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思い出せない重要なこと




 火野文哉、風那珂真人、水崎那由多。


 それに、テニス部のユーレイ部員、地山(ちやま)江威流(えいる)

 親がプロテニスプレイヤーで、小学校までは天才テニス少年として国内外の大会で活躍していた。

 しかし、中学時代、怪我をきっかけにスランプに陥り、テニスへの情熱を失っている……と思われているが、実は再び怪我をすることへの恐怖心に苛まれ、更にトップから転落した時の周囲の(てのひら)返しがトラウマになっている。見た目はかわいい系。


 漫画版で最終的に主人公とくっついたのが、空田(そらだ)貴音(たかね)だ。

 バスケ部のエースだったのだが、去年の全国大会初日、試合会場へ向かうバスが事故って以来、半引きこもり状態になっている。

 こいつが一番の難物で、攻略対象が関わっていない部を最低ふたつ、特定の日時までに復活状態にしないと、そもそもあらわれない。

 ああ、情報画面に表示されるのだが、攻略対象が関わっている部はいつつで、それ以外にも名前だけ登場する部が幾つかある。主人公の活躍に応じてそれらの部が復活していくのだが、貴音をゲームに出そうと思うと一番効率のいいルートですすめないといけない。

 攻略対象のなかで一番背が高いが、ひょろっとした感じで、なんとなくキリンっぽい。ちょっとなよっとしたやつだ。


 あとは、サッカー部のOBの大学生、春原(はるはら)恵太(けいた)

 屈折したところのない真面目な人物で、学校を建て直そうと走りまわる主人公を陰日向に応援してくれる。主人公が物語の進行上絶対にやることになる(チュートリアルとも云う)、友人の代理で行った本屋のバイトで知り合う人物だ。

 サッカーは理論的な部分はわかるのだが、腕前はさほどではなく、今はスポーツ医学の勉強をしている。物語開始の一年前に、サッカー部の監督が暴力騒ぎを起こしており、サッカー部は現在休部状態だ。春原はそれに心を痛めており、主人公が説得すると後輩を集めてサッカー部を復活させてくれる。

 年齢に見合わない落ち着きを備えた、大人っぽい見た目だった。漫画版では扱いが悪く、ゲーム版でも初代ではほかのキャラよりもイベントが少ない。リメイク版ではイベントもスチルも相当増えるのだが。

 ちなみにリメイク版だと、更に名字に「夏」「秋」「冬」のはいる三人のキャラが追加される。最初はその三人も含めた、全十人の攻略対象が居る予定だったが、データ容量的に難しく「春」の春原だけ残った、と、ネット記事で読んだ。


 そして、謎の美少年こと、妖精のポピー。

 こいつは主人公が中庭の噴水を調べるとあらわれるキャラクターで、出会いイベントをこなすとそれ以降は中庭か温室、サッカーグラウンドのどこかにあらわれるようになる。

 最初はすさんだ様子で、主人公に対する言動もつめたく、何故か主人公以外には見えない。だが、ほか六人の攻略をある程度すすめると、主人公に心を開いて、自分は学園をまもっている妖精だとあかしてくれる。

 学園創始者の娘が丹精した花が、妖精になった……という設定だった。そのお嬢さんが噴水を好きだったので、噴水に触ろうとした主人公を注意しに出てくるのだ。

 攻略対象が関わっている部をすべて復活させると、ポピーの姿が全員に見えるようになる。金髪碧眼の美少年だ。




 病院のベッドの上で、俺は腕を組み、そこまで思い出していた。

 昨日、寝る前にもある程度思い出していたのだが、寝て起きたらもっといろんなことが頭のなかにあった。まさか俺の妄想ということもあるまい。それとも、頭を打ってどうにかなってしまったんだろうか。

「また、難しい顔してるな」

 目を向けると、真人が這入ってくるところだった。

「真人、来なくていいって云ったろ」

 真人はちょっと哀しそうに微笑む。「なんだよ、俺が来たらなにか悪いのか?」

「そうじゃなくて……」

 母親の見舞があるだろう、とは云えない。こいつが俺に、自分の母親が入院していることを隠しているからだ。


 結局、真人は俺の云うことを聴かず、またりんごをむいてくれた。そして俺はりんごを食べた。

「親父さん、来てくれたの?」

「寝てる間にな。それですぐに帰ったって」

 俺、火野文哉についても、詳細を思い出していた。ああ、ゲームや漫画の設定のほうだけどさ。


 文哉は父子家庭で、母親ははやくに亡くなっている、ということになっていたが、実は離婚して家を出ていたと父方の祖母から聴かされる。タイミング悪くその直後、野球部の仲間から「お前が居ると俺が試合で投げられない」と云われてしまい、ショックが重なった文哉は衝動的に野球部を辞めてしまう。

 中学時代の功績もあって、文哉を手放したくなかった学園側が野球推薦で高等部へ進学させてくれた。が、ブランクがあって思うように動けないのではないかという不安と、バッテリーを組んでいた真人を裏切ってしまったという気持ちがあって、文哉は野球部へ素直に戻れない。


 文哉は取扱説明書で一番最初に名前が載っていたり、パッケージにもでかでかと描かれていたりと、発売当初は正規ルート扱いだった。

 しかし、文哉を攻略すると、母親に会いに行くが再婚していて遠くから眺めるだけだった、とか、お前が居ると試合に出られないと云ってきた相手が強豪高校で華々しく活躍しているのを目の当たりにする、など、後半に来ればなんとかのみこめそうなイベントが序盤からばんばん襲いかかってくる。なので、三作目からは掲載順が後になったし、漫画版では空田にメインヒーローの座をあっさり奪われている。


 りんごを嚙みながら、もうひとつの懸念事項を思い出していた。()()()だ。彼女はどんな人物だったっけ?




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