桃太郎(ただし、スク水ランドセル)
僕こと『封魔士』――風間ジンタ。
王様の使者――『対魔汎用型超超絶スーパー決戦兵器』ニーナ。
それに加わることの『隣国の姫君』――アルル・ズムバーン。
パーティの人数が増えて、割かし賑やかになったような気もするけれど……しかし、新たな旅の仲間を得たとは決して言い難い。
僕は「川を流れてきた彼女をこんな殺風景な道に放っておくことはできない」という理由で、アルルを連れていこうと提案した。ニーナさんはそれを快く受けてはくれたけれど、その実、内心は複雑だったに違いない。
なんせアルルは、ニーナさんの本当の主人である、王様の敵国民なのだ。
ニーナさんの不機嫌はありありと伝わってくる。
それでも提案を呑んでくれたことには変わりないけれど――でも、なんだか気まずい、ギクシャクした空気が僕たちの間に、たしかにあった。
こういうとき、僕はどんな風に振る舞えばいいのか、わからない。
「ほら、動かないでください。せっかく私が服を貸してあげようといっているのに……まったくこのジャリは……。ドレスなんて一人で着れるものではないでしょう。大人しく身ぐるみを剥がれなさい!」
そして、ニーナさんが持ち出した手の平サイズのポシェットから、どう考えても物理法則を無視した試着室的なピンクの建造物が現れ、その中で女性二人が着替えをしているときも――僕にはどんな風に振る舞えばいいのか、わからない。
「……いったいどういう仕組みなんだ……」
僕は河川敷きの草の上に三角座りして、誰に言うでもなくポツリと零した。
びしょ濡れになったアルルの服――「そんな小汚い濡れネズミの状態のまま放っておくことはできません」と、ニーナさんはどこからか、ガマ口のポシェットを取り出したのがつい先ほど。
その小さなガマ口から、大人二人が入れるほどのコレが飛び出てきたのだ。
幅と奥行き一メートル、高さが二メートルほどの箱――薄いカーテンごしに、ニーナさんとアルルの影が映っている。照明がピンクなのも本当に謎だ。
「さあ、終わりましたよ」
ニーナさんの声に合わせて、カーテンが、さっと開く。
そこには、ふりふりのメイドコスをしたアルルの姿があった――
「どうでしょうか、ジンタ様。このコーディネート、男の人なら生唾ものでしょう」
――とかなら、僕も反応には困らなかっただろう。
「…………」
「…………」
困惑する僕と、恥ずかしそうにうつむくアルル。
ふりふりまでは合ってた。
けれど、そのファッションは致命的なまでに組み合わせを間違えている。
アルルの細い身体のラインを浮き上がらせる――その肌にぴったりと添った、藍色の服。
服……というか水着だ。
腰にフリルのついたスクール水着だ。
何故か背中にはランドセルを背負っていて、隙間からリコーダーと定規が突き出ている。
スク水ランドセルにリコーダー。
「…………うん」
ドレスがどうとか言っていた気がするけれど、あれはなんだったのか……。
こういうとき――どんな風に振る舞えばいいのか、僕は本当にわからない。
「なんで……なんであたしがこんな格好を……」
可哀想にアルルは涙目になっている。
羞恥に耐えてプルプル震えている少女の図がそこにはあった。
僕は訊く。
「ねえ、ニーナさん。……なにこれ?」
「エンジェルランドセルです。背筋ぴょーんですよ」
ぴょーんと、空に手を掲げて、よくわからないポーズをとるニーナさん。
……なんだろう。
ニーナさんが、だんだんと露骨になっている気がする。
「へえそうなんだすごいね。ていうか、誰もランドセルのことなんて訊いてないんだけどね? それより、アルルが今にも泣き出しそうなんだけど……もしかしてこれは新手の嫌がらせか何かかな?」
いえ、そんな、まさか、とニーナさんはかぶりを振って、
「奇を衒ってロボット化とか、最悪、段ボールに『○ンダム』と書いて、頭から被せてやろうとかも考えましたが……きっとジンタ様が怒るだろうと思い留まり……あ、申し訳ありません。そんなに睨まないでください、冗談ですよ、怒らないでください。イッツ・ジョークです。代えの服はこれしか持っていなかったのです。本当です。私、ニーナはロボットですよ? ロボットは嘘を付きません。三原則を作ったアイザックさんも、そう言っていたではありませんか」
「…………」
大きく嘆息する僕。
どうやら……件のビームといい、ニーナさんは常識では考えられないアイテムを持っているらしい。多分これだけじゃ済まないのだろう。覚悟だけはしておかなきゃいけない。
……僕の脳で許容できるかが一番の心配だけれど。
■ニーナ
職業:王の使い メイドロボ
スキル:『超超絶スーパーニーナ砲』
アイテム:『ガマ口ポシェット?』←new!
■アルル・ズムバーン
職業:隣国の姫君
武器:『リコーダー』←new!
防具:『スクール水着』←new!
・フリル付き
アイテム:『ランドセル』←new!
お尻:あり
・PK解除