表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/12

先輩も攻略対象




「親父さん、いいもん持ってきてくれてるじゃないか」

「ああ」

 かごにはいったフルーツを見てにこにこしている真人に、適当に返事をしてしまった。

 ヒロインのことだけ、どうしても思い出せない。可愛い子だったのは間違いないんだが、名前も顔も、すっぽり、記憶からぬけおちている。

「なあ、真人」

「うん?」

「今日って何月何日だっけ?」

 真人が口をあんぐり開けてこちらを見た。




 真人が大騒ぎするので、追加の検査をうけることになってしまった。が、脳波などに異常はないらしい。予定どおり、明後日の午后に退院する。

「だから大丈夫だって云ったじゃないか」

「いや、だけどお前……日付がわからないって、大変じゃないか?」

「ちょっと記憶が混乱してるんだよ。それだけ」

 とりあえず、日付はわかった。火野文哉としての記憶も少々混乱しているのだが、俺は高校一年生で、今は六月の終わりだ。入学からそろそろ三ヶ月、空田の出現条件のリミットが近い。

 空田がもし、教室登校するようになっているなら、主人公が活動しているってことになるが、俺がそれを直にたしかめることができない。病院を出られないから。

「火野ぉ、お疲れえ」

 面倒そうな様子で、水崎が這入ってくる。真人がなにか云う前に、水崎は背後を示した。「春原先輩が、お前の見舞したいって。俺、案内しただけだから」

「災難だったね、火野くん」

 春原先輩だ。フルーツのかごを持っている。俺は姿勢を正した。

「春原先輩、すみません」

「ああ、無理しないで」

 春原先輩は微笑んだ。このひとはサッカー部のOBだけれど、三年生の頃には生徒会長をしていたとかで、いれかわりで入学した俺達も気にかけてくれている。大学、すぐ傍にあるしな。

 水崎は、案内しただけ、と云ったくせに、出入り口辺りから動かない。その目がフルーツのかごをちらちら見ている。「水崎、案内ありがとうな。なんかくう? りんご、うまいぜ」

 真人が凄くいやそうに俺を見た。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