。


 やがて登壇。

 高々に立つその姿。

 英雄、または「ガラクシアの弾丸」

 帝国軍人達が最も憧れ、最も畏怖する存在。

 ガラクシア帝国七代目皇帝「ゼラ・カーディナル・バレット」

 末端もいいところの私なんかが口にするだけでも畏れ多い名前。

 この先もずっと、永劫接する機会なんて訪れないだろう。


「本日は記念すべき、ガラクシア帝国が建国された日である。それは我の先代達が幾重にも血を紡いできた証だ。我はこの日をいつも待ち遠しく思っている。それは諸君らもそうだろう、立派な帝国軍人、帝国民ならば」


 敬礼したままの手には汗と、最大限の敬いを握る。

 軍人達の間に緊張が走り、息をする事さえ忘れそうになるほどの威圧感が放たれる。

 動くことさえ許されない今この瞬間、私は心地よいとさえ思えた。


「特別で、素晴らしき日である今日、諸君ら帝国軍人に告ぐ」


 誰もが期待をし、胸を高鳴らせ、唾を飲む。

 皇帝のお言葉を待っている。

 全てを撃ち抜く言葉を。

 高揚感は止められず、止むことを知らない。

 さぁ、私達下僕へお言葉を。


「恥を忍び後世に仇をなすか、我の駒となり、ガラクシアの防波堤となるか。国の興廃、諸君らにある。我に生きる者たちよ、一層奮闘努力せよ」


 そう言い放ち、私達を撃ち抜き、颯爽と姿を消してゆく。

 今すぐにでも叫びたい。

 誰もがそう思っているだろう。

 その気持ちを強く抑え、皇帝の姿を最後まで目で追う。

 遠くの方からは歓声のようなものが微かに聴こえる。

 恐らく中継を通して聞いていた国民だろう。

 私も皆と一緒になって叫びたい、讃えたい。

 でも厳格な軍人である以上、駒である以上は表に出さない。

 それが私達だ。


 そんな素晴らしきこの日はあっという間に過ぎ去って行った。


「おはよう、アリエス」

「おはよ、バラン」


 賑やかな朝の食堂は軍人達の僅かな休息の時間でもある。

 隣に座るバランはいつもと変わらないメニューだった。


「先週の皇帝の言葉、痺れたな」

「まだ言ってる…」

「いやいや、あの感動はそう簡単に無くならねぇよ。早く上に行って、皇帝の傍についてみてぇなぁ」

「いっつも言ってるねそれ」

「いやいや、お前もそう思うだろ?」

「まぁ、そうだけど………それ貰うね」

「あっ…おい、勝手に取るなよ」

「もう私の口の中〜」

「じゃあ俺も…なっ!」

「あっ!それ最後まで取っておいたのに!」

「うるせぇお前が先に取ったのがわりぃ」

「バランはいつも同じのだからいいでしょ!この普遍男!」

「んなっ…関係ねぇだろそんなの!」


 言い合っていると後ろから声がした。


「朝からよくやるねぇ、君たちは」

「………おは」

「あ、おはよバン、セーナ」


 なんかお洒落な朝食プレートを持ったバンと、今日はリンゴ一つだけを手にしているセーナ。


「なぁバン、今のはアリエスが悪いよな!」

「いや、知らないよ」

「じゃあ、セーナは!?」

「………どうでもいい」

「馬鹿バランはほっといてさ、今日の作戦会議しようよ」

「…馬鹿だと!?」

「そうだね、今日こそは勝ちたいよ」

「じゃあバン君から意見どうぞ」

「…僕からなのね、それじゃあまず…」



 ──警告ッ!第五アーセナルに謎の飛来物有り!第五星団至急対応されよッ!繰り返す──。



 不穏な警報と力強い声色が重なり合う。

 賑やかだった食堂はあっという間に慌ただしく、ピリついた空気へと変貌した。



 ──イドラ隊、聞こえるか、応答しろ。



 取り付けているチャームから隊長の声が聞こえた。


「イドラ隊、アリエス、応答します!」


 ──よし、まずお前たちは南ゲート防衛班と合流しろ。防衛班はゲートから三時の方向、八百メートル先で交戦中だ。手を貸してやれ。


「了解!」


 ──敵の正体は未だ不明。だがアーセナルの爆破を狙っている可能性大だ。アーセナルは俺らの核、絶対に通すな。


「隊長は今どこに?」


 ──俺は今…………。


 途切れる音と共に、皆に視線を向ける。

 戸惑うことなく、皆目線は目的地の方へと。


「何が起こるか分からない。気引き締めて、行くよ…!」


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