誰が主人公を害したか?
看護師がなにか云って追いかけてきたが、野球からはなれて数ヶ月、まだまだ俺の脚力は健在だった。エレベーターを待っていられないので階段を駈けおり、外へ出る。
「火野!」
真人が追いついた。「学校なくなるって、なんだよ。あの金髪誰だ?!」
「あいつは妖精で、学園をまもってるんだよ!」
俺の返しに、真人は目を瞠った。「お前やっぱり頭」
「大丈夫だってば!」
「ふたりとも、僕も行く」
はっとして後ろを見ると、地山と空田が追ってきていた。更にその後ろに、水崎、春原先輩、夏上も居る。ポピーは夏上に負ぶわれていた。
俺は口をぱくぱくさせてしまっている。
「地山、お前走れるのか?!」
「は?」
変な顔をされた。だって、地山は中学で靱帯を切って、この時はまだその後遺症が……ああくそ! そこもゲームとかわってるのか!
ゲームと違う部分と、ポピーみたいにゲームとほとんどかわらない部分がある。主人公がどうして入院しているのか、どうしてバス事故や、地山や夏上の怪我、冬木の冤罪がなかったことになっているのか。
そして、俺はひき逃げされて入院した。
かちっと、頭のなかでなにかがはまった感じがした。
学園の、高等部校舎の三階に、理事達は集まっていた。そこにレトロで立派な会議室があるのだ。2で主人公が理事長にかけあう場面があるので、場所は把握していた。
迷いなく歩いていく俺に、ポピーは呆れた顔になっている。「お前、どうして」
「どうでもいいだろ」
俺は会議室へ、ノックもせずに這入りこんだ。「だ、誰だ?!」
「高等部一年の火野文哉です」
理事達がはっと息をのむ。一番若い、くしゃくしゃした黒髪の理事、五行さまが立ち上がった。あの声で云う。
「部外者を勝手に校内へいれないでもらえるかな、火野くん」
俺は、さっき交番まで行ってついてきてもらった制服警官を振り返った。
そのひとりを指さす。「他神智櫻子さん、あんたが俺をはねたんだろ」




