第15話
今までの言葉、それは私からすれば王族にかける最後の情けだった。
何せやる前から勝負は分かっているのだから。
「……契約者ごときが、王国を敵に回すつもりか?」
……けれども、その私の言葉に対する国王の返答は怒りに満ちた言葉だった。
そしてその言葉に反応し、私の周囲を囲むように立っていた衛兵達が私へとその手に持つ槍を向ける。
「はぁ……」
国王達のその反応、それに私は思わずため息を漏らしていた。
国王の反応、それは私が通常の契約者であれば、決して間違ったものではなかった。
……何せ、王族の周囲には精霊の能力を抑制する結界が構成されているのだから。
王族のそばにいる限り精霊は力が使えなくなるというわけではないが、格段に能力が落ちる。
しかも私の周囲を取り囲んでいる衛兵達はこの王国の中でも屈指の力を有する戦士だ。
この状態ではいくら契約者が集まろうが、王族に刃向かうことはできない。
それ程までに王族のその力は強力なのだ。
そしてその王族の力をアルセラーンは大精霊の力でなければありえない大精霊の加護と呼び、私も今までその力のせいで苦渋を飲まされてきた。
結界さえ無ければ私は数年前に目的を果たせていただろうし、感知能力がなければここまで必死に力を隠す必要もなかった。
昔の私にとって、王族の大精霊の加護はどれほど忌々しかったことか。
「………でも、もうその結界じゃ力不足」
ーーー しかし、今の私にとっては王族の結界はただただ脆弱な壁でしかなかった。
国王たちの態度に私はそう小さく言葉を漏らす。
「っ!」
そして次の瞬間、私へと迫っていた衛兵が顔を強ばらせた。
私の言葉が聞こえたわけでもないだろうにも関わらず、何かを感知したらしい。
その姿に私は一瞬場違いにも青年に対して感心する。
彼は想像以上の実力を有していたらしい。
「がはっ!」
……しかしその彼でさえ、私の危機にアルセラーンが放った魔術をかわすことは出来ずにあっさりと意識を手放した。
「………は?」
そして次の瞬間、王座の間にー広がる倒れた衛兵たちの姿を見た国王の間の抜けた声が響いた………