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壱つ目

夜。

もうすっかり暗くなった道を、二人の女子大生が歩いていた。

こうも暗いと、黙って歩くのは怖いと、雑談を交わしながら歩いている。

「そういえば、この近くに遊園地があるの知ってる?」

「遊園地?

 ああ、何か廃園になったとこがあったね。

 それがどうしたの?」

「そこ、出るんだって。」

両手を前でだらんとさせて、楽しそうに応えた。

よくある幽霊のポーズだ。

「やめてよ、都市伝説でしょ?

 暗いところにしばらくいると、なんでもないものでも怖いものに見えたりするの。」

「そうだけど、面白そうじゃん。

 ね、行ってみよう?」

「いやよ、帰りが遅くなるじゃない。

 あのね、そういうお化けなんかよりも、人間のほうが怖いのよ?

 ほら、最近多いじゃない、変質者。

 この前も、その遊園地でウサギの着ぐるみを着た人が、高校生くらいの男の子の死体をを引きずってどこかへ持ってったって言うじゃない。」

「初耳だし、そんなさらっと言うことじゃないよね!

 怖いよ!」

「ね、そんなのに会いたくないでしょ?」

「そうだけど、その人だっていつもいるわけじゃないよ。

 だから、ね、行こう?」

「さっきの話聞いてまだ行きたいの?

 やめときなさい、危ないでしょ?」

「って、言っても、もう着いてるんだけどね。」

「え?」

思わず間の抜けた声を出した。

街頭の明かりに照らされて、「裏野ドリームランド」と書かれた看板が見える。

なぜか門は開いていた。

誘われているような気分になる。


相方はパッパと中に入ってしまった。

「絶対やばいでしょ、ここ。」

一人で帰るのも怖いので、ため息をつきながら友人を追った。



「ほらほら、早くぅ。

 行っちゃうよ?」

「ちょっと待ちなさい、子どもじゃないんだから。

 て言うか、どこ見るかわかってんの?」

「えっとねえ、私が知ってるのは、観覧車とメリーゴーランドだよ。」

ようやく立ち止まって、

「観覧車は、近くによると『だして』って声がするんだって。

 メリーゴーランドは・・・、何かひとりでに廻ってるんだって。」

「何よそれ。」

呆れながらも、やれやれと言う風について行く。

いい友人だ。

「じゃあまずは、メリーゴーランドに行こうよ。」



スマホの明かりを頼りに、暗い中を進む。

残念ながら地図はなく、現在地はわからない。

出口はアプリでなんとか探せるが、アトラクションは探せないのだ。

「あ、見えたよ、アレだよね?」

「来たことないんだから、私に聞かないで。」

遠くで、カラフルな光を纏った馬がうろついている。

おそらくあれだろう。

近づいて眺めてみる。

「きれいだね。」

「そうね。」

色とりどりのイルミネーションが輝いている。

「ねえねえ、乗ってみない?」

「やめときなさい。

 邪魔しちゃ悪いでしょ。」

「・・・誰の?」

そのまま踵を返す。

「見えないの?

 楽しそうに遊んでるじゃない。」

「だから誰が!?」

無視して行ってしまう。

「ねえ、待ってよ。

 ねえ、ったら!」

今度は彼女が友を追った。



そして、散々歩いて到着した観覧車。

「ねえ、何か聴こえない?」

「聴こえてるわよ、さっきから。

 声を頼りに歩いたんだから。」

「・・・誰の声?」

しらないわよ、と応えて、視線を籠の中に向ける。

少し顔を歪めて。

「あ、また聴こえた!

 たすけてって。」

「・・・ええ、そうね。」

「観覧車の中からだよね!

 開けてあげようよ!」

「・・・やめときなさい。

 彼らの仲間入りするだけでしょう。」

「…彼らって?」


ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

シンとした空間に、ドアを叩く音が響く。

ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

ハッとして観覧車を見ても、その中には、誰もいない。

ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

しかし、その戸は震えていた。

ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

その内側から、何人もの人間が叩いているかのように。

ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

見えない者にも、その異常は感じ取れた。

「な、なに?」

ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。


音は少しずつ大きくなっていく。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

「・・・もう帰りましょう。」

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

「えぇ?あれなに?」

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

「もういいでしょ。

 ・・・見てられないのよ。」

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

手を牽かれながら、観覧車を後にする。

去り際、ふと後ろを振り向くと、闇に慣れた目に、何人もの人影が立っているのが映った。

ほんのついさっきまで誰もいなかった、観覧車の中に。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

ドン、ドン、ドン・・・・・・・。

ドン、ドン・・・・。

・・・・・・・。

・・・。

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