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実家での大修羅場

同性愛者に対して侮辱するキャラがいます。不愉快な方は読むのをお止めください

 理貴は俺と箕央の住んでいるマンションで一人で待って貰っている。


 今から実家で行うのは大人達の問題であり、おそらく話の次第では理貴が傷付く展開になるだろう。(主に彼の母親が)

 本当ならば箕央も家で待って欲しかったが、『自分も当事者の一人参加する』と言うので此処に来て貰った。


 実家にいるのは両親と俺達夫夫と弟夫婦、そして俺の同僚である弁護士が立ち会っている。


 弟夫婦は下座で俯いて正座している。両親の怒りの形相に全てを察したのか地獄の裁判が開くのをただ黙って待っていた。





「……何で此処に呼ばれたのか分かっているな?」


 父の質問に二人は黙ったまま俯いていた。その様子に父の額には青筋が立っていた。


「この間、私達は色々と入り用が出来てしまい、次の年金までの生活する為のお金が無くなってしまった。恥を忍んで健一にお金を借りたのだが、その健一から()()()()()()()()()()()()()()()()支払っていると言っているそうじゃないか。……そんな話は一度も聞いた事もないし、通帳を見ても振り込まれた形跡もない」

「その代わり、貴方達の生活は()()()から随分と豊かになっているそうじゃない。竹二の給料には見合わない額のお買い物や外食や旅行。有香さんは専業主婦よね? お家で内職みたいな仕事をしている様子はないみたいだし、一体どう言う事かしら?」

「佐原さんから貴方方の息子さんの学業に対しても資金援助をお願いしていましたね? しかし此方で調べた所明らかにそちらが指定した額と実際の金額が百万円単位で違っています。しかも大学の入学金も息子さんには奨学金を使えと言っているそうですが、その入学金も佐原さんにお願いしていますよね? ーーーーもし違うと仰るのなら、貯金通帳を見せて貰いますか? 事前に持ってくる様お願いしていますし、もし忘れていても今はネットで確認できる時代になっていますからねぇ。誤解があるのなら変な遺恨を後に持たない為にもお見せしましょう?」


 両親だけではなく同僚の弁護士まで言われても二人は無言のままだ。

 両親、特に父の血圧がやばそうなので俺が結論を言う事にした。


「竹二、有香さん。はっきりと言うが二人が俺が父さん達の為に仕送りしていた月十万円も理貴の為に援助していたお金も理貴や両親ではなく二人が使っていた事は分かっているんだ。理貴に頼んで二人の家に入ったが通帳には月十万円がキッチリ決まった日に振り込まれていたし、家には随分と高そうな服や嗜好品がある事は確認済みだ」

「なっ! プライバシーの侵害、犯罪だぞ‼︎」

「どの口が言うか‼︎‼︎」


 弟の言葉に遂にキレた父さんが顔を真っ赤にして怒りのあまり立ち上がったて怒鳴りつけた。


「お前達がした事は詐欺行為、お前達の方が犯罪者だろうが‼︎‼︎‼︎」

「親族相盗例がありますが、貴方方はご両親とも佐原さんとも一緒に暮らしていませんね? 親族相盗例は同居している兄弟姉妹のみ適応されており、貴方方は別居していますから被害者側、この場合は佐原健一氏が告訴すれば罪に問われる可能性がありますね」


 事の重大さをやっと理解した二人は顔を上げたら顔を真っ青になっていた。


「あ、有香が一人でやったんだ! 俺は何も知らない‼︎」

「な、何を言っているの‼︎ 貴方だって『兄さんの()()()()は今月はまだか?』て聞いていたじゃない! 通帳も貴方が用意していたんだから‼︎‼︎』

「あ、アレは本当にっ」

「二人共良い加減にしなさい‼︎‼︎」


 母さんの一喝でやっと醜い言い争うを止めた二人。……そうか弟にとって両親の為に仕送りしていた俺の毎月の十万円はお小遣い感覚だったのか。いくら俺が弁護士をしてるとは言え、月十万円は中々大変だったのに。それだけあればもう少しこっちの生活も楽になったのに。箕央に色んな場所に旅行に行かせてあげたのに。


