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両者は遂に睨み合う

「帰国はせぬとは一体どうした訳でございまするか!!」


柴田勝家は思いっきり木の机を手で叩いた。ドスンという大きな音が響く。ここは北畠家志摩攻略軍の大将である木造具政の陣である。斉藤家南下の報を聞いた柴田勝家は、直ちに帰国すべしとの進言に来たのだが・・・


「我らは九鬼攻めの真っ最中であるぞ。軽々にあたふたと動くは好ましからず。撤退すれば我らに味方する志摩地侍の離反につながりかねん」


尾張の危機、そして兄である北畠具教が危険な状態に陥っているのだが、どうも彼は素っ気ない態度である。まあ犬猿の仲であるから仕方ないかもしれないのだが、柴田勝家にしてはそう簡単に引き下がれない。


「何を言っているのですか!!兎に角、帰国を強く勧めます!!」


「まあ待て勝家。何も戻らないとは言っていないぞ。まずは斉藤家南下が正しい情報かどうかじっくりと調べた上で決める。それまで待っていろ」


柴田勝家は腸が煮えくり返りそうな気がした。この男、なんだかんだ言って援軍に向かわないらしい。


「なら、とっとと田城城を攻めて九鬼など蹴散らしましょうぞ!!」


「この情報が九鬼が仕掛けた謀略かもしれん。こういう時はあせらずじっくりと構えるのが吉よ」


「話にならん!!」


結局、尾張帰国の進言は通らず、柴田勝家は目の前にある地図が広げてある木の机を蹴り飛ばして陣から出ようとした。


「勝家・・・勝手に動けば謀反と捉えるからな・・・覚悟しておけ」


木造具政が捨て台詞を吐いた。それを聞いて怒りがこみ上げている柴田勝家であったが自制しなくてはならない。なにせ彼についてきた千五百の尾張兵の未来に関わるからだ。


故郷から遠く離れた志摩で反乱を起こしたら、尾張にいる兵達の家族はどうなるかは自明の理である。助けに行っても間に合わない。怒りに震えながら頭を回転させる。


(こうなったら九鬼をとっとと攻め落として、後顧の憂いを取り除いてから戻るしかない)


まず、配下の尾張兵の動揺と暴発を抑え、志摩地侍で味方になった志摩七党の面々の懐柔と北畠兵の賛同に回る必要がある。しかしそれら根回し事はあまり柴田勝家の得意とする所でなく、やや難儀な作業であるがやるしかなかったのである・・・


さて木造具政といえばこんな事を考えていたのである。


(ふふやはり斉藤が動いたか・・・このままあのバカ兄である北畠具教を始末してくれたら幸いよ)


斉藤義龍が兄を始末してくれる事を期待していたのである。確かにそうなれば跡目は嫡男の北畠具房になるのだが、まだ若輩であるのだから自分が後見人として実質的には支配できるはずだ。


折角手に入れた尾張を手放してでも、そんなに価値のある事だろうか。だが世の中には家の利益より自分の名声を求める人はいるものなのである・・・





さてその頃、主人公の北畠具教は桑名に到着していたが、休む間もなく木曽川に沿って防衛線を引く為、出陣していた。あたりは霧が立ち込め、まったく視界がきかず、そして寒風が身に凍みる。


「寒い、寒すぎる。おまけに全く視界がきかんぞ」


「殿、もうすぐ霧も晴れてきますでしょう。しかしそれよりもっとシャキッとしてくださいよ」


モブが思わず突っ込む。そもそもぬくぬくとした部屋でネトゲーをするのが趣味だったのに、なんでこんな所でこんな目にあってるんだろう。と思っている最中、突然味方の兵の叫び声が聞こえてきた。


「対岸に敵兵が見えます!!!」


濃い霧が徐々に薄くなっていく。そんな中、目の良い者達から次々に騒ぎだした。そう木曽川の対岸に、多くの兵士達の姿を認めたからだ。それらには斉藤義龍の馬印が掲げられている。


いよいよ斉藤家と決戦かと北畠軍全体の空気が締まる。まあ北畠具教だけはふにゃふにゃしているのだが。


しかしそれは壮大なブラフだという事を知る者は、北畠軍の中にはいなかったのである・・・


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