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小牧山城攻防戦4

「てっ敵兵の足が止まりません!!」


小牧山城守備兵の悲痛の声が響く。彼達は必死になって鉄砲を発砲している。その攻撃も虚しく、不破ら城攻め兵はどんどん城に迫る。


「くっここまで敵が接近してきたか!!大手門を固めよ。鉄砲だけじゃなくこの際何でもいい、どんどん投げよ!!」


鉄砲が何度も火を放つ。轟音がそのたびに轟くが、それでも斉藤方は全く動じていない。もう向こうは覚悟を決めているのだ。


遂には投石までもが始まった。だがもうどうにもならない。


「敵兵来ます!!!」



ドカーン!!!



斉藤勢はその勢いのまま、大手門にぶつかってきた。大手門の木がギシギシと悲鳴を上げる。今にも門が開きそうだ。


「門を開けさすな!!食い止めよ!!それと上からトンドン撃て!!」


蜂屋頼隆が普段出さないような大声で指示を出している。守備兵は必死の形相で、鉄砲を撃ったり門を支えている。




「よっしゃ!!門までついたぞ!!」


不破光治が喜びを声をあげた。部下の兵士達も続々と門に到着し、そのままの勢いで門にぶつかっていった。


その度に、小牧山城の大手門がギシギシと音を立てる。早く門を壊さなくては。


「おい!!攻城用の丸太があるだろう。どんどんぶつけよ!!」


兵士達が巨大な丸太を掴み、思いっきり走りながらそれを門にぶつける。



バーン!!バーーーーン!!



先ほどまでとは比べ物にならないほどの爆音が轟く。門は今にも壊れそうだ。そして彼方此方から塀に梯子をかけ始める。


「登れ登れ!!イケイケ!!」


流石にそれはさせまいと小牧山城の城兵達は塀にかかった梯子を登る兵士に鉄砲を浴びせる。


バンバンバン!!


「ぐあぁぁぁぁ」


梯子から兵が血を出しながら、崩れ落ちる。しかし城兵達はそれに対応するので手一杯で、大手門の攻撃を防ぐことができないでいた。もう門は壊れて開く・・・





ここは、斉藤方の斉藤龍興の陣。小牧山城攻めの総本陣である。ドカッと座っているまだ少年のような斉藤龍興に対し、腹心の斉藤飛騨守がこう言った。


「ほう、不破光治達はがんばっているな。そして雪姫達の部隊も近づきつつあるとのこと。そろそろ我らも城に飛び込みます」


「うむ、見事に城を取ってまいれ。もし雪姫達の部隊が城に向かったら、我らが後ろ襲い掛かる。はさみうちじゃ」


「御意・・・む」


その時であった。鬼のような形相の日根野弘就がこの話の席に乗り込んできた。


「龍興様、これは一体どうした事で。事前と話が違いまする」


日根野弘就が龍興に近づこうとすると、すかさずその間に斉藤飛騨守が割って入る。


「日根野殿、落ち着きなされ。全ては段取り通りでございます」


日根野弘就が斉藤飛騨守の胸倉を掴む。


「どこが段取り通りなのか!!不破の兵は千ほどしか与えなかったと聞くぞ!!」


「ですから!!いまから我ら四千が後詰に行き申す!!」


斉藤飛騨守が日根野を押し返し、そのまま陣から出て行った。


「日根野、もう済んだことだ許してやれ。それよりお主の方の調略はどうなった」


日根野弘就は襟を正し、斉藤龍興の前に片膝をつき頭を下げた。


「申し訳ありません。土地の地侍、民とも結束して北畠家を支持しており、彼らの切り崩しは困難なものかと」


「そうか、まあよい。日根野よく見ておれ。この戦いが終われば皆こぞって勝った我らになびくであろう」


斉藤龍興はそう言って高笑いしたが、日根野は心中は複雑であった。


(まだ統治を始めて半年ばかりなのに、この北畠家の指示の高さは何なのか・・・これでは小牧山城を奪取してもその後の支配に影響がでるであろう・・・)


斉藤龍興の陣から大きな掛け声がおこり、そして出陣が陣太鼓が叩かれた。こうして斉藤飛騨守率いる四千が小牧山城攻略の後詰として出陣していった。この部隊が城に攻め寄せれば、いかに蜂屋頼隆が奮戦しようが、あっという間に城は落ちるであろう。


ただこの「城攻めの兵を二つに割る」という発想はなんなのであろうか。最初から飛騨守も不破の部隊に加わり、それ以上活躍を目指せば良かったのだ。しかし彼はそんなことをしない。つまりは斉藤飛騨守の思想の奥底にある心理・・・


「リスクおわずそして功を得る。失敗の叱責は出来るだけ避けたい」が実はこの戦いのキーとなっていのである・・・


小牧山城は今にも落城しそうながら、蜂屋頼隆が決死の覚悟で防戦している。彼の頑張りは報われるのであろうか・・・

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