日本一冴えない男の逆転劇
俺は冴えない成人男性、名は『豊臣光彦』いかにも冴えない成人男性って名前だ。
しかも俺の苗字である『豊臣』は『豊臣秀吉』の末裔だからだとかそういったもんじゃない、ただの偶然だ、けれど学生の頃のあだ名は『天下人』だった。
理由は話す必要もない、学生の頃は友人と馬鹿やったりしていたが今はもうカラオケに行く気力すら湧かない。
『豊臣光彦』(25)
この話は本当に本当に冴えない男の人生が、180度、いや、それ以上にガラリと変わった話だ。
本編が始まる前で申し訳無いが、本編と歴史は一切関係ない、豊臣の下りはただの俺の小話だからな。
その日は雨だった、朝起きると今日が雨かそうじゃないかというのはなんとなくわかる、特殊能力だろうか?いや、そうじゃない、ただいつもより朝が寒いから雨だった、ただそれだけの話だ。
まてよ……?もしこれが特殊能力だったとしたらなんの役にたつ…?100%天気を当てれるお天気キャスターになれるかもしれない、俺は毎朝小学生が考えそうな死ぬほどくだらん妄想をして出かけるのが何故か日課になっている。
「いってきます……」
そう、もちろん返事など帰ってこない、俺は一人暮らしなのだから、だが母に挨拶は1人でもするものだとよく言われた、だがこんなにも静かだとなんだか気味が悪いんだよなぁ。
俺が外にでた瞬間、ポツポツと降っていた雨が段々と強くなっていく。
「まじか……困ったなぁ…」
傘を差すまでもないくらいポツポツだった雨は、俺が傘を取りに戻って再び外にでた時にはザーザー降りだった、まあ人間1度は経験するだろう。
「しょうがない…濡れて帰る覚悟でいくか…」
何処へ出掛けるって?決まってるだろ、コンビニだよ、朝ごはんを買いに行く、嫁や彼女がいない俺達はコンビニが彼女なのさ。
冴えない成人男性に『独身』というステータスが付け足される、いい迷惑だ。
幸いなことにコンビニと俺の家はそう遠くない、信号も2つくらいしかないのですぐに行くことができる。
とは言ったものの2つ目の信号に引っかかった、それも俺が渡ろうとした瞬間に赤に変わった。
「今日はなんだかついてないな」
信号待ちはあまり好きではない、単純に突っ立っているのが嫌いだからだ、とは言っても俺は現代人、信号待ちになればスマホを取り出していじっていればじきに青になる、そう思ってスマホを取り出そうとポケットに視線を送った瞬間だった。
大型のトラックが俺の目の前の水たまりを勢いよく通り抜け、俺諸共スマホもビッショビショだ。
「おいコラーッ! 交通弱者に水を掛けるのは立派な違反行為だぞーーッ!!」
流石にこれは無いだろう、いくら冴えないからといって水をかけられる事があっていいのか…
幸いスマホは防水なのでなんとかなったが…
そうこうしてるうちに信号は青に変わっていた。
「…ラッキーなんだかアンラッキーなんだか……」
ビッショビショになった俺は渋々とコンビニへと入店していった。
コンビニは好きだ、大抵のものであれば置いてある、酒や菓子、飯、ましてや日用品、俺の好きなホットアイマスクまで置いてある、そして飯や菓子が美味い、体に悪いのは分かってはいるがついつい手に取ってしまうのだこれが。
コンビニに入ってこの商品を選んでいる一時が俺のささやかな幸せなのだ。
神よ、ありがとう。
これはいつものくだらない茶番である、全て事実ではあるがここまで大袈裟にする必要もない、コンビニのある生活に我々は慣れているのだから。
「……あざっした」
とにかく朝飯を買ってコンビニをでた、今の気分は最高だ、と言いたいとこだが定員の態度が非常に悪かった、ありがとうございましたすらしっかり言えない定員にはむかっ腹が立つ。
まてよ…?だけどあのコンビニではあまり見ない顔だった、新人だったのかもしれない、緊張していたのだろうと都合よく解釈して家に帰ろう。
とした時だった
大きな揺れと同時に体で感じられるほどの轟音が鳴り響いた。
とても立っていられるほどじゃない…これは普通じゃないっ!
俺は無意識に体制を低くして揺れが収まるのを待った。
「な……なんだったんだ…何処かの工場でも爆発したのか…?」
幸い、事の発生源は遠くの様で、野次馬するほどの心の余裕は持ち合わせていなかった。
「こ…これは野次馬するより早く家に帰った方がいい…!絶対そうに決まってる……!!」
俺は傘を急いで閉じ、逃げるように家に走った、いつもの様に歩きでは疲れる階段を駆け上がり、その後の登り坂も全力で走った。
「はッ、はッ、はッ、、、はァァァッッ!」
家につくとまず玄関の鍵を閉めて深呼吸して自分自身を落ち着かせた、きっと災害だろう、俺はそう思っていた、だが俺は冴えない男、助けが必要と分かっていても結局でくの棒で足でまといになるとは見えていた、だから敢えて俺は逃げるという選択をしたのだ。
「ごめんなさいッ……ごめんなさいッ…………!!」
両手を握り必死に謝った、助けてあげられなくてごめんなさい、行こうと思えば行けたのにごめんなさい、見捨ててごめんなさい。
無論、落ち着いたとはいえ精神状態は今とても不安定だ、せっかく買った朝飯も喉を通らない。
「…………今日は…2度寝しようかなァ…」
俺は涙を流しながら眠った、激しく動いたせいでどっと疲れたのか、すぐに眠りについてしまった。
そして人生初の悪夢をみた。
「なんで助けてくれなかったんですか?私だって家族がいるんですよ、近くにいたんでしょう?ねえどうして?どうしてなんですかッッ!!!!!」
俺は災害から逃げた事を後悔した、どこの誰かもわからない人間が夢の中で俺に訴えかけてくるのだ。
「本当に悪かったと思っている、けど俺がいってもクソの役にもたちゃしない、俺のせいで他の人が救えなくなるかもしれないんだ、頼むよ、分かってくれ」
俺も必死になって訴えかけた、俺はポンコツのでくの棒だと自分で気づいているからこその決断なんだと。
するとどこの誰かもわからない人間が静かに言った。
「…………じゃあ…これから役に立つように頑張ってください、二度と私達のような犠牲を出さないように…」
そしてその人間は俯いたまま後ろを向いてゆっくりと歩き始めたと思うとピタリと足を止めた。
「できるのもならね?」
「どわぁぁぁッッ!!!!!!」
そこで俺は目を覚ました、勢いよく布団から起き上がった、汗がダラダラでまるで漫画の様だった、トラックにかけられた水のせいもあるだろう。
「……外の空気を浴びてくるか…………」
俺はゆっくり立ち上がって惹かれるように玄関へと向かった、半分寝ぼけながら片方だけサンダルを履いて扉を開けた。
すると玄関の前に大きな箱がポツリと置いてあった、ホームセンターにある、工具箱の様な無機質な箱だった。
「……何だこの箱…誰が置いたんだ…」
俺はなんのためらいもなく箱に手をかけ、勢いよくガバッ!っと開けた、中には誰もが見た事あるであろうあの金属のフォルムが輝いていた。
「!! ま………まじかよッ! これッ!まじもんかよッッ!?!」
箱の中身は
大量の実銃だった。