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明智小五郎(あけちしょうごろう)の事件簿

総武線は毎日遅延する

作者: 鮫田鎮元斎
掲載日:2016/10/23

この作品は、遅延に巻き込まれた作者のイライラから誕生したしょーもない短編作品である。

「まぁるい緑の山手線……まんなか通るは…………中央線じゃないだろ」


 俺はJRの路線図を見てそう思った。

 よーく見てみると、中央線は若干曲がって交わっているのがわかる。

 真ん中を分断するように通っているのだ。

 

 ちなみにちゃんと直線で交わっているのは総武線の方だ。

 それに山手線はいうほど丸くなってない。

 地図上で見るとイチゴ型に近い外周をしている。


「わっかんねぇー」


 俺は時刻表を放り出してため息をついた。


「おーい、貧乏た……どうしたの?」


 ちょうどそのとき薫がやってきて、(珍しく)へこんでいる俺を見て心配そうな顔をする。


「どうもこうもあるかよ……ひょろ刑事の持ってきた事件が難しすぎんだ!」

「へぇあんたもいいご身分になったじゃないの」

「残念でした。個人的な相談だから報酬は出ないんですよー」

「べ、別に期待なんかしてないわ……で?」

「なんだよ」

「どんな事件なの? あんたが苦戦するくらい難しい事件なんでしょ」

「……話すだけ無駄だぞ」

「いいじゃない、お金とるわけじゃないんだし」


 ……ま、いっか。

 俺は例の事件について語ることにした。















――――――数時間前


 なんの前ぶれもなくひょろ刑事がやってきた。


「おお! いつぞやの刑事さん。今日はどういったご用件で?」

「…………君に頼みがある」


 と、彼は現在発生しているという難事件について話す。

 このとき名刺を渡してもらったので彼の本名が広田樹生ひろたみきおと判明したが、今後もひょろ刑事と呼ばせてもらうことにする。わかりやすいし。


 話を戻そう。

 その事件が勃発したのは朝の、大体6時ごろだったのだという。

 千葉県某所の民家で殺人事件が起こったのだとか。人通りも少なく目撃者は少なかったのだが、証拠物件が数多く存在し瞬く間に犯人を特定したのだとか。

 で、逮捕する段になってから問題が発生して、犯人には鉄壁のアリバイがあるらしいのだ。

 自分は電車に乗っていたから犯行は不可能だと。

 まーもちろんこんなのすぐ崩される、かと思いきや。どういうわけか完璧に覆せない。

 事件発生後、駅の防犯カメラには犯人の姿が映っていたのだが、降車駅の防犯カメラとの時間がどうにもかみ合わないのだとか。

 

 っつーわけで俺のところに依頼しにきたというわけでした、まる。


















「…………さっぱりわかんない」

「だろ?」

「そもそも何? 時間がかみ合わないって」

「乗り替えの話だ」


 犯人の証言いわく、自分は総武線から快速に乗り換えて東京駅へ行ったのだとか。

 しかし、乗っていたと思われる電車が乗り継ぎ駅に着く時刻はちょうど快速が発車する時刻に一致する。

 ホームを飛び越える身体能力がなければ乗り換えることができないのである。


「おかしいだろ? 一瞬で乗り換えができたらもっと通勤通学が楽になっるってもんだ」

「じゃ警察の見立てが間違ってたんじゃないの?」

「日本の警察は優秀なんだぞ……一応」


 ま、こんなん犯人がぼろを出して終わりだろうけどな。


「それで? ここに来た目的は何だ?」

「これよ。依頼を持ってきてあげたの、全力で感謝しなさい!」


 薫が得意げに渡してきた書類を読んでみる。

 えーと『毎日電車の遅延で学校に遅刻しそうになってます。どうか効率的な乗り換えルートを発見してください』……って、


「俺は便利屋じゃねぇっ!!」


 こんなもんシュレッダー送りにしてや……。

 待て、何か引っかかったぞ。

 遅延。

 効率的な乗り換えルート。

 …………あ。


「なんだ、そういうことか」

「え? どうかしたの?」

「事件の謎が解けたよ」

「……本当に?」

「ああ」


 この事件のトリックは、一言でいうなら……遅延だ。

 犯人が駅についてから電車が来るまで約3分。それに乗ったら乗り継ぎ駅についた瞬間に快速電車が来て乗り換え失敗だ。

 だが、前の電車が遅れていたら?

 着いた瞬間に到着した電車に乗っていれば、乗り換えまでに3分の猶予があるはずだ。

 そうすれば不可解なタイムラグも解決する。


「――ってのが事件のからくりだ」

「ふーん、犯人も運がよかったわね」

「そうだな」


 ま、あいつみたいなすげぇ事件を起こせる奴はそう居ないけどな。

 こんな都合のいい遅延に助けられるような……待て。

 あるのか? こんなに都合よく。

 ピッタリと遅延した電車に乗れるなんて、ほとんどあり得ない。


 俺はがっかりしている薫が帰ったあと、ひょろ刑事に電話することにした。





「――――て、ことなんですが」

『……君の言う通り、それは変だ…………日本の電車はめったなことでは遅延しないことで有名』

「だから、協力者がいたはずなんです。犯人の逃走を助けた人物が」


 例えば、わざと体調不良を訴える、とか。

 そうすれば数分くらいは電車を止められる……はずだ。


「……ま、単なる妄想です。忘れてください」


 俺はそう言って電話を切った。

 あいつがそう簡単に尻尾を出すとは思えないからな。

 雨宮レイナ、もしお前がこの事件を仕組んでるんだとしたら、結構なミスだと思うぜ。

 別件とはいえ、俺のもとにこんな依頼が来てるんだからな。


 薫が持ってきた『乗り換えルートを検討してほしい』って話、あながち無駄じゃなかったかもな。

 せっかくだから、利用させてもらうぜ。

※この作品はフィクションです。実際にある鉄道会社をdisる意図はございません

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