風雲犬山城
前回のあらすじ
六角勢は北伊勢攻略を諦め、撤退。
志摩の九鬼はついに木造に屈服した。
小牧山城の激戦から三日後・・・物語はここ犬山城から始まる。
なに?全然そんな所物語に関わっていなかったじゃんかって?まあこの作品は場当たり的なんで・・・
犬山城は今でいう愛知県犬山市にある、平地の小高い丘にある平山城だ。木曾川のほとりにあり、尾張、美濃との境にある重要拠点である。
作者もこの犬山城には行った事があるのだが、意外と天守までいく階段が急で、なるほど敵に備えているのだなと感心しました。
ちょうどその頃、「あいち戦国姫隊」が犬山城に来てまして、結局城の写真や一緒に行った人の写真よりそのアイドルばかり取ってまして、後日「なにしに行ったんだろう・・・」と思いました・・・
ああ脱線してしまいましたね、話を本筋に戻します。
犬山城は織田信清が天文十三年頃に城主になり、現在にいたっている。
その城主である織田信清が多くの家臣に詰められていた。
「信清様はなぜ斉藤義龍なぞの口車に乗ったのですか!!」
「いやだって、攻めるぞと脅すから・・・」
「もうちょっとしっかりしてくださいよ!!」
この織田信清という人物、どうにも優柔不断というかはっきりとしない。織田信長の姉を正室に迎えているのにも関わらず、桶狭間の戦いには信長に援軍を出さず、さりとて今川・北畠軍にも与しないとい傍観的態度を取り続けた。
戦後、信長に味方しなかったので所領を安堵されるが、それでも北畠勢力下には与しないというハッキリしない態度を取り続ける。そして斉藤軍が尾張侵攻してきた時も、止める訳でも味方する訳でもなく、兎に角ハッキリしなかった。
そして遂にその中途半端さ故の苦難に陥っているのだ。
「そんな言い訳通じないでしょうが。いくら北畠具教殿と言えども、怒って攻めてきますよ!!」
「そんな事言ったって・・・」
まだ斉藤軍が勝っていれば良かったが、撃退された今となっては、尾張の地は反北畠にとって非常に都合が悪い。
「ともかく北畠具教殿に使者を・・・」
そう家臣が言いかけた時、一人の若侍が大汗をかきながら織田信清の元に飛び込んできた。
「大変です!!雪姫率いる軍団が小牧山城から出立。こちらに進軍中との事!!」
「なにあの<白の軍団>が!!織田信清様、どうするつもりで!!」
全身白色の鎧を纏っている雪姫の部隊は、まわりからは<白の軍団>と言われ恐れられていた。まあ中二病的なネーミングですけど、その辺は許してくださいね。
「相手は一万を超す斉藤勢を僅か数百で撃ち滅ぼした雪姫ですよ!!我らではとても」
噂は広がっていくものだが、雪姫の場合それらやけに誇張されている。故に織田信清方の恐怖は計り知れないものになっていた。
「・・・まだ味方の出城がある。それらが食い止めている間に対応を協議したら・・・」
織田信清はこの期にいったても、決断を決めかねていたのだが・・・続け様に新しい報告を聞いて、もう決断するしかなかった・・・
「織田信清様!!弟君織田広良様の黒田城が戦わずして投降いたしました!!」
「なんだとあの広良が!!」
「小口城・楽田城も次々に降伏しております。大道寺砦などは健在でありますが、お味方は総崩れでございます」
「雪姫の軍団が戦わずして、犬山城へ向かってきております。もう止めようがありません!!」
そうして織田信清はポツリと呟くのであった。
「・・・もうダメだ・・・」
雪姫率いる五百の軍勢は、降り積もっている雪を踏みしめながら進軍していた。この前の嵐のような風雪が嘘のように晴れ渡っている。
「まったく織田信清め!!裏切りおって!!」
「藤光、そういきり立たないで。今回は戦をするつもりではないのだから」
