精鋭部隊(仮)
実銃、本物の銃、全日本男児の『人生で1度は生で見てみたいものランキング』にも余裕で上位に食い込む代物、ご存知の通り日本では禁止されている為、日本人はほぼ全員実銃を見たことがないと言っても過言ではない。
俺は『恐怖』や『疑い』の感情よりも先走った感情は『興奮』だった、なぜなら俺はいつもPS4の中で銃を扱い、銃を撃って相手を殺している、だがそれはあくまでゲーム内での話である、実銃など触ったことも見たことも無いのだから、プレイヤーであれば皆興奮するだろう。
だがこういう時こそ冷静に対処すべきである、まずこの銃が入った大きな箱は誰が置いていったのか、そしてこれらの銃は本当に本物なのか、そして俺が触って大丈夫な物なのか、しばらく冷静に分析してみた。
言わずもがな、謎が解けるはずもなく俺はただ箱の前で突っ立って腕を組んで考え事をしている、その姿は不審者同然だ。
「とにかく、誰かの忘れ物かもしれないし、家の中に入れよう…そうしよう!!」
そう決めると俺は急いで玄関の扉を開け、靴も脱がずに押し入れがある左奥の寝室へと走った。
「ええっと手袋手袋………ああ、あったあった」
使わない物や何かに再利用できるかと思って残していた箱、ダンボールなど、中身がぐちゃぐちゃになった押し入れの奥から俺は白色の手袋を引っ張り出してきた。
早くしなければ誰かに見られる、俺は急いで手袋を両手に装着しつつ、玄関へ走り、扉を開けて箱を持ち上げようとした。
「お……おっっも…!!!」
勢いで持ち上げたものの、ぎっくり腰になりかけた、それも当然である、一番上に置いてあった銃だけでも弾を除いて約2.6kg、それ以外にもぎっしりと装備が詰められていたのだから。
鉄同士がぶつかりあう独特の金属音を鳴らしながら俺は気合いで玄関へと箱を移動させる。
休む間もなく、玄関の扉を勢いよく閉めて、鍵をかけた、これで他人に見られる心配はなくなった。
「はッ…はッ……持ち主には悪いけど、中をちょっと見させてもらうかな~…し、失礼しま~す…」
謎の罪悪感を背負いながら、1番上に置いてあった銃を取り出した、重さ、触感、見た目、紛れもない本物である、そして俺の推測だとこの銃はM4カービンだと推測できる、ゲーム内でもアサルトライフルはよく使うので、馴染み深い。
他にも、グレネード、ハンドガン、ベスト、グローブ、ナイフ、ブーツ、トランシーバ、どれも聞いたことある物、見たことあるものばかりで、初心者パックというあだ名をつけたいくらいスタンダードなセットだ。
ただ1つ、謎のボロボロの白い球体も入れられていた、その球体を手に取ってみると、ひんやりとしていて気持ちいい、壊れているのだろうか。
「……なんだこれ…ン?なーんか裏の方にボタンっぽいのがあるなぁ」
ボタンらしき物をゆっくりと押してみた、すると球体は青白く光りだし、ふわふわと浮遊し始めのだ。
「わわ…なんだこれなんだこれ」
球体はふわふわと浮上し、俺の顔の目の前で止まったかと思うと、ガシャッ!と大きな音を立てて球体上位が上へスライドした。
「うううわッ!…ビ……ビックリしたァ…」
結構デカめの音だったのでビビってしまい少し後ろに仰け反った、正常な人間ならまずビビるだろう、明らかに現代の技術では作れなさそうな物体が自分の目の前で行動を起こすのだ、それも結構デカめの音を立てて。
「アドミニストレーター認識中…座標位置を取得します…本部へ連絡…ネガティブ…Pコードを認識…セットされていません…」
ノイズの混じった音質の悪い音でブツブツと喋りだした、恥ずかしい事にいきなり喋り出すので肩がビクッと上がってしまった。
訳の分からん言葉を羅列している球体はしばらくの間ブツブツと喋りながら俺の顔の前を浮遊していた。
「ようこそマスター、私はボス・イヴの命令により着陸しました、名はナノ・ボットと言いマス、『ナノ』と呼んで頂いて構いません。」