 あまりのショックで怒りやら情けなさに頭を抱えてしまった俺に、箕央は優しく肩を支えて「大丈夫?」と声を掛けてくれた。


「大丈夫だ。少し頭を抱えたくなっただけ。ーーーゴメン。俺の家族のせいでお前にも色々負担を掛けてしまった」

「んーん。僕の方から仕送りしても良いって言ったから僕にも責任があるよ」


 箕央に慰められて削れたSAN値を何とか回復した俺は本題へと何とか入らせた。



「二人がどうしてこんな詐欺を行ったか理由は後でしっかり聞く。今回の本題は理貴の事だ」


 弟夫婦は何故自分の息子の名前が出たのか分からないのお互いの顔を見て頭を傾げる。


「実の息子の理貴よりも赤の他人でもある幼馴染の三日日詠亜さんを優先する様に強要しているね。しかも理貴が行きたい大学よりもその幼馴染と一緒の大学に通うように命じている。理貴の意思よりもその子の意思ばかり採用する。息子である理貴の意思を無視してもだ。ーーーーー二人は理貴が学校で酷いいじめを受けていて、その主犯格が幼馴染の三日日詠亜さんだと知っているな。何で息子よりもその幼馴染ばかり大事にする?」


 二人は俺の質問に答えない。だが、弟の竹二は何か言いたげに自分の妻をチラチラと見ている。想像通りに弟嫁である有香さんが幼馴染を優先していたみたいだ。


 俯いていた有香さんだったが、観念したのかボソボソと何か言っている。


「えっ? 何を言っているの?」

「……だから、あの子が私の()()()()そのものだから。あの子を私の娘にしたいからどうしても理貴と結婚させたがったからよ」


「「「はぁ⁇?」」」


 弟夫婦以外の誰もが弟嫁の言い分に理解出来なかった。だが、この可笑しな主張をした女の夫である弟の竹二はボソボソと補足を入れた。


「有香は元々女の子が欲しがっていたんだ。だけど理貴を産んだ後に子宮の病気になって全摘出して女の子を産む機会がなくなって……そんな時に出会った詠亜ちゃんが有香の理想していた容姿と性格だったからどうしても『娘』にしたくなって……」

「嘘でしょそんな理由でお腹を痛めた息子が苦しんでいるのを無視したって言うの?」

「ーーーー『()()()()()?」


 母さんが絶句したあまりに呟いた一言は弟嫁の逆鱗に触れる一言だったのか、先程の父さんの様に顔を真っ赤にして立ち上がり、般若のお面を被った様な凄まじい表情で怒鳴り始めたのだ。



「私はっ! 最初から男の子なんて産む予定はなかったのよ‼︎ 最初の子が男だった時は本当にガッカリしたし次の子こそは女の子を産むんだって決意していたのに病気になって女の子を持つ事が出来なかった私の絶望を考えた事がある‼︎⁇」

「だったら養女を貰えば良いじゃない‼︎  赤の他人である息子の幼馴染に固執する位なら施設にいる子を養女にする位何とかなるでしょうが‼︎」

「詠亜ちゃんが私の理想の『()』だったのよ! あんな女の子を手に入れる手段は二度とないと思ったから私は必死になってあの子の機嫌を取っていたのよ‼︎」

「機嫌ってまさか健一のお金を騙し取っていたのは赤の他人の子の為なの⁉︎」

「そうよ! あの子が気にいる様な『素敵な母親』になれば結婚した後も一緒に同居して貰えると思ったのよ‼︎ この人も身なりを綺麗に整えてバリバリと仕事をしてくれたらもっとウチに嫁入りしてくれると思ったらからこの人にもお金を与えたのよ!」

「そのお金は健一が私達や理貴の為にと思って自分の働いたお金から支払ってくれたものなのよ‼︎ それなのにそんなくだらない理由で浪費して健一や箕央さんに申し訳ないと思わないの⁉︎」

「良いじゃないですか! どうせお義兄さん達は子供が出来ないんだから子供を産んだ私達の為にお金を援助したって罰が当たらないーーーー」



 バッチーーン‼︎‼︎‼︎



 強烈な嫁姑の言い争いは、母さんの強烈な平手打ちによって終結した。






「……竹二も有香さんと同意見なのか?」


 父さんは怒りを押し殺した、低い声で竹二に投げ掛けた。


 また俯いた竹二はボソボソと「だって父さん達だって俺達が理貴を産んだ時はあんなに喜んで色々してくれたから……子供の頃からずっと兄さんに学業や運動とかで負けてばかりだったから、やっと兄さんに勝てたとっ」と言った辺りで父さんが竹二を力一杯殴り飛ばした。


「子供を産む事は勝ち負けじゃない‼︎‼︎ お前達は自分の兄を、息子をなんだと思っている‼︎‼︎」

「落ち着いて下さい! 暴力沙汰はダメです‼︎」


 もう一発殴りそうな父さんを同僚が後ろから羽交い締めにして押さえ付けている。


 母さんに平手打ちされた弟嫁のガラスを切り裂いた様な甲高い声で罵る声を合わさって、その場は耳障りな大修羅場と化していたが、バンッ‼︎ と机を叩きつける音でその場が静まった。


