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斉藤義龍、出陣する!!

斉藤義龍が幕府の相伴衆になった経緯がよく分からない・・・

西暦1560年(永楽三年)の12月1日


斉藤家の居城、稲葉山城からおよそ一万の陽動部隊が出陣した。一万というもののほとんどが雑兵であるが為、戦闘など出来るはずもない。


その陽動部隊の真ん中に、竹中重治がいた。彼は苦虫をかみ砕いたような顔をしている。


何故なのであろうか?他国に呼び掛けた北畠包囲網が蓋を開けてみれば、六角義治しか賛同しなかった事であろうか。


否、そうではない。もっと大きな問題があるのである。そもそも他国をあてにした戦いなど策ではなく運である。


竹中重治はそっと後ろを見た。そこには立派な鎧兜を身に着けた斉藤義龍が馬に乗っている・・・


そうこれが竹中重治が懸念していることなのである。陽動部隊に当主である斉藤義龍がいることが。


なぜそんな事になってしまったのか?そして斉藤義龍がここにいる事がなぜ問題になるのか。少し時間を巻き戻してみたい。そうそれは出陣前の最後の評定の時である・・・






「何言ってるんですか!!絶対に反対です!!」


「なにを貴様!!無礼であるぞ!!」


今日ここ稲葉山城で出陣に向けた準備の評定が行われていた。そして議題が各々の役割分担になった時に事件が起こった。竹中重治と斉藤龍興がとうとう言い争いを始めてしまったのだ。


「小牧山城の城攻めの総大将は斉藤義龍様おいて他にこれなく。絶対に譲れません。龍興様は城で留守居となっておりまする」


「留守居とは片腹痛し。小牧山城など俺が取ってくる!!」


ここに来て、嫡男斉藤龍興が強硬に出陣すると言い出したのだ。これに竹中重治が反論している。なにせ初陣の彼にそんな大役を任せるなど危険極まりない。


しかし龍興もなかなか引かない。なにせこの大戦をのこのこ眺めているだけでは、嫡男としての自分の面子が立たないからだ。


「ぐぅぅぅぅ」


「この野郎ぅぅぅぅ」


両者が歯を食いしばりながら睨み合いを続けている。これでは話が前に進まない。困った日根野弘就が当主である斉藤義龍に助けを求めた。


「殿、申し訳ありませんがご裁断を」


周りの家臣たちが一斉に斉藤義龍を見て、頭を下げた。緊張の一瞬である。しばらく黙っていた後、ついに裁断は下された。


「・・・総大将は息子龍興に任せる・・・」


「!!!殿、その儀は心得かねます」


竹中重治は抗議をしたが、それより大きな声で龍興が被せた。


「ははーありがたき幸せにございます。必ずやご期待に沿えます」


家臣一同皆頭を下げ、同意した。もう裁断は下されたのだ。もう竹中重治如きではどうにもならないのである。


「小牧山城の城攻めは不破光治に任せる。五千の兵があれば取れるはずだ、頼むぞ。龍興は総大将として三千の兵で後詰と軍監をおこなうのじゃ。日根野弘就もこれに加われ」


流石に初陣の龍興にすべてを任せることは斉藤義龍はしなかった。歴戦の勇である不破光治が城を攻め、重鎮である日根野弘就が脇を固めるという布陣である。


「・・・殿はいかかなされるので?」


竹中重治が恐る恐る聞いた。どうも当主である斉藤義龍が出陣しないのでないかという危惧があったからだ。それでは全軍の士気にも関わる (特に自分の)


「俺か・・・俺は囮として出る。竹中重治もこれに加われ」


「殿自らそんな・・・」


「なにを言うか、俺の馬印があれば北畠もこっちが本体と思うだろう。これも策よ、はっはっは」


確かに道理はそうである。これではもう竹中重治は反論できず従うしかない。しかし斉藤義龍の考えには裏があったのだ。それはなにか。


「嫡男龍興に武功を与える」


である。その為、少々危険を冒すが自分ではなく龍興に総大将として小牧山城に向かわせなければならない。実際は不破や日根野が行おうとその場で総大将として君臨したというのが大事である。


そして竹中重治であるが、抜群の知恵才覚は認めるがこれでは龍興と衝突ばかりでままならない。引き離しておく必要がある・・・こう判断したのだ。


ただこれは内密にしておかなくてはならない。息子に手柄を与えるために出兵など家臣たちが訝しむからだ。


(俺がこんな親馬鹿とは・・・)


しかし息子の龍興にはどうもこの愛情が伝わっていないようである。


(これでは俺はお飾りではないか。父上も俺を軽く見ている。こうなったら何が何でも手柄を立ててくれるわ!!)


この些細な食い違いが後々に問題を引き起こしていくが、それはまた後日書くこととしよう。




「なんだ、重治。なにかあったか?」


こう斉藤義龍に言われて、過去の思い出に浸っていた竹中重治はハッとした。


「いえなにもございません・・・そうそう、そろそろ手の者が尾張に入ったものかと」


「そうか・・・斉藤家が桑名を攻めると言いふらす頃であろう。さあ、後はこの餌に北畠が食い付くのを待つのみよ」


冬の冷たい風が斉藤義龍を包むが、彼は高揚しているのかそれを感じないでいた。


(北畠具教・・・俺の息子の為に破滅してもらうぞ・・・)


こうして斉藤家の尾張侵略が始まったのである。この軍の動きは瞬く間に隣の国にいる北畠具教に伝えられ、混乱と恐怖に叩き込むのであった・・・

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