第11話
「お待ちしておりました。サーマリア様」
アルセラーンの力を使い、王宮に辿り着いた時私を待っていたのは高価な服に身を包んだ文官だった。
普通王宮に訪れる時、特に王族と会おうと思えばいくら貴族であれ数日前から申請するのが普通だ。
だが今回私は数日前どころか、許可さえ取らずに王宮に来ていた。
けれども、私を待っていたのは衛兵の冷たい拒絶では無く、やけに丁寧なお出迎え。
そしてそれは国王がもう私が契約者であるといくことに気づいていることを示していた。
「お出迎えありがとうございます」
「では、こちらに」
けれども私はその事実に驚愕することはなく素直に礼を告げ、文官の後ろについて歩き出した。
今まで私はアルセラーンの力を徹底して使わず、殆ど精霊の世界に閉じこもってもらっていたからこそ契約者であることを隠し通すことができた。
だが今回、アストレッド家の屋敷を壊した際にアルセラーンは大精霊としての力を隠すことなく使った。
……そして大精霊が力を使って、精霊達がそのことに気づかない訳が無いのだ。
今頃精霊を感知する能力が低いとされる巫女でさえ、何かが起きていると分かるほどの大騒ぎを精霊達はしているだろう。
……そしてそんな状況になって、大精霊の加護を有する王族が私という契約者の存在に気づかない訳が無いのだ。
「……本当に忌々しい加護」
そこまで考えて、苛立ちのあまり私はそんな言葉を漏らす。
それは酷く小さな声な上、例え誰かの耳に入ったとしてもどういう意味か分からないような言葉だ。
だが、その言葉には溢れんばかりの怒りが込められていて、その怒りを察知したのか私の周囲を漂う光の玉、俗に小精霊と呼ばれる存在が居心地悪げにふらふらと揺れるのがわかる。
だが一言だけでは私の苛立ちは治ることはなく、私は続けざまにもう一度口を開きかけて。
「何で私があんな地味な女の機嫌を取らないといけないんだ……」
………しかし次の瞬間、向こうから歩いて来た男性の姿に私はその顔を歪めることになった。