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城攻め前夜

斉藤龍興の軍勢は、怒涛の如く進軍し、瞬く間に北畠家の尾張絶対防衛線の要である小牧山城の近くまで来ていた。多くの兵が麓に集結していた。


さあこれから直ぐにでも城攻めと相成るところであるのだが、どうもすぐには始まらないようである・・・




「話が違う!!一体どうした訳で!!」


不破光治が怒鳴り声をあげている。彼は小牧山城攻略の任に当たっているのだが、どうにも話が変わってきているのだ。


今ここでもう一度主要武将が集まり、斉藤家の軍議が行われているのだが、最初からもうかなりの荒れ模様である。なにがそんなに揉める要因なのであろうか・・・


「なにも話は変わっておらぬ。お主が城攻めするのだからな」


ふんといった感じで話しているのは、斉藤龍興家臣である斎藤飛騨守である。


斎藤飛騨守・・・斉藤龍興家臣であり、すげー評判の悪い人物である。ただ名前とか細かいところは分からないので、このまま飛騨守として呼んでいきます。しかし四百年たっても性格が悪いとしか分からないなんて可哀想すぎる・・・


「なぜ兵を千しかまわさない!!当初の予定の半分以下ではないか!!」


「後でワシが四千の兵で応援にあたる。これで予定通り五千だろ」


「舐めてるのか、おんどれは!!ブチ殺すぞ!!それに日根野殿がいない時にこんな話をしやがって」


当初の予定をもう一度読者の皆さんと思い返そう。竹中重治は城攻め五千、後詰三千と言っているのだ。それを都合よく解釈し城攻め五千をさらに分けようとしているのだ。


そしてそんな横暴を止めるはずの副将である日根野弘就が、現地の調略工作の為いないのである。うるさい彼を意図的に席から外し、この話をいきなり始めた。


「あまり汚い言葉を使うものではないぞ、不破殿。・・・ではここは龍興様に判断いただこう」


ここにいる家臣一同が一斉にまだ若い嫡男龍興を見た。彼は今まさにこの戦いのターニングポイントの一つを決めようとしているのだ。


「・・・飛騨守に任せる」


「どいつもこいつも話にならん!!ああよーーーーく分かった!!千で見事城を落としてくれよう!!」


不破光治は辺りの物を蹴り飛ばしながら、陣から飛び出していった。まあ彼の気持ちは世間のサラリーマン諸君もよくご存知であろう。戦国時代も平成も上司の話はコロコロ変わるのだ。おっとまた脱線してしまった・・・


「・・・これでよかったのか飛騨守」


「不破光治ばかりに名声が行っては、ゆくゆく龍興様の治世に影響が出てきます。ここは龍興様直系のこのワシにお任せください」


ここの揉め事の根幹は、古くからの家臣で美濃四天王とも評される不破光治に対する所謂やっかみである。


(これ以上、手柄をあげると不破の権勢に対抗できなくなる。ここは何が何でもおさえないと・・・)


飛騨守はこれといった戦の手柄をあげることは今まで出来ていない。このままでは家臣団の中でヘゲモニーを取ることが出来ないのであれば、どうすればいいのか・・・


この人物は自分が手柄をあげて出世するより、相手を蹴落として出世を目指すタイプであるのだ。よってここは不破がこれ以上目立たなくさせれば良い。


では龍興はどうであろうか。彼はこの戦いの総大将であるのだが、それは飾りにすぎないのはよく分かっていた。このままでは小牧山城攻略の手柄は実質的には不破光治になる可能性が高い。


では次の戦いになるであろう清州城攻略戦で手柄をあげればいいのではないか。しかしそれには色々問題がある。尾張の拠点である清州城を攻める時には、北畠家の本隊が戻っている可能性は否定できない。それに取った小牧山城にも兵隊を置かなくてはならない。


そうなれば兵数の優位を欠いた状態で清州城に向かわなくてはならず、戦前に竹中重治が言っていたように小牧山城攻略までが攻勢限界点であろう。


(そうなればこの俺・・・龍興は一体何なんだ。担がれた地位ではないか・・・いや、絶対にバカにした重治を見返さなくては。この際不破の城攻めは失敗させて、飛騨守と俺の軍あわせて六千で城を取ってやる!!)


あの時・・・あの揉め事・・・それが今ここに至って火を噴き始めたのである。そして斉藤家はあまりにも順調に小牧山城まで来ることができたので、慢心もあった。


この軍議のごたごたで城攻めはさらに遅れ、翌朝から始まることになる。この遅延は図らずも雪姫軍には、僥倖に巡り合ったものである・・・


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