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ロジスティクス・サービス  作者: 水何トモユキ
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戦場にて

 異世界アスティア。

 この世界にも人はいて、人がいる故に争いがあった。

 太古の昔より、水・食糧・領土・資源……様々なモノを対象に争いは繰り広げられ、時代を経るごとにその規模は大きくなっていく。

 人の世を豊かにする蒸気船や鉄道、電話が生まれた今でも、戦いは無くならないでいた。

 戦場の主力は棍棒から刀剣類、火縄銃を経て、現在は後装式銃・機関銃・野砲山砲となっている。

 騎兵は戦場の華から名脇役へと転身し、歩兵は密集陣形から散兵としての運用をされ、その輪に砲兵が加わり日に日に存在感を増している。

 それだけ戦場も姿を変えてなお、人は争い続けていた……。


 この世界最大の大陸、ルアンシム大陸西端。

 現在この地で、極西の島国ヤシマ皇主国と大陸最大の領土を誇るロムーア帝国が激しい戦火を交えていた。

 山に平原に、時に川を挟んでと、大地のあちこちで大軍同士が砲火を交える、その遥か後方に皇主国軍の物資集積拠点があった。

 深い塹壕と、コンクリート製の防壁で幾重にも囲まれたこの拠点の中には、食料や医薬品、武器弾薬を保存する倉庫が林立している。

「確認完了です。出発して下さい」

 基地と外を繋ぐ分厚い鉄製ゲート付近。書類を手にしたセイ・オージノが、目の前の補給部隊の先頭を行く兵士に告げた。

 セイと同じカーキ色の軍服と軍帽を被った兵士が敬礼の後、手綱を大きく動かすと、それを合図に彼の騎馬がゆっくりと動き出す。

 その最初の騎馬に続き二台、三台と縦列で人力の荷車や荷を積んだ馬が基地を発つ。

「次は第八師団。あそこは補給路と前線まで距離が近い。恐らくここでも奇襲があるはず」

「失礼します」

 下士官と思しき、軽装の若い兵士がセイの元へ飛び込んで来て敬礼する。戦場へ出ることのない内勤の者らしく、軍服にはシワや多少のよれはあれど、汚れや破れは見受けられなかった。

「トーエ中佐よりのご報告です」

 セイが敬礼しかえすと、兵士は上官より預かった報告を口頭で伝える。

「進発した第十二師団への補給物資は無事到着。なお途中で敵の待ち伏せに遭うも、エイリ曹長らの部隊が未然に敵を発見、殲滅したとのことです」

「報告、ご苦労様です」

「では、自分はこれにて失礼いたします」

 再度の敬礼を残し、若い兵士はいそいそと庁舎の方へ戻って行った。

「未然に防げたのなら、多分予想した地点で襲おうとしたのだろう」

 セイは近くのかがり火に寄り、腰の(ざつ)(のう)から、折り畳んだ紙の地図を取り出して広げる。

「今回は読みが当たって先制攻撃できたけど、次はどうか」

 無数の折り目と鉛筆で書き込まれた地図を眺めつつ、頭の中で次なるプランを練る。

「今度の襲撃失敗で同じ場所では仕掛けてこないはず。それなりの打撃を与えられる規模の部隊を待ち伏せさせるとすれば……」

 報告にあった襲撃を加味し、次に補給部隊が通るべきルートを選定、意見具申をするのも兵站担当たるセイの仕事だった。


 兵站。

 それは軍の行動時、後方にあって食糧や武器弾薬などの物資や補充兵の輸送、負傷兵の後方移動を行うこと。

 兵や軍馬は食料がなくば生きられない。銃は弾が無ければただの鉄の筒と化す。

 それはどんな精強な兵士でも変わらない。彼らは己の武功を誇りとし、周囲に得意げに標榜する。しかしながら、その功績は必要な物を揃える、縁の下の力持ちあってのモノと認識している者は少ない。

 これはそんな影の主役達、ヤシマ皇主国後方支援部隊の物語。

 その起こりは約一年前にまでさかのぼる……。

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