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小牧山城攻略戦8

梅津玄旨斎さんについてよく分かっていません。誰か詳しい方いますか?

「ええい、邪魔だていたすな!!」


葦毛の馬に乗る雪姫が槍を振るう。その度に斉藤家の足軽が一人また一人倒れていく。雪が純白の鎧を着ている雪姫をなにかうまくカモフラージュしているかのようだ。


「雪姫様に後れを取るな!!押せ押せ!!」


細野藤光もそれに後れを取るまいと、刀を振るう。北畠勢千五百は獅子の如く奮戦している。


「ぐううう、ゆっ雪姫様・・・」


だがそれでも流石に多数に無勢。まとまりから外れた雪姫方の足軽は、あっという間に取り囲まれて倒されていく。


「みんなから離れないで!!まとまって一丸に!!」


手を止める事無く、雪姫は馬上から槍を振るう。その姿は戦という舞台からは不釣り合い不釣り合いな美しさである。


「なんだあの若い女は・・・まるで女の阿修羅じゃ・・・」


斉藤方の足軽達はそう震えながら噂をしている。そして雪姫達は戦いながら、前に前に進んでいく・・・





「斉藤龍興様、第二陣まで突破されました!!」


「なにをしている、お前達しっかりしろ!!」


「はっもっ申し訳ありません」


その頃の斉藤龍興陣営は、予想外の抵抗の強さに戸惑っていた。数では勝っているが、奇襲をされ押されている。


「龍興様、こういう時こそ大将は落ち着いているべきかと・・・知らせによれば兵数は我らが上回っておりまする」


「いちいちうるさいぞ、弘就!!」


斉藤龍興は手にした扇子を、思いっきり日根野弘就に投げつけた。いくら何でも失礼ではあるが、ここは大人の日根野弘就がグッと堪えている。


(やれやれこんな気性で大丈夫なのか・・・)


日根野弘就は非常に困っていた。なにもこんな苦戦などするはず戦いだからだ。とっとと予定通りに不破に兵隊を存分につけていれば、小牧山城などとっくに落城させていたし、こんな消耗戦に持ち込まれていない。


目の前の外敵より内なる政治に振り回された挙句、この事態。


(義龍様になんと申し開きをしようか・・・)


そうこうしているうちに、どんどんと声が大きくなっていく。それはまるで猛獣のような感じである。


「弘就、ここは大丈夫であろうな」


「大丈夫かどうか決めるのは、我らの戦い次第であります。ここは部下を信頼し激励を」


ピシュュュュュュュ、グサ!!


そう日根野弘就が言った時、遠くから弓矢が飛んできた。そして龍興の目の前の木の机に突き刺さる。思わず斉藤龍興は尻餅をついてしまった。


「うう、こんなところまで・・・」


「龍興様、ここが勝負どころであります。辛抱が肝心!!」


「飛騨守はどうした!!狼煙をあげろ!!」


「この大雪では狼煙など意味がありません、兎に角落ち着いてください」


なにせこんな事態など想定していなかった龍興はかなり混乱していた。自分は敵の後ろから攻めて、逃げる敵兵を楽勝に討つ、そんな甘い考え。それも仕方がない。なにせ初陣であり、戦に関しては部下から聞いた話しか知らなかった。どこか夢のような考えがあったのだが、目の前に死が現実に現れると、もう持ちこたえられない。


「・・・俺は撤退する」


「何を言われます!!ここからが勝負どころ!!ここで退いては飛騨守の別動隊の意味がなくなります。それに不破達は完全に孤立いたします」


「うるさい!!お前にここは任せる!!俺は後退するからな!!」


そう龍興が言うと、そのまま彼の馬廻り衆と陣から出て行った。まさか本当に出ていくとは日根野弘就も思わず、彼は絶句した。


「何たる事・・・これか一軍の将がすることか・・・」


「そうじゃのう、これも戦と言ったところじゃな。龍興様は些か甘く育てられたものよ」


「その声は・・・梅津殿」


残された日根野弘就に傍に、白い髭を伸ばした風貌いかにも只者ではない男が近づいてきた。


彼の名前は梅津玄旨斎。剣の流派、中条流の使いであり、諸国に凄腕と言われている人物である。


「梅津殿は、龍興様の護衛を任されているのでは?」


「剣道は戦う者に与えられるものよ。逃げる者には不要。これも我が道じゃ。お主はここに残るのであろう」


「ここで踏ん張って時間を稼がなくては・・・見捨てて逃げる主君もまた主君、守らなくてはなりますまい。梅津殿の御加勢ありがたい」


「ふふふ・・・どうも敵兵は北畠家の女武者、雪姫が率いているとの事。どれほどの者か楽しみじゃ」


日根野弘就は残された兵と梅津玄旨斎と共に雪姫隊とぶつかろうとしていた・・・雪はどんどんと本降りとなっていく・・・


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