 机を叩いたのは箕央だった。


「お義父さん落ち着いて下さい。血管が切れたり心臓を悪くなったら命に関わります。お義母さんも()()()()でも殴ったら犯罪になるから暴力は駄目です」


 淡々と両親を嗜める箕央のお陰で二人は冷静になってソファに座り直した。

 弟嫁は『こんな人』呼ばわりをされてまた何か言おうとしたが、箕央が制した。


「有香さん。貴女が女の子が欲しい事も理貴君の幼馴染さんが貴女の理想の娘像だった事も、僕達の事を見下していた事も分かりました。

 だけど、それだったら貴女が幼馴染さんのご両親と交渉してその子を養女に貰えば良かったじゃないですか? どうして自分の息子を犠牲にする必要があるのですか?


 理貴君は貴女がお腹の中で育んで、痛みを伴って産まれた子供でしょ? 確かに僕達は実の子を儲ける事は出来ません。だからこそ、子供を産んだ貴女の事を僕達は敬意を持って出来るだけの手伝いをしたつもりです。


 何より健一さんが今まで援助していたのは理貴君の為であって、貴女の為でも幼馴染さんの御機嫌取りの為でもありません。そこを履き違えないで下さい」


「そして竹二さん。

 貴方は理貴君の父親でしょう? この人の旦那でしょう? 一家の大黒柱でしょう? だったらしっかりしなさい‼︎ 」


 箕央に叱責された二人は悔しそうにソッポを向いた。

 ーーー箕央ばかり任せるのも良くないな。






「竹二。お前が俺に対して劣等感を持っていた事は分かった。でも俺としては周りに人が沢山いる竹二の事を羨ましいと思っていたし、一部の世間から冷たい目で見られずとも結婚出来た事に羨望と劣等感があったよ」


 俺の本音に竹二はハッとした顔でバッと顔を上げる。今の同性婚が成立するまでの苦渋の日々を見ていた筈だ。俺は弁護士をしているせいか、時には誹謗中傷だけではなく家に石を投げられる等の暴力沙汰に巻き込まれた事もだ。


 弟は気まずくなったのか顔を横に背けたが、弟嫁の方は相変わらず不服そうだ。




 ……もう弟嫁に関しては諦めよう。理貴も事前に言っていたけどな。

 俺は同僚とアイコンタクトを取り、彼は頷いて弟夫婦に判決のハンマーを下ろす。



「依頼人である佐原理貴氏は伯父夫夫との特別養子縁組に対してのサインをして頂ければ()()()()()()()()()()()()()()()|をしないとの事です。どうしますか?」



 弟嫁は嬉々として、弟は渋い顔をしながらも嫁に押される形で特別養子縁組へのサインをした。その書類を大事に封筒に入れて箕央のバックに入れて、箕央がしっかりと胸に抱き締めた。



「次に佐原健一氏の依頼ですね」

「「えっ」」


 弟夫婦は素っ頓狂な声を上げるが同僚はそれで止まらない。


「貴方方が仕送りと偽って着服した月十万円、十二ヶ月で百二十万でその三年分ですから三百六十万円を御両親に返還。()息子だった理貴氏の教育等に使うと偽って騙し取ったお金は実際に理貴氏に使われた分を差し引いた金額を佐原健一氏へ返還する事です。金額は此方に」



 渡された書類をひったくる様に受け取って慌てて金額を見るとあまりの金額に顔を真っ青になっていた。

 まぁ弟嫁もパートして働ける年齢ギリギリまで働き、弟が定年までしっかり働いてその退職金も全て支払えばなんとか完済する額だ。……老後の生活は爪に火を灯す位節約しなければならないが。



「ちなみにお前達が健一に要求した額を健一がしっかりと書面に記載しているからぼったくりだとか吹っかけているとか言わない様に。全部の書類にはお前達のサインと判子があるからな。それに通帳に送金した時の記録もあるからな」


 父さんに釘を刺された弟は反論しようと開いた口を閉じ、弟嫁はバッと箕央の方へ怒りの形相で振り向くが箕央を庇う様に母さんが仁王立ちにして般若の様な顔で睨み付けた。

 その形相に弟嫁は戦意喪失したみたいで、特別養子縁組の書類を奪う事を諦めた。



「もし警告を二度行なっても返済をしない場合は強制執行を行いますので。其方側も弁護士を立てて争っても構いませんが、其方が勝てる可能性はありませんし、健一氏は警察に被害届を出すつもりです」

「まぁ何方を選んでも私達はお前達と縁を切るがな。犯罪者の息子等私達の息子ではない」





 父さんのトドメによって弟夫婦は同意のサインをし、この大修羅場の幕をとじたのであった。

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