「え、あ、こ…こんにちは…」
そして球体はハキハキとした明るい女性の声で自己紹介をはじめだした、相手はこの俺、人脈は愚か友人さえ失っている男である、女性と話すのも久しぶりなので、やっぱり焦る、この謎のロボはナノと言うらしい、球体と呼ぶのもなんだから名前で呼んであげることにする。
「あなたのミッションを知っていマスか?説明しマス、現在ここ日本では原因不明のパンデミックが起こっていマス、パンデミックの詳しい情報を調べるため、マスターにはサンプルの採取にいってもらいマス。」
「へぇパンデミックねぇ……パンデミックって何の?どんなパンデミックなんだよ?」
ナノは聞いてもいないのに俺にミッションがどうだと説明している、もちろんそんな体験や教室に応募した覚えもない、とにかく突然過ぎてわからないことが多すぎる。
「原因不明のパンデミックは、感染すると皮膚がただれて脳が萎縮しマス、それによって制御が効かなくなり、暴走しはじめマス、いわゆる『暴徒化』ってやつデス、そして感染した者達は何故か握力や身体能力が向上していることがありマス」
今の俺の気持ちを一言で表わすと『は?』だ、いきなり現れて、パンデミックによって市民が暴徒化する、普通そんな話が信じられるはずが無い、が、大量の装備と実銃、現在では作れないであろうオーバーテクノロジーのロボ、嘘ではない根拠は出揃っている、信じたくないが、今外ではいわゆるバイオハザードが起こているというわけである。
そして、これ先、俺が何をすればいいか予想は着く。
「感染者ハ、もう人として認知されません、今はまだ元に戻る方法がないですし、相手から襲ってくればこっちは正当防衛デス、反撃しなければコロされます、コロされる前にコロしてくだサイ、死体から私がサンプルを採取しマスのでマスターは感染者をコロすだけデス!」
「だけどそれ…銃刀法違反じゃね……?」
「…………多分大丈夫デス!いざとなればボス・イヴが揉み消してくれマスからネ!」
そもそもな話、俺は感染者を撃つことなどできないだろう、ずっと周りの足を引っ張ってきたし、自分がでくの棒だと重々承知している、それでもナノは俺を選ぶのか。
不安でいっぱいだが、やれと言われたからにはやるしかない、ビビりではあるが物事を受け入れ、適応する力は、自分ではあると思っている。
「…わかった……俺でよければやるよ」
「いいデスネ!ってこんな話をしているうちにヤツらはもう近くに広がってきていマス、窓からあそこの信号をみてみてくだサイ。」
ナノはゆっくりと窓際へ移動しながらそう言った、箱にあるハンドガンをなんとなくひとつ取って俺もナノの後を追う。
そっちの方向はコンビニ付近、2つ目の例の信号がある場所だ、あの信号は結構人がよく通るので、俺もよく眺めていた、その時と同じように人々を眺める。
すると声が大きな2人組が信号待ちをしているのに目がついた、2人組の横にフラフラと足がおぼつかない様子のおじさんが並ぶ、手がだらんと下がり、目も虚ろに見える。
「ア………あぶない。」
なんとなくそう感じた、あの足のおぼつかないおじさんは感染者である、ナノが言うにはあれはもう人間として扱ってはならない、殺しても罪に問われない存在。
するとあろう事か2人組のうちの片方がおじさんに絡みに行ったのだ。
「おっさァ~ん、大丈夫ぅ~??家まで送ってよ~、3万円で!!ギャハハハハ!!」
2人組は揃って手を叩き、大爆笑していた、俺は今から起こることを大体予想出来ていたが、助けるつもりは無い、いや、あれは助ける価値のない人間だからだ。
するとおじさんは2人組のうちの片方の髪の毛を掴み、持ち上げる様に上へと引っ張っている。
「うわッ…え、イテ、イデデデデッ!! やめろよこのクソジジイッ!死ねッ!!クソが!!」
涙目になりながら必死におじさんの腹を殴っている、もう片方も止めに入るが力が強いのが拳を開くことが出来ない様子だ、おじさんは腹を蹴られても何も動じず、拳の指はビクとも動かさずにただヤンキーを見つめていた。
