邂逅♡ウサ耳幼女
突然だが、俺には前世の記憶がある。
そう、御察しの通り巷で流行の「転生」、しかも王道中の王道「異世界転生」である。
まぁ前世の記憶といっても、覚えているのはおぼろげな日常生活と自分の名前だけで、家族構成や友人関係、好きな食べ物や嫌いな食べ物、その他諸々の所謂「思い出記憶」に分類される記憶は壊滅状態なのだが。前世の俺がどんな人生を送ってどうして死んだのかとか、そう言う細かな記憶はほとんど覚えていない。
逆に「情報記憶」の方は案外はっきりと覚えている。
マンガとかアニメとかウェブ小説とか、そういった方面の情報ばかり偏って記憶しているから、きっと前世の俺は相当なオタク野郎だったんだろうと思う。妙な雑学は大量に記憶しているクセに、社会的な記憶は飲食店での接客ノウハウ(バイト用)とかしか見当たらないから、もしかしたら前世の俺は学生の身で死んだか、ちょろっとだけバイトしたことのある引きこもりNEETだったかのどちらかだったのだのだろう。俺的には前者であってほしいところなのだが。
で、だ。
なんで俺が急にこんなことを語り始めたのかと言うと。
「…………あ、あの……」
異世界最高!!!!
湧き上がる衝動のままそう叫びたくなるような美幼女が、今、俺の目の前に降臨しているためだったりする。
ご丁寧に、人里離れた深い森の中で、豪華な輿に乗り煌びやかな衣装を身につけ、涙目でもっふもふのウサ耳をふるふるさせているという完璧ぶり。
もう一度言う。
「第一印象から決めてました! 俺の子を産んでください!!」
「えっ」
おっと間違えた。
「異世界、最高!!!!」
そう声高に嘶いた俺を見て、ウサ耳幼女がビクッと身を竦ませて、ただでさえ小さな体をぎゅっと縮こまらせた。
何とも破壊力抜群な仕草。やだ……興奮して蹄で地面抉っちゃう……。
あっ、申し遅れました。
俺、一角優馬と申します。イッカクが苗字で、ユウマが名前です。
偶然にも前世の記憶を宿したまま地球ではない異世界に生を受け、この度めでたくウサ耳幼女の伴侶候補(確定)をゲットいたしました。
折角なので、前世からの夢だった「光源氏計画」を実行しようと思います。
大切なことなのでもう一度。
異世界、最っっっ高!!!!