小牧山城攻防戦2
「いけー!!いけー!!総がかりじゃ!!」
「おおおお!!」
不破光治が掛け声のもと、総勢千名の部隊が怒涛の如く小牧山城に殺到した。
「やはり普請の途中よ。あちこち出来ていない。これならいける!!いけるぞ!!」
まだ普請を始めてから半年しかたっていない小牧山城は、堀すらキチンと城の周りを掘られていなかった。それも大手門に繋がる最短ルートがまさにそれ。なんだこの城ガバガバじゃねーか!!
ドドドドド!!!!!
攻め手の武士たちの足音と甲冑が擦れる音が響き渡る。そしてまさに堀が無い所を通り、大手門に向かおうとした時、「それ」はおこった。
ボコ!!
「うわぁぁぁぁぁぁ」
先頭を走っていた一人の武士が、その場からまるで魔法がかかったかのように忽然と姿を消した。それはまさに一瞬の事であった。
「なっなんだ、何が起こった!!」
その疑問はすぐに解消された。目の前に穴が開いており、そこにその武士は落ちたのだ。
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」
穴から男の悲鳴が聞こえる。穴の奥には竹槍が仕掛けてあり、それに身体が・・・(これ以上書くと嫌がる人がいるかもしれないので割愛)
「者ども、落ち着け。穴の奥を見るな。士気が下がるぞ。兎に角前に出よ」
しかし兵達は、前に出ようとしない。士気は少し落ちたかもしれないがいくら何でもこれはおかしい。不審に思った不破光治が危険を冒しながらも、先頭まで走ってきた。
「あっ、これは不破光治様!!」
「くぉらぁぁお前たち!!なにをしているのか!!!」
兵達は落とし穴の先にある看板を指差している。そこにはこう書いてあった。
「この橋渡るべからず」・・・ちがうこれは一休さんだ。
「この先落とし穴多数あり」
「この看板をみて皆おっかなくなって足が止まってしまったのです」
兵達は皆怖がっている。無理もない。戦場で華々しく戦って死ぬならともかく、穴に落ちて終わりなんて嫌すぎる。武功もたてずにおれば家の存続にもかかわる。
この恐怖と意気消沈はたった一枚の看板で皆に広まってしまったのである。だがこの状態は危険極まりない。
「アホかお前たち。こんな戦場の真ん中で立ち止まれば・・・」
パン!!!パン!!!パーーーーーン!!!
不破光治の声は途中で火薬の爆音でかき消されてしまった。彼は慌てて地面に伏せた。だが周りの武士の中には、血を流しながら倒れる者は多数いた。
「鉄砲だ!!!伏せろ!!」
不破光治の部隊は混乱を始めていた・・・
「うぉぉぉやったぞ」
こちらは守る小牧山城内。蜂屋頼隆の手を振り下ろした瞬間、鉄砲隊が一斉に火を噴いた。総勢50丁の一斉射撃は強烈な爆音を発生させていた。まるで地獄の鬼の咆哮のよう (中二病的表現)
「蜂屋頼隆様、敵はバタバタと倒れております!!」
「よーし、第二射撃。装填急げ急げ!!」
射撃を終えた鉄砲隊達は、まだ熱い銃口を火傷覚悟で触りながら火薬や弾を込めている。まだこの段階では、早く撃てるため早合などは開発されていない。射撃訓練もそこまで出来ているわけでもないので早くて2分弱ほどかかる。
「しかし、蜂屋様。この短時間でよく落とし穴など掘れましたな」
蜂屋頼隆はそう言った兵士の頭をパコっと殴った。
「そんな暇あるわけないだろ。あれは木下の計略じゃ。しかし穴は一つと看板だけでここまで効果があるとはな」
普請を手掛けていた木下藤吉郎は、まだ築城途中で雪姫本隊に加わっていた。その為、このようなごまかしのような策を用意していたのだ。
「お前たち、撃つときはみな一斉に行うのだ。呼吸を合わせるぞ!!」
慌てながらも小牧山城内の兵士達は、必死に防衛をしている。このままいけば良いのだが、そうは問屋はおろさないのである。この城攻めはそう簡単に終わろうとしていなかった。
そして雪姫率いる千五百の部隊がもう間もなく小牧山城の近くまで進出してきようとしていた。彼女の行動がこの戦いの決着をつけるのである・・・