「痛い!痛い痛い!!痛いいい!!!あああああああああぁぁッッ!!!!!」
おじさんがヤンキーの額の肉を噛みちぎり、ぐちゅぐちゅと咀嚼して飲み込む、そう思うとまた額の肉を噛みちぎって食べている。
ヤンキーの絶叫にはなんの反応も示さず、ただひたすらに肉を噛みちぎっている、しまいにはボリボリと嫌なを音を立てていた、恐らく頭蓋骨を噛み砕いた音だ。
「見てわかる通り感染者は非感染者の肉を食べマス、ゾンビでイメージするとわかりやすいデスネ……見ていて気分がいいものではありませんガ…」
その光景を見ていた近くの市民は逃げ惑い、気づけば外は騒がしく、あらゆる所で火災が発生していた、恐らくあの爆発も感染者が関係しているのだろう、騒ぐ者、泣く者、逃げる者、立ち向かう者、喜ぶ者、外は完全にパニックに陥っており、話をしても止まる様子は無さそうだ。
すると玄関からガチャガチャッと音がする、扉を開けようとしている様だ、パニックになった市民が家を間違えたのか、いや違う、次第にその音は激しく早くなり、ドアを強く叩く音になった。
ドンドンドンドンドンドンッッ!!!!
感染者だろう、俺はそう思って持っていたハンドガンの銃口を扉へ向けたままゆっくりと玄関へ歩いていく。
「…誰だッ!助かりたいなら手を止めてくれッ!」
勇気を振り絞って久々に大きな声を出した、すると扉を叩く音はしだいに静かになり、次は爪で扉をカリカリと削る音に変わった。
「助けてください、入れてください、私達、殺されるンですか、」
女性の声だった、かなり弱っている様子で人間の言葉も喋れる、それにまともに会話した相手なら見捨てる訳にも行かない、もし見捨てたら後味が悪過ぎる。
「…わかった、今鍵を開けるから、家の中にある物の事は誰にも言わないように」
俺は優しくそう言うと鍵を開けてゆっくり扉を開けた。
すると髪が長く、酷く汚れた様子のやせ細った女性が玄関へ飛び込んできた、目に生気がある、恐らく感染は避けられたみたいだ。
「…あ…ありがとうございます……………その…いきなりでなんですけど……その銃は本物…ですか?」
女性は震えながらハンドガンを指さしている、やっぱり日本人であれば本物かどうかは気になる所だ。
「本物だ、君は撃たないし撃ちたくない、安心してくれ」
「本当に撃たない……?少し……怖いですけど、信じますね…」
酷く怯えている様子だ、外は相当なパニックだったのだろう、今は怯えているのも仕方ない、俺が感染者の可能性だって充分あるからだ。
「マスター、申し訳ありませんガ、ひとつ言わせていただきマス」
ナノは俺の後ろに移動し、いつもよりボリュームを下げて話しかけてきた。
「……どうした?」
「私は色々な機能が備わっていマス、サーモグラフィーや暗視カメラなど、生体反応を検知することもできマス、半径2メートルまでですガ、範囲内に入った生体は大まかですが判断できマス、犬であれば犬、猫であれば猫、人であれば人」
ナノの今の説明は状況的にどう考えても今それを言うべきことではない、そう、どう考えてもおかしなタイミングなのだ。
「さっきスキャンさせていただきましタ、非常に申し上げにくのですガ」
「その女性は、感染者デス。」
非力な主人公が色々な策で感染者と戦うものを書こうかなあっと思っていたのですが、やはり一番最初に思いついたシナリオに沿って書いていく方が楽しいですね。(ロボットとかヤダーって人はごめんなさい)
一応シナリオはラストまで出来ています、ラストまでかけるかどうかは皆さんの応援によって決まりますかねぇ、やっぱり励みになりますし(強欲)
感想をひとつ貰えただけで超舞い上がりました、思っていたよりも沢山の人に見てもらっているみたいなので最後までかけるといいなぁ
今日中に更新出来て良かった!寿司食いてえ寿司!