第16話
「な、何故精霊の力が………」
アルセラーンの雷撃、それを見た国王は何時ものあの嫌味な態度を忘れるほどに動揺していた。
それほどまでに国王は王族の結世のなか、アルセラーンが精霊の力を振るったのが信じられなかったらしい。
まぁ、大精霊でも万全の状態でないと打ち破れない結界なのだ。
過信するのも無理はないかもしれない。
「これがご自慢の能力?」
「っ!」
けれども私は、そう思いながらも表面的には小馬鹿にする態度をとってみせた。
この場にいる全員に王族の力さえ凌駕する能力を私は持っているのだと示すために。
「くっ!」
そしてその目論み通りに、この場いる人間から私へと注がれる視線に、隠しきれない恐怖が混ざり出す。
「サーマリア、貴様もしかして大精霊と契約を……」
……けれども、そんな中で唯一アルセラーンの正体に勘づいた国王だけは周囲とは別の反応をとっていた。
その国王の態度に一瞬、私は脅しが足りなかったかと後悔を抱く。
何せ私がここで敢えて周囲に恐怖を抱かせるような態度を取っているのは後々かかわっくる面倒な人間を減らすためだ。
けれどもアルセラーンの正体に驚く国王の姿は周囲と比べ、恐怖の色が薄かったのだ。
けれども国王がアルセラーンの正体を察したのを見て、私は国王は放置すること決めることにした。
アルセラーンが大精霊と理解している人間が私達に歯向かうと私は考えられなかったのだ。
「っ!?」
………けれども次の瞬間、国王の口許に浮かんだいびつな笑みに、私はその自分の考えが甘かったことを悟ることとなった。
◇◆◇
国王の顔に浮かんだ笑み、それは国王の欲望がありありと浮かんだものだった。
………そして私はその笑みに国王が何を考えているのかを悟る。
そう、現在国王は大精霊という破格外の戦力を手にした未来を想像しているのだ。
ーーーつまり国王は何としてでも私を服従させようとかんがているのだ。
「はぁ……」
………そして私はその国王の考えを悟った瞬間思わず溜め息を漏らしていた。
確かに王族の有する結界、それは人間が有する力の中では破格外の性能だろう。
「……だけど流石に過信しすぎでしょう」
だが、そんな結界を使おうが全力を振るえるアルセラーンには勝てない。
国王の考えは大精霊の力をなめているとしか思えないものなのだ。
そして国王はもう一つ致命的な間違いを犯していた……
「戦えるのはアルセラーンだけじゃないのに……」
だから、親切な私は国王にその間違いを教えてあげることにする。
「多分、私かなり強いよ」
「なっ、サーマリア!?」
ーーー 次の瞬間、その私の言葉に応じるように、先程アルセラーンが使った魔術にもひけをとらない強力な雷の球体が、私の手のひらに顕現した。