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第9話

「………やり過ぎた?」


カールマンとカランが逃げていくその無様な姿、それを見て私は少しの間満足感を浸っていたが、けれども屋敷の惨状に気づき、そうぽつりと言葉を漏らした。

それは最初の計画であれば、全く想定していなかった事態で、だからこそ私は少し羽目を外し過ぎたことを理解する。


「………サーマリア」


そして、アルセラーンが私を呆れたような目で見ていることにも。


「えっと、なんか別に婚約破棄とか勘当とかして貰わなくても脅せば何とかなった気がするね……あは、あはは……」


そのアルセラーンの視線に耐えきれず、私はバツの悪さを誤魔化すようにそう笑ってみせる。


「………それで」


けれども、そんなことでアルセラーンが誤魔化せるわけがなかった。

アルセラーンの淡々とした言葉には決して私を責める響きはない。

けれどもその代わりに本当にそう思えるのか、とでもいうような無機質な響きが込められていて。


「ご、ごめんなさい……」


私には素直にアルセラーンに謝る以外の選択肢は残されていなかった。

その私の態度にアルセラーンはその顔に浮かんだ呆れの色を濃くして、口を開いた。


「特に、あのカランという小僧の前で容姿を明かす必要はあったのか?」


「うぐっ!」


そしてアルセラーンの口から出た言葉は紛うことなき正論で、私は思わず身体を小さくする。

何せ、あの時の行動は衝動的なものでしかなかったのだから。


「………カランには常日頃私を見て、お前は私に相応しくない、何て言ってきていたから、つい衝動的になっちゃったんだと思う」


カランは決してそこまで自慢できるような美貌を有していない。

控えめに言ったとしても中の上程度の容姿で、貴族の中では平々凡々な容姿しか持っていない。

だからこそ、カランは自分が圧倒的優位に立てる人間に対しては自分が美しいと認めるように強要していた。

だからこそ、平々凡々な私は、嘲る事でそのちっぽけな優越感を満たすダシにされてきたのだ。


「だから、ついカッとなっちゃったんだと思う………」


それは我ながらあまりにも情けない理由で私は思わず肩を落とす。

これでは、アルセラーンに怒られても仕方がないと私は唇を噛み締めて。


「………そうか」


「え………?」


……けれども、アルセラーンは私に何かを告げることはなかった。

確かにアルセラーン達契約精霊は契約者に甘いと言われている。

だが、アルセラーンに関しては私の師匠にあたる存在でもあり、私を叱責することを躊躇するような性格ではない。

けれども、何故か今回のアルセラーンはそれ以上私に何か言うことなくあっさりと口を噤んでしまった。

そのアルセラーンの態度に私は少し、気味の悪さを感じる。


「あれ?」


………けれどもその気味の悪さは次の瞬間、ふと心に湧き出たある疑問に押し流されていくことになった。


私は確かにカランに意趣返しをしようと思い、それだけのためにここまでの騒ぎを起こした。

つまり私はここまでの騒ぎを起こしてもカランに仕返しをしたかったはず、なのだ。

なのに現在 、私はカランの方には何も仕返しをしていない状況に限らず、カランに対しては何も感じていない。


……いや、そもそも何故私はカランに仕返ししようとしてこの屋敷を潰したのか?


その疑問は胸の中で膨れ上がり、私は酷い違和感を感じる。

けれども、いくら考えたところで私がその違和感の元を理解することは無かった……

本日は2話投稿になります!

午後七時に投稿予定です!

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