参
ザアァァァァァァァ・・・・・。
雨が降っている。
私は肩を濡らしながら、ここに立っていた。
いつから、ここにこうして立っていたのか。
もう忘れちゃった。
ただずっと、ここにこうして立っている。
顔を上げて空を見る。
見慣れたジェットコースターの錆びたレールと、暗く沈んだ雨雲が目に入った。
ザアァァァァァァァ・・・・・。
雨が降っている。
私は肩を濡らしながら、空を見ていた。
私は、こんなところで何をしているんだろう。
もう何もわからない。
気づいたときには、ここにいた。
ここには、私以外誰もいない。
たまに来る人もみんな、すぐにいなくなっちゃうから。
私はずっと、一人でここにいる。
ザアァァァァァァァ・・・・・。
雨が降っている。
今日は珍しく、久しぶりに歩いてみた。
錆びた遊具や建物が寂しく建っている。
この遊園地も、昔は人で賑わってたのにね。
雨のせいか、つい感傷的になってしまう。
立ち止まって空を仰いだ。
あはは。
結局、いつもと同じだ。
可笑しくなっちゃう。
・・・もう少しだけ、歩いてみよう。
あれ、珍しいな、人がいる。
私は肩を濡らしながら、その人に話しかけた。
・・・・。
廃墟巡り?
たまに来るね、そんな人たち。
みんな、****ったけど。
・・・ジェットコースター?
うれしいな、向こうにあるよ。
案内しようか?
ほら、こっちだよ。
え?事故?
・・・ああ、何かあったらしいね。
私はよく知らないけど。
なんでだろう、みんな言ってること違うみたいだね。
そうそう、どんな事故だったのか。
・・・私?
知りたい?
私が知ってる『事故』のこと。
何で知ってるかは、私もわからないんだけど。
ほら、そこにたって。
あのレールが見える?
昔ね、まだあれが使われてた頃、あそこで人が消えちゃったんだって。
ほら、安全のためについてる棒みたいなのがあるでしょ?
あれが壊れてたみたい。
そのせいで、人が一人落ちちゃった。
でもね、その人の死体は見つからなかったの。
地面に落ちたはずなのに、どこにもなかった。
どこに行ったんだろうね。
なくなるわけ、ないのに。
ちょっとした怪談だよね、これ。
怖い?
・・・そうでもない?
へえ、じゃあ、これはどうかな?
その落ちた死体、どうなったと思う?
落ちて、拉げて、潰れて・・・。
その『女の子』は、どうなったと思う?
落ちて、拉げて、潰れて・・・。
気が付いたら、ここにいた。
今もいるんだよ?
今もいて、人が来るのを待ってるの。
人が来たら、近づいて、後からがぶりって。
信じられる?
今もいるんだよ?
もう何十年もたつのに。
ほら、口元を真っ赤に染めてさ。
頭からこう、バリバリと。
ずっと一人で、お腹をすかせて待ってたんだよ。
だからさ、人が来るともう大喜びなの。
あはは。
久しぶりの、『ご馳走』だからね。
・・・・・。
雨が降っている。
私は肩を濡らしながら、ここでずっと待っている。