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第2話

「すまないな、この祝いの場でこのことを教えてしまって」


そう告げるカランの顔に浮かんでいたのは私に対する嘲笑だった。

そしてその笑みに私はカランがこの場で婚約破棄について告げたのは意図的であったことを理解する。

婚約破棄は女性にとって絶対に避けたい不名誉だ。

そしてその不名誉をきわ立てるためだけにカランはこの場で婚約破棄を大々的に告げたのだろう。

それは、性格の腐っているカランらしい嫌がらせだ。


ーーー けれども、そのカランの腐った性根に私は今、感謝を捧げていた。


ここまで大人数の前で婚約破棄を告げてしまえば間違いだったなど通ることはないのだ。

私は必死にようやくこの男から解放されるという開放感につい緩んでしまいそうな口元を締める。

流石にこの場で笑いだすのは不審すぎる。

けれども、笑いが堪えることができず私は俯いて肩を震わせる。


「おや、その反応は心外だなぁ!」


その私の反応をどう勘違いしたのか、カインが愉悦を隠そうとしない声を上げる。


「泣きたいのは私の方なのだよ!君みたいな地味眼鏡の平民あがりを押し付けられた私がどれほど苦しんだのか、君にわかるかい!」


ここぞとばかりに私に心無い言葉を浴びせるカイン。


「まぁ、お可哀想に」


「だが、これでカラン様もあの女から解放されるのだな」


けれども、周囲が賛同するのはカランだけ。

それは私に対する貴族の心象がどれほど悪いのかを示していた。


「地味眼鏡………」


……その罵倒に私はぽつりと言葉を漏らす。

周囲の心無い罵声に心が傷つけられて……ではなく、とることを忘れていたのに気づいて。


「そう言えば、忘れてたな……」


「………は?」


ーーー そして次の瞬間、ぼさぼさの髪を模したかつらと、やたらレンズがでかい伊達眼鏡を外した私の姿に周囲にどよめきが起こった。








◇◆◇







精霊の契約者、絶大な力を持つ彼らのほとんどには実はある特徴がある。

それはある程度美形なのだ。

まぁ、実際には精霊の寵愛を受けているせいである程度美形に見える、というだけなのだが、私の場合は母の血を受け継いだのかかなりの美貌を誇るらしい。

そのせいで貴族の妾ととして狙われないよう、実は私は幼少の頃から顔と艶やかな髪を隠すために、伊達眼鏡とぼさぼさのかつらを着用していたのだ。


「お、お前、サーマリアなのか……」


「はい、そうですが?」


そして始めて私の素顔を見たカランは何故かその顔を赤らめていた。

それは非常に気持ちの悪い態度で、私は吐き気を催すが、とりあえず表面上は取り繕って返事をする。


「ふ、ふははは!お前はそんな見た目をしていたのか!しょうがない!お前を私の妾にしてやろう!本来ならば、婚約破棄した相手にこんな温情を……」


……すると次の瞬間、カランは暴走し始めた。

正直、見るに耐えない……

なので私は最後に言葉を残して、この場を後にすることにした。


「生理的に無理なので結構です」


「与えることなどあり………え?」


私の言葉が信じられなかったのか、次の瞬間カランの顔に隠しきれない驚愕が浮かぶ。

けれどもその瞬間には私は走って広場を後にしていた……

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