顔を真っ赤にして怒っている細野藤光を、雪姫がやさしく諫めている。
「分かっております、さすがに五百で名城犬山城を落とせる事は無理でございます。ただ一言文句でも言わないと気が済まない!!」
斉藤勢を撃退され、北畠具教始め諸将は一旦清州城に集まり、戦勝の賀詞をおこなう手筈になっていたが、雪姫はその前に犬山城に向かっていたのだ。
事の是非はともかく、織田信清の態度はハッキリとさせておかなくてはならないと思っていた為だ。敵になるならなるで、そのまま犬山城前に陣取り、援軍の到着を待つ。
味方になるなら、人質を取って清州城に行こうと考えていたのだ。先の大戦で雪姫の部隊の損傷は激しく、単独での犬山城攻略はとても無理だと思っていたのだが・・・
「・・・ってか雪姫様。特に抵抗もなく犬山城に着きましたな」
この二人が馬に乗りながら話しているうちに、織田信清の根拠地、犬山城に到着したのだ。呆気ないほど抵抗もなく、些か拍子抜けと言った所である。
「戦わずして支城は降伏しているみたいだけど、もしかしたら犬山城に勢力を集めているかもね。ここは用心しないと」
そう雪姫は言ったのだが、そもそも織田信清が斉藤勢を素通りさせた為に、小牧山城が酷い目にあったのだ。細野藤光は怒りが収まらない。
「姫様、ここは私が怒鳴り込んでやります。こう見えても仁義なき○いを何度も見てますから、カチコミは任せてください」
「ああまたそんなメタな事言って・・・ちょっと待ちなさいよ」
雪姫が止めるのも気にせず、細野藤光は手勢を連れて大手門の前まで歩を進めた。犬山城は不気味なほどに静まり返っており、鉄砲どころか矢の一つも飛んでこない。
「おうワレ!!死んだ小牧山城の城兵の命、どない落とし前つけてくれるんやコラ!!お前んところも的にかけちゃるぞ!!門開けんかい!!」
細野藤光がガラの悪い言葉を浴びせながら、門をドンドンと蹴り飛ばしている。
「全くもう・・・そんなんで城がどうなる訳でも・・・アレ?」
雪姫が頭を抱えながら呟いていた時、ギリギリと音を立てながら大手門が開き始めたのだ。そうなると逆に細野藤光が慌てた。
「うお、まさか本当に開けるとは!!攻めてくるつもりか!!・・・うん?」
門が全開に開いても、敵兵は飛び出してくる雰囲気がなかった。細野藤光が門の奥を見ると、侍達が土下座している。
「これはなんのつもりか!!」
「城主織田信清は雪姫様に恐れをなして逃走。我らはほとほと呆れ果て、主君を見限りました。どうかお命ばかりは!!」
「なんだと!!だから抵抗がなかったのか!!」
細野藤光は状況を掴むと、雪姫の元に報告に行った。報連相は大事ですよね、作者はよく上司の机に物を置きっぱなしにして、しょっちゅうどやされてます。
「かくかくしかじか・・・といった訳です」
「なんとまあ・・・しかし残された犬山城の兵が可哀想ね。藤光はこのまま犬山城に入って事後処理してあげてください。私は清州城に向かう事にします」
「御意に!!ともあれこれで雪姫様は家中筆頭の功績!!加増が楽しみですな!!」
「もうそんな事言わないの。私はなにより父上の為に働くのみですよ」
これにて犬山城は北畠勢力下に組み込まれ、尾張領内の反北畠体制派は一掃された。斉藤龍興撃退と犬山城奪取の功績は素晴らしく、瞬く間に近隣諸国へと伝わっていったのだが、それが新たな局面・・・というよりややこしい問題を主人公である北畠具教にもたらすのであった。
史実の織田信清は信長に敗北し、甲斐の武田氏にかくまわれたとのことです。
史実ではもっと野心的だったみたいですけど、この作品は優柔不断なキャラクターになってます。
ファンの人スイマセンです。




