小牧山城攻防戦3
「グワァァァ!!もう駄目だ!!」
「落ち着け怯むな!!」
不破は必死な声で部下たちを激励している。しかし部隊は進む事が出来ない。そこに更に悪い報告がもたらせられた。
「不破様!!北畠の軍が姿を現しました。おそらく雪姫の部隊かと!」
「なんだと!早すぎる!」
不破が後ろを振り返ると、遠く彼方に確かに軍勢の姿を確認出来た。いくらなんでも戻るのが早い。おそらく蟹江まで行かず、どこかに待機していたのだろうと、不破は気がついた。
(このままだと、負け戦じゃ。こうなったら北畠軍が来る前に城を是が非でも落とす!)
「俺自ら城に突っ込む!お前達着いてこい!」
部下たちは慌てた。大将自ら穴に落ちに行くようなものだからだ。
「お待ちください、この先には落とし穴が…」
「よく考えろ!落とし穴が実際にあるなら看板なんか立てるわけないだろ!ガタガタ言わずに着いてこい!」
「いやだって…ああ不破様お待ちください」
ちゅうちょする部下たちを無視し、不破が先頭で城に突っ込む。もうこうなったどうしようもない。全軍覚悟を決めて、後を続いた……
さて小牧山城内では、蜂屋率いる300の守備兵がよく守っていた。そして彼のもとに朗報が届く。
「蜂屋様!雪姫様の軍勢が見えます。これで我らは助かりますな」
「そうか、皆の者よく守ったぞ」
おおおおおお!!!!
突然、城の外。つまり攻め手の不破隊が大歓声をあげ始めた。そしてその声はどんどん大きくなる。
「なんだ、何が起こった!!」
蜂屋の問いに、門の上に陣取る兵が大声をあげた。
「てっ敵兵が突っ込んで来ます!!先頭はやけに立派な鎧を着てます。まさか大将級!!」
蜂屋は慌てて指示を出す。
「向かってくる敵兵を打ちかけよ!大将首を取れば我らの勝ちよ!」
パパパーン!!!
小牧山城の守備兵の鉄砲が火を吹いた。迫ってくる攻め手の不破勢に、鉛の弾が次々と襲いかかる。しかし一向に止まる気配はない。そしてその弾は不破にもあたることなかった。
もし当たっていれば、斎藤勢は戦意を喪失し退散していたであろう。つまりまだこの戦いの行方はフラフラと移ろい未だ定かではなかった